半農半X?土のある農的生活を求めて

「生きることは生活すること」をモットーに都会から田舎へ移り住み、農村の魅力を満喫しながら、日々、人生を楽しく耕しています

根酸でミネラルを溶かす、というのではない?

2018年11月09日 | 仕事の中で
「根酸でミネラルを溶かす、というのではない?」というマニアックなタイトル、ほとんどの方が何を言っているかわからないと思います

農業の話です。

水曜日に有機農業の研修に行ってきまして、そこで小祝さんという方の話で「おっ」と思ったのです。

小祝さんというのは農業コンサルの人で、私は仕事の関係で、小祝さんの講義を文字に起こす、という仕事を何年もやってきました。

最近、東大や理研が研究に入って、有機農業の新しい成果を発表しているので、もしかしたら化成肥料を使った野菜ではなく、有機農業の方が日本で圧倒的優勢になる時代が来るかもしれない、と期待されるほどの内容です。

それはさておき、その小祝さんが言ったこの「根酸でミネラルを溶かす、というのではない?」というのが、何なのか、興味ある人は、以下、ご一読を。


一般的に、植物が育つには3大要素の「窒素」「リン酸」「カリ」が大切と言われています。

これは、昔、リービッヒというドイツの化学者が、植物を分析したら、この3つが主要元素だったため、以後、「農業の近代化」という名目で、化学的に作られた肥料、つまり化成肥料が主になりました。

特に、戦争後、余った火薬の原料を使って、たくさんの化学肥料が日本や世界にばらまかれました。

その後、植物は「ミネラル」も吸うという事になり、ミネラルも肥料の一部として使われました。
ミネラルと言うのは、一般的にはカルシウムで、石灰が主流ですね。

家庭菜園をやっている人ぐらいであれば、大体が、窒素、リン酸、カリ、そして石灰、というのが主要4大肥料という感じでしょうか。

ただ、もうちょっと詳しい人は、ミネラルに石灰だけでなく、苦土も使います。


一般的な農家さんの多くも大体がこの辺りまでです。


ところが、よく畑の土作りを勉強している人は、鉄不足、あるいはマグネシウム、マンガン、などが必要という事を知っています。

植物は光合成をしますが、その葉緑素の形成や働きにはマンガンやマグネシウムが必須なんですね。

鉄も酸素を取り入れるために必要。

特に、今の日本の野菜は60年ぐらい前に比べると、例えばホウレン草はビタミンAは9%、鉄分は15%、人参であればビタミンAは12.5%、鉄は10%、みかんはビタミンAは0.7%、鉄は5%と、格段に栄養素が違います。

それほど、昔の農産物と今の農産物は作り方が変わり、栄養素もけた違いに少なくなっているんです。

まあ、こんなことを知っている人は、よほどマニアックな人だけですが

で、野菜も鉄分不足、光合成に必要なマンガンやマグネシウム不足に陥って、こうなってしまっているわけです。

だから、人間の必須ミネラル、という考えと同じで、小祝さんは野菜の必須ミネラルとして、特にマンガン、マグネシウム、鉄などがいかに大事かを強調しているんです。


そして、この石灰をはじめとしたミネラルというのは、いわゆる鉱物で、不溶性、つまり土に入れても溶けないんです。
(中には一部、溶けるものも作られています)

じゃあ、植物はどうやって吸っているのか?というと、根から有機酸と言われている酸、根酸を出して、この不溶性のミネラルを溶かして吸っている、と言われてきたんです。

もうこれは、何十年もの常識中の常識なんです。


ところが、最近、小祝さんがずっとやってきたことに東大や理研が入ったことで、小祝さんが最近思う事として、「根酸でミネラルを溶かす、というのではないと思うんです」とポロっと言ったんです。

これに反応しているのは、おそらく150人ぐらいいた参加者の中で、私だけだと思いますが

何故かというと、今回の講演会の話をすべて知っているのは、仕事上、ずっとその講義を聞いてきた私ぐらいだと思うからです。
マニアックな勉強をしている小祝さんの本を全部読んだことがある知り合いの若手農家さんや、質問をしていた農業大学の先生まで、みんな、今回の講演会の内容を必死に理解しようとしていました。

私はそこは全て何回も聞いたので、こういった端っこの話に興味がもてたのです。


「ミネラルは直接吸えないから、根酸で溶かして吸っている」

こんな当たり前と思われていることに、「違うんじゃないか」と言った小祝さんの言葉に、私はとても関心を持ったのです。

おそらく、東大の教授でもこんなこと知らない、わからない。


じゃあ、どういうことか?


小祝さんがポロリと言ったのがこうです。

「昔は堆肥などの腐食(落ち葉や枯草が腐って腐葉土になった状態)の中では、つまり自然界の土の中では、ミネラルはそもそもイオン化しているはずなんです。だから植物の特性として、わざわざミネラルを溶かすために有機酸を出しているのではなく、そもそも自然界ではそのままミネラルはイオン化されているのだから吸えるんです」

マニアック過ぎてついてこれない人が多いと思いますが、とても重要です。

有機農業をやっている人も、「堆肥」を入れると、沢山の微生物がうごめいて、色々なアミノ酸やら栄養素があふれて、そこで健全な土が出来る、と思っています。

堆肥を入れていない有機農家さんもいて、そういった方は「有機肥料」を使います。

しかし、そういった一般的な有機農業では、「ミネラルも肥料の一部」という考えです。


植物は、窒素とミネラルのバランスが崩れると、つまり、ミネラルが少なくて窒素が多いと、病気や虫が大発生します。

人間でもミネラル不足だと病気になるのと同じです。

鉄不足、マンガン不足なのにタンパク質をとっていても、人間は健康にならないわけです。


自然界の森の腐葉土は絶対にミネラル優先だそうです。

しかし、農業は自然界ではありえない、窒素>ミネラル、ということが起きます。

小祝さんは、昔から窒素<ミネラルという自然界に近い状態に畑をすることが、虫や病気の発生を抑えるポイント、と言ってきました。

そのために「ミネラルを入れる重要性」を説いてきました。

ところが、「ミネラルを入れる」ことが大事なのではなく、「ミネラルをイオン化した状態で畑に入れること」が重要だ、という事であれば、「ミネラルは堆肥化させ微生物が有機物を分解した結果、ミネラルが溶け込んでイオン化させてから入れるもの」という事が常識になります。

堆肥を作る時に、たくさんの有機物から有機酸が出てミネラルはイオン化されるのです。


自然界と同じで、時間をかけて葉っぱや枯草が腐っていく時に、土になっていく過程で、色々な分子がイオン化されていくのです。

これは「堆肥を成分」としてみるのではなく、「堆肥は自然界の土のようにミネラルなどをイオン化させている」という考えになるのです。


今、小祝さんの最新のやり方を行うと、人参が1反3トン平均なのが、1トン10トン平均でとれるんです。
平均の3倍以上の収量です。

また、抗酸化力やビタミンや鉄分が圧倒的に高い「抗酸化&高栄養野菜」が出来るんです。
平均的な野菜より圧倒的に栄養価が高い。

そして、病害虫にやられない、自然界に育つ野菜以上に健康な野菜が作れるんです。

もちろん、そのやり方はとてもコントロールが難しいのですが、「ミネラルをイオン化した状態の土がある畑で野菜を作る」と言う言葉が、世の中に全く浸透していないのですが、もしこれが常識になる日が来れば、農業の世界は大きく変わるんだろうな、と思うのです。

感覚的にも私はこれがその通りと思っていまして、堆肥は作れないのですが、野山の腐食を畑に入れているので、良く通りがかりの農家さんが「よくこんな畑で育つね」と言うのですが、植物性堆肥と言うか、草を中心にした腐葉土が沢山ある畑にしています。

だから、ものによりますが、私の畑で作った野菜は、一般的な牛糞や豚糞ともみ殻で作ったたい肥を使っている有機農家さんの畑の野菜より、私は美味しいと思うのです。


ということで、何を言っているかわからない人がほとんどでしょうが、「ミネラルはイオン化している状態の土作り」は大切だな~、と気づいた研修の講演会でした。


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