今朝はうす曇りだが朝から蒸し暑かった。どうもセミは天候を知っているようで、今日は鳴いている蝉の数が少ない。あの濃い夏の青空に響き渡る頭がくらくらするような鳴き声はなかった。たかだか十分、一本電車が遅いだけでプラットフォームで待っているメンバーはガラッと違い、入り口に立ち止まらないで中ほどまで進んだ。よほど疲れた顔をしていたのか、前の席の若いサラリーマンが席を譲ってくれた。そんな年寄りに見えたのかと嬉しいような嬉しくないような、でもかたじけなくありがたく座らせてもらった。
日曜日に新装開店大安売りのスーパーに行った。女房があれこれ物色している間、所在なくレジの近くに立って会計をする客を見ていたのだが、どこかで見たことのある顔があった。声を掛けようとして、ちょっと太いひょっとして人違いかと何回も確かめたが、どうもそうらしいと言うので「Mさん」と前に立ちはだかると、「せんせーい」と懐かしそうに顔をほころばせた。二十年の時を一瞬に飛び越し「この近くに住んでるの?」と他愛もないことを聞くと「いいえ、大安売りだから」と数分久闊を叙した。別れ際に「今日は来てよかった、先生に会えたからと」言ってくれた。
確かに私は新卒の看護師として働いた青春の思い出にある医師なのだろう。私にもそう言ってくれる人がいた。