シカゴマラソンでケニアのケルビン・キプタムが二時間零分三十五秒の世界新記録で優勝した。二時間の壁と言われて久しいが、二時間の壁が破られるのも時間の問題と思われる。新記録を祝福すべきなのだろうが、何だか二時間の壁が破られるのは残念な気もする。変な理屈かもしれないが以前スーパーなどで98円とか950円とか桁を越えない安い感じを与える値付けがよく行われていたのに似た感覚で、二時間を切るとマラソンの長距離感が減るような気がしてしまうのだ。
一時間五十九分と二時間の差の方が二時間と二時間一分の差よりも大きく感じてしまう。差を縮める難しさは多少違うかもしれないが、一分は同じ一分なのに二時間のところに壁があるような気がする。人間の感覚にはそうした特性がある。スーパーの値付けならまだかわいいが、実はもっと大きな問題でもそうした人間の感覚を利用した策略がありそうだ。朝三暮四を思い起こす。