孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

“新たな原子力の時代”

2008-07-05 16:16:27 | 世相

(アメリカ・スリーマイル島の原発施設 “flickr”より By ATIS547
http://www.flickr.com/photos/albaum/2570278183/)

【新たな原子力の時代】
6月初旬青森で開催された主要8か国(G8)に中国、インド、韓国を加えた11か国のエネルギー相会議は「青森宣言」を採択しました。
この中で、「多くの国が原子力に関心を表明していることに留意。核不拡散、原子力安全を確保。」という事項に言及しています。
原油価格の高騰(03年水準の5倍)や地球温暖化の懸念が高まるなかで、原子力は温暖化の原因である二酸化炭素をほとんど排出せず、安定的なエネルギー供給を実現する「世界にとって好ましいもの」だとの認識を示したもので、世界は新たな原子力の時代に突入したとの見方を打ち出したと報じられています。

こうした流れを受けて、来週開催される北海道洞爺湖サミットで採択される首脳文書に、「原子力の平和利用の権利」を確認する文言が盛り込まれることが明らかになりました。

【原発推進の流れ】
実際、アメリカは79年のスリーマイル島原子力発電所事故もあって原発の新規建設を長年中止していましたが、ここ数年再開する方向で動き出しています。
また、これまで慎重だったイギリスも、原発推進に方向転換しています。

イタリアも長く中止してきた原子力開発について5月、再開を明らかにしています。
イタリアでは、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故を受け、87年の国民投票で原子力エネルギーの利用と決別しましたが、温暖化対策の必要性などから政策転換を図ったと報じられています。
温暖化もさることながら、イタリアはエネルギー自給率が約15%と低く、大停電なども経験する状態でしたので、そのあたりが背景にあるように思われます。
もっとも、不足電力を原発中心のフランスから買っていますので、どちらにしても大差ないようにも・・・。

チェコ・プラハで5月22日開幕した「欧州核エネルギーフォーラム」では、チェコのトポラーネク首相が「言葉ではなく行動する時が来た」と述べるなど、原子力発電への回帰を訴える声が相次いだそうです。

【進む核拡散】
また、シーア派、非アラブのイランの核開発は周辺アラブ諸国の「核ドミノ」ともいえる現象を起こし、中東・北アフリカで13カ国の原発建設計画が相次いでいます。
更に、アジアでも、インドネシア、タイ、ベトナム、ミャンマーなどが動き出しています。
(07年11月20日 アラブ・アジア諸国「原発ドミノ」 http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071120
核拡散の動きが世界中に一気に広まる気配です。

【慎重なドイツ・スペイン】
原発に向かう流れに今も抗している主な国は、ドイツ、スペインです。
スペインのサパテロ首相は6月29日付の新聞インタビュー記事の中で、古くなっている原子力発電所の寿命を延ばすことはないと言明、サパテロ政権が掲げる脱原発政策の維持を強調しています。
政府は風力や太陽光など再生可能エネルギーの開発に焦点を合わせているそうです。

同様に再生可能エネルギーに熱心なドイツは冒頭のエネルギー相会議や洞爺湖サミットのメンバーですが、「原油高騰が続く中、エネルギー問題や環境問題への対応として「原子力の平和利用」の権利を再確認することは現実的と判断した模様だ。」と報じられています。【7月3日 毎日】

【世論も変化】
各国政府だけでなく、世論も原発容認に向かっているようです。
****原発支持率が大幅上昇=気候変動背景に-EU世論調査****
EUの執行機関である欧州委員会は3日、原子力発電に関する最新の世論調査結果を発表した。それによると、原発を「全面的に支持」「どちらかと言うと支持」を合わせると44%となり、3年前の調査時の37%を7ポイント上回った。欧州委は、気候変動対策の一環として二酸化炭素(CO2)を排出しない原発の重要性が見直されていることが世論に影響を与えたとみている。
 一方、原発に「全面的に反対」「どちらかと言うと反対」を合わせると45%で、支持派とほぼ拮抗(きっこう)した。ただ、3年前の55%と比べると、反対派は10ポイント減った計算になる。【7月3日 時事】
*************

【日本では】
個人的には、昨年11月20日ブログでも述べたように、原発の安全性、核燃料サイクルなど問題を考えてみると、“人間は原子力技術の利用というものを十分にコントーロールできていないのではないか・・・”という疑念を感じています。
また、アジア・中東などの諸国に拡散するなかで、ヒューマン・エラーの発生も危惧されます。

もちろん、石油・石炭頼みの現状を変える必要はあると思いますので、代替エネルギー開発に力をいれてもらいたいのですが、原子力にしても代替エネルギーにしても技術的な問題に依存しますので、現実性を考えたときどちらが・・・というのは正直よくわかりません。

原子力利用に慎重な世論(政策は別として)の国がイギリス、スペイン以外にもうひとつ。
日本です。
内閣府の世論調査で低炭素社会の実現で大事なことを10の選択肢から選んでもらったところ、「省エネ家電・住宅、環境に優しい車などの普及」「レジ袋削減、リサイクルなど資源の有効利用」などが上位を占め、「原子力発電の利用」は最も低い16%にとどまったそうです。

しかし、低炭素社会の実現には9割が賛同していますが、低炭素社会づくりのため、容認できる家計負担については「月五百円以上千円未満」が最多で24・4%。次いで「月五百円未満」が21・8%で、「全く負担したくない」も17%でした。
つまり、月千円以上の家計負担を容認する人は3割に満たなかったということで、原子力利用に慎重とか何とか言う前に、そういう将来について殆ど真剣に考えていないということのようにも思えます。
この国の住民は、政治というのはお上がやるもので自分達は口を開けて待っていればいい、ただし、自分の生活を犠牲にすることは認めない・・・そのように考えているようです。
なんだか、がっかりする結果です。



コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする