半農半X?土のある農的生活を求めて

「生きることは生活すること」をモットーに都会から田舎へ移り住み、農村の魅力を満喫しながら、日々、人生を楽しく耕しています

にんじん農家さんのお話

2010年10月11日 | 農的体験・生活
 千葉県の北総地域(千葉県の地図でいうと上の方になる辺りですね)は、昔から無農薬栽培の農家さんが多いんです。
 さかのぼると、70年代、成田空港反対運動の一環で、今の空港がある土地に入植してもともと農業をやっていた方々が、微生物の力を借りて農産物を育てよう、という活動を開始しました。
 そして、今はその2代目のグループの方々が、無農薬で野菜を作っています。

 なので、全国でも化学合成農薬や化学肥料を使わず、有機物で作った堆肥を中心に土つくりをして野菜を育てている人達がたっくさんいます。

 そんなこと、今の仕事をするまで知らなかった

 さて、そんな中でも旧大栄町(今は成田市に合併)にある「おかげ様農場」は、この辺りのドンのような存在。そこのにんじんは、特別に美味いんです
 にんじんが特段好きではなかった私も、ここのにんじんをジューサーで搾ったものを飲んでみると「ミルキーな感じで甘くて美味しい」と、いっぺんに虜になりました

 世の中、にんじんジュースで健康を追い求めている人がたっくさんいますが、ここのにんじんご指定で、箱買いでリピートする人もいます。

 そんなにんじんを作っている代表的な農家さんに、仕事を通じて取材に行ってきました。

 その農家さんは、60歳ぐらいなんですが、家の前の畑を中心に四町歩(約一万二千坪)ほどの畑でにんじん、大根、キャベツなどを栽培しています。
 そして広大な畑をゆっくりと使い基本的には年一作。つまり春の野菜を収穫した後にまた冬野菜を育てるということをせずに、一年に一回作物を栽培した後は、ゆっくりと土を休ませるというやり方をとっています。

 今年の夏の日照りのためににんじんの発芽がうまくいっていない、という話を色々なところから聞いていましたが、この農家さんの畑では水が撒ける施設があったので、発芽率は70%ぐらいだったそうです。


1本抜いてもらうと、あらま、すくすくと育っていました
やっぱり肥えた畑できちんと水をあげているプロ農家さんの畑だな~
私の畑のにんじんは、これより少し生育が遅いですね


 
で、むしろにんじんよりダメージを受けたのが早蒔きした大根やキャベツだったようです。

10月5日頃に、今年の秋冬大根の一番手が出荷できる予定だった8月頭に種を蒔いたものが、夏の暑さの後、急に降った雨で一気に異常発生した虫に芯を食べられてしまい、ほぼ全滅状態
下の写真の右側半分に植わっているのが、芯を食べられほぼ全滅の大根です。なので、写真の左のほうの小さな苗で、これから生育する大根が出てくる11月頭ぐらいまでは、大根の出荷は無し、、、ということです


 キャベツも同様に早い時期に植えたものは芯食い虫にやられてしまっています

 家庭菜園などでは、適期に種を蒔いて収穫は11月ぐらいなんですよね。8月の日照りを避け9月の虫の害が一番少ない時期に育てるのがコツなんです。
 でもプロは、当然その年の秋冬野菜の「初物」を出したいし、出荷期間をなるべく長くするために時期をずらして種を蒔きます。なので、夏の暑さが残り、虫の害が出やすい9月に美味しい葉が茂っている野菜=10月頭ぐらいに出荷のもの、は影響を受けやすいんですよね

 その他にもこの農家さんが聞いた話として
「さつまいもをやっている農家さんも、大変だったらしいよ。夏の異常気象で製品率(きちんとした形になっている率)が悪かったようだよ。畑に水分が無かったためにさつまいもが水を求めて土の下に下に根を伸ばしていった結果、長く伸びてしまう、すると曲がりやすくなってしまうんだよ」
とのこと。
どの農家さんも「今年は異常気象」と口をそろえて言いますが、本当に大変だったんですね~
 
 さて、この農家さんのにんじんが美味しいのは何故か?は、当のご本人も「う~ん、他と同じ種を使っているし土が違うのかな~?」とわからないようですが、色々聞いていると

①堆肥は動物性のものより極力雑草など植物性のものを中心に時間をかけて作っているとのこと。そうすると窒素分が少なくなるので苦味が減るのかもしれない。
②完熟堆肥を畑に入れてからすぐに種を蒔かず数ヶ月間は寝かしておく。そして年1作しか作らない。

といったことが違いの理由なのかもしれない、と思いました。

難しい話で実証できていませんが、一般的には窒素過多、つまり窒素分が多い肥料が多かったり、未完熟の肥料が入っている畑で育った野菜は「硝酸体窒素」(硝酸性窒素とも言いますね)が多くて苦味があります。
葉っぱなどの色も濃く、ひどいものになると酸欠症状を起こしたり、発がん性物質にもなるそうです

なので、もしかしたらこの農家さんの畑には窒素分が少ないのかな?

とまあ思いましたが、畑や土と野菜の関係はなかなか科学では解明できていなくて、自然栽培で無肥料を続けている成田のある有名な方の畑のにんじんは、科学者が「にんじんの成長に必要な栄養素が1/10しかない」のに、にんじんがすくすく育っているんですよね

窒素、りん、カリ、といった3大栄養素で肥料を上げて育てる、という時代は、そろそろフェードアウトしていくのかもしれませんね。


とにかく、何が美味しさの秘訣か全てはわかりませんでしたが、ゆっくりと土を作り、寝かし、野菜にとってより自然な状態ができたタイミングで種を蒔くので、美味しい野菜が出来るのかもしれません。

 この後、もう1先、ほうれん草やラディッシュなどを育てている農家さんにも行ってきました。
 私は、ハウスで葉物を育てている農家さんを見たことは今まで数少なく、発芽したばかりのものは初めて見ました。
 種苗屋さんがテープで等間隔にきれいに種を蒔いてくれるそうで、そうするとこんなに整然と発芽するんですね~。
 左が発芽したばかりの、右が成育途中のほうれんの写真です。


露地物とハウス物は、前々生育環境が違うんだな~

久々に、家庭菜園とプロ農家の野菜の栽培方法の違いを垣間見た日になりました。
好き勝手に楽しく土をいじっていたい私は、やっぱり大量出荷の為のプロ農家には、今のところ向いていないな~、と思いました
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