駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

日曜討論を聞いて、その心は

2015年08月24日 | 小考

              

 川内原発再稼働を受けて、NHKの日曜討論があった。まさか、電力供給前にトラブルを起こすとは番組予定時には考えていなかったろう。

 エネルギーミックス(長期エネルギー需給見通し)では2030年の電力供給で原子力発電の割合を20-22%にしている。これは原発の廃炉を40年とすると達成できない数字で、新たな原子力発電所を建設するか、40年で廃炉を延長して60年にしなければならない。こうした試算をしれっと提出するところに端的に内閣の考え方の影響が現れている。

 原発反対は感情的な反対で、今の生活を維持するには原子力は必要だというあたかも冷静な考えのような意見が視聴者から寄せられた。確かに今すぐ止めろというのには恐い辛いもうこりごりといった感情が交じっているだろう。そうした感情を感情だから一段劣った論拠のようにいう人にも反対を反対だから嫌悪する感情が隠されていると思う。指摘したいのは直ちにではなく2030年に原発ゼロ、あるいは40年で廃炉にする道筋は本気になれば可能だということだ。

 感情論だと原発廃止論を非難される方は原子力発電の原理や稼働基準をきちんと理解されておられるだろうか。世界一厳しいと首相が繰り返す原発稼働基準には住民の避難計画、メルトダウンの受け皿の設置、万一の被害の責任の所在が抜け落ちている。国の関与は曖昧で、稼働の判断は自治体に委ねられ、いつもの直接関与を避ける責任拡散方式になっている。

 どんなに基準を厳しくしても100%の安全は不可能で、例えば95%を99%にすることは可能でも99%を99.9%にすることは自然が相手のことだし費用対効果からも無理だ。厳しいを稼働を認めされるための形容に、万一の事故の時クリアしていたので事故被害の責任はないという免罪符に、使われては敵わない。

 それと使用済みの高レベル放射性廃棄物の保存処理方法は懸案のままで、何処にどう保存し半永久的な処分をどうするかも決まっていない。若者に負債を背負わせないと言いながら、次の世代へ転嫁しようとしている。世界一厳しいという鸚鵡返しの答弁は、反対の声を封じ込めようとする自家製の言葉の楯に聞こえる。きちんと内容のある議論をして戴きたい。

 太陽光や風力発電といった自然エネルギーは不安定といういかにもの指摘があるが、それは蓄電器やエネルギーの形を変える保存法によって克服できる。これこそ日本の技術力で取り組むべき課題だ。10KWHの蓄電池が50万円でできるようになれば太陽電池パネルの家は急速に増加するだろう。電力会社の経営には不利な展開かも知れないが、既得権を守る姿勢だけでは社長失格と申し上げたい。

 原発がCO2削減に良いという主張は唐突で、安保法制で中国の脅威をスプラットリー進出を挙げて匂わせたのと同じ手法と感じる。CO2削減には委員の一人が指摘したように日本の低CO2産生石炭利用技術を低技術国に指導することの方がよほど実効性がある。

 原発にも安保法制にも反対の人の方が多い。民意を汲む民主主義を尊重すると言いながら、その心は「いいじゃん、そんなこと」ではと恐れる。

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