駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

バルサルタンの不正混迷

2013年07月12日 | 医療

                   

 降圧剤バルサルタン(ディオバン)の臨床研究に不正があったと報じられている。具体的な手法や事実は明らかになっておらず、灰色のままである。大学や学会の任意調査では限界があり、このままでは濃い灰色のまま蓋がされてゆく可能性が高い。

 私の医院でもバルサルタンはARB系統の降圧剤の中では三番目の使用量で、かなり使用している。多くの医院では一番の使用量であったようだ。私は半減期が短く、一回投与では降圧効果が不十分と見ていたので、一番の使用量ではなかった。唯、七種類もあるARBの中では一番廉価で、患者の懐負担が少なくて済む点は魅力的ではあった。

 薬品メーカーがバックアップする降圧剤の臨床研究はいくつかあったが、数年前に行われた日本大手の製品の大規模研究の結果はメーカーに取ってさほど素晴らしい成績ではなかった。不正がなかった証拠などと言うのは、大変失礼だが、あからさまに言えばメジャーな教授とメジャーな会社の品位が保たれていたのかなと振り返って思う。

 日頃MRに接触している第一線の臨床医の実感はMRは洗脳されており、自社製品のためには魂を売りかねない人達も多い。

 閑話休題、私が今更ながら感心するのは某大学のM先生だ。先生は確か五、六年前まではノバルティスの先兵となり、バルサルタンを始めとする製品を褒めそやしておられたが、五年ほど前に宗旨替えをされ、テルミサルタンを推奨されるようになった。節操のない人だと思っていたが、今ではその慧眼に恐れ入っている?。

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