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【中国】蘇州の日本人学校バス襲撃事件、胡友平さんへの頌歌、日本大使館への賛辞、日中友好の構築

2024年07月12日 | 中 国

2024年7月8日(月)  凌星光

 

6月24日の事件

江蘇省蘇州市で6月24日、日本人母子とスクールバスが襲撃される事件が起きた。バス案内役の胡友平さんは勇気ある行動で、まず刃物で切り付けられた母子をかばい、次に犯人がバスに乗り込もうとするのを阻止し、母子とバス内の子供たちを救った。胡さんは数カ所を刺されて重傷を負い、6月26日に救急手当のかいなく不幸にも息を引き取った。

人を救うために勇敢に闘った胡さんの正義の行動に人々は深く感動した。あの時、犯人を止めなければ、多くの犠牲者を出していたであろう。中国の国民は胡さんの正義感に心を打たれ、死を惜しんだ。蘇州市は胡さんに「正義と勇気の(見義勇為)模範」という称号を授与した。

中国各界の人々は悲しみと哀悼の意を表すとともに、金銭や物品を寄付して慰問の意を表そうとしたが、胡さんの家族は「ここ数日、私どもは各方面からお心遣いとお悔みを賜り、皆様の温かいお気持ちに心から感謝いたします。しかし、金銭と物品につきましては受け入れないことを、家族会議にて全員一致で決定いたしました。それらにつきましては、各地にある『見義勇為基金』に寄付されますようご提案申し上げます」と発表した。これは中国社会がますます進歩し文明的になっていることを示している。6月28日に蘇州市葬儀ホールで胡さんの告別式が行われ、家族、友人、親戚、一般市民、市・区レベルの関係指導者が悲しみと哀悼の意を表した。

日本大使館の友好的な対応

金杉憲治駐中国日本大使は6月28日、「胡友平さんがこの度、逝去されたとの報に接し、日本政府、そして日本国民を代表し、その勇気ある行動に改めて深い敬意を表するとともに、心からのお悔やみを申し上げます」と哀悼の意を表した。また、北京にある日本大使館は半期を掲げ、SNSの公式アカウントで「彼女の勇気と善意は、多くの中国の人々を代表するものだと信じています」とコメントした。

日本大使館が半旗を掲げたのは、安倍晋三元首相が死去したとき以来だという。金杉大使と日本大使館がいかに胡さんの正義の行動を重視しているか、いかに中国国民に尊敬の念を抱いているかが伝わってくる。6月28日午後から29日午前にかけて、日本のメディアはこのニュースを繰り返し報道し、日中関係の雰囲気改善に喜ばしき好影響をもたらした。

金杉大使がこれほどまでにこの正義の行動を重視し、日中関係の改善に資する果断な措置をあえて取ったのは、昨年12月19日に赴任する際に語った抱負と関係があると察する。金杉大使は「日中両国の間には様々な協力の可能性がありますが、同時に、数多くの課題や懸念があります。そうした中で、諸懸案についても対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力していく、この日本政府の方針を現場で一つ一つ実施に移していくことが、私の責務であると考えています」とあいさつ文の中で述べていた。

金杉大使はこの半年、対話と協力を強化するために、いろいろな活動を積極的に展開してきた。1月24日に対外連絡部の劉建超部長、4月11日に天津市党委員会の陳敏爾書記、5月20日に安徽省の王清憲省長、6月6日に民政部の陸治原部長、6月13日に甘粛省党委員会の胡昌昇書記とそれぞれ会談した。

日本大使館の半旗

日本メディアの動向

近年、非常に残念なことだが、日中間の雰囲気に好転の兆しが見えたかと思うと、何らかの問題が起き、日本のメディアによってそれが大きく喧伝され、好転の兆しが抑え込まれていた。最近、日本の世論では中国との対話や平和外交を求める声がまた高まり始めていた。そんな折、6月24日の事件が起きた。当初、日本の一部メディアは日本人母子とスクールバスが襲われたことだけを報道し、胡さんの勇気ある行動についてはほとんど報じられなかった。しかも、少し前に吉林省で起きた外国人4人と中国人観光客が刺された事件と絡めて、「中国には排外主義的な感情がある」「現地の日本人は動揺している」など偏った報道が多く見られた。

しかし、胡さんが6月26日に亡くなると、状況は一変した。胡さんの勇気ある行動が日本のメディアに紹介され、「暴力の前では中国人と外国人の区別はなく、正義と犯罪の闘いがあるのみ」として、日本人の心は完全に中国人の心に溶け込んでいった。とりわけ、日本大使の弔辞と半旗掲揚の写真が紹介されると、日本中に中国社会と日本社会の共鳴現象が生じ始めた。これはここ10年来まれに見る好ましき光景であり、それをいかに持続させ、発展させていくかが重要な課題となる。

悪循環を好循環へ

日中関係は厳しい状況にあるが、胡さんの正義の行動は両国の人々に慈雨をもたらしてくれたようなものだ。このごく普通の中国人女性の行動が、中国人の優しさと勇敢さを表し、正義のために犠牲をいとわない精神を示してくれた。それは中国人だけでなく、日本人にも感動を与えた。これを契機に、日中間の雰囲気を悪循環から好循環に変えることができないものだろうか?

外部要因と日本の中国に対する誤解により、四つの政治文書は有名無実化し、両国関係は悪循環に陥っている。ここ5年間、「中国脅威論」や「台湾有事即日本有事論」が飛び交ってきた。日本外交の自主性喪失および中国をライバル視するようになったことから、中国の日本に対する態度も厳しくなり、日中間の国民感情はこれまでになく悪化した。

しかし、ここ数日の現実は、日中両国民の真の感情的融合の可能性を示してくれたし、開明的有識者の存在も十分に示された。両国民と開明的有識者の努力によって、外部の影響力を徐々に除去し、国交正常化の原点に戻り、日中関係を好循環の軌道に乗せることができると信じたい。

■筆者プロフィール:凌星光

1933年生まれ、福井県立大学名誉教授。1952年一橋大学経済学部、1953年上海財経学院(現大学)国民経済計画学部、1971年河北大学外国語学部教師、1978年中国社会科学院世界経済政治研究所、1990年金沢大学経済学部、1992年福井県立大学経済学部教授などを歴任。

 

 

 

 

 

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