どれだけ人工頭脳が進歩しているかを実感するのは難しいが、人類史上最も難しいゲームとされる囲碁で世界最強とされる中国の囲碁棋士、柯潔九段(19)に囲碁人工知能(AI)「アルファ碁」が勝ったと報道されている。遂にここまで来たかと驚いている。柯九段は対局後、記者団に対し「弱点はまったく見つからなかった。アルファ碁に勝つことはとても難しい」と敗北を認めたとのこと。
コンピューターというと計算能力が優れているので、ゲームの終盤、将棋で言えば寄せや詰めが強い気がするが、実際詰め将棋では人間は全くコンピュータに歯が立たない、アルファ碁は大局観が優れているというから、人間が追いつきようがない気がする。そして最強のアルファ碁は自己対局を繰り返し、そこから学んで更に強くなってゆくという。つまりAIがAIを教育するから、手が付けられない。そうして困ったことは、何故その手が良い手だと判断したかという理由がAI開発者には分からないことだ。出藍の誉れもここまで来ると恐ろしい。
優れたAI開発者に悪人は居ないと思っているのか、アルファ碁の勝利も人間の勝利だと開発者は喜んでいる。しかし、人間には悪人が五万と居るから、そう楽観も出来ないと思う。コンピュータの扱いは小学生以下でも、完成したAIの操作さえできなくても、妻子を人質に脅すとか開発者自身を拷問するとかは悪にはお手のものだろう。そこまでしなくても、超優遇だけでも善良なAI開発者は悪に操られそうだ。
それに悪も色々、何が悪かは容易に判別できないし、一見悪の顔をしていないことも多い。他人を自分の思い通りに動かしたいという野心など、本人は勿論、同調者にも悪とは見えないだろう。
AIに何が善何が悪と判別できるかどうかも分からない。それに、判別できれば安心とも言えない。AIという神様になりかねないからだ。
特に悲観的というわけではないが、AIの進歩には要注意だと思う。人間の進化は三十年の世代ごとでしかも僅かなもので、AIの進歩には追いつけない。孫達が世の中を背負う時代にはどうなっているか想像を超えている。勿論、その時には自分は居ないのだが、だからわしゃ知らんという気にもなれない。