駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

リスクで医療を見直す

2013年05月20日 | 小考

           

 今年の桜は予想外に早かったせいか印象が薄いが、五月の新緑は眼に浸みる。毎年見ているはずなのだが、これほど新緑が力強く感じられるのは大袈裟だが何十年振りのような気がする。

 安倍政権が右上がりの医療費の抑制策をいろいろ模索中のようである。私は第一線の臨床医であるが、医療費の抑制の必要性は理解している。尤も医師会では、指導料や末期往診料を下げてもよいのではなどと発言し要注意人物にされてしまった。

 臨床四十年の私が診て頭のCTやMRIは不要であると判断しても、患者さんの中には隣のおばさんもやっているからとCTやMRI撮って貰いに行く人が多い。高かったでしょうと言っても安心料と思えば安いと言われる。はっきり申し上げて、それなら脳ドックでやっていただきたい。

 もはや日本の基幹産業の一つである健康産業に保健医療の一部をシフトさせたらと思う。安心のための検査は自費でやればよいと思う。

 昨日の講演会でもC型肝炎ウイルス排除の治療が進歩した話のあとに、司会者(医学部の教授)が、ウイルスが陰性化しても肝がんになる人は居るんでしょう。どうすればいいんでしょうと質問していた。確かにウイルスが陰性化しても、元々ウイルスが居なかった人に比べれば3,4倍の率で肝がんの発生はあるのだけれど、ウイルスが活動性のC型肝炎に比べれば数十分の一に減っているわけだから、全くの健康人と同じ経過を望むのはいかがなものかと感じた。完璧を望むのは、狂牛病で全頭検査のお国柄だから止むを得ないのだろうか。全頭検査しながら、狂牛病は名前の印象が悪いとBSEという危険を感じさせない名前に変えてしまうのもお国柄か。

 安倍さんの右傾化は心配だが、外へ前へには賛成だ。リスクの取り方は外からも学びたい。

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