駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

ノロといたしましては

2013年01月03日 | 医療

      

 ノロ?でどこどこの老人介護施設で何人が亡くなった、集団感染かと大きく報道されている。こうした報道のし方は、いたずらに恐怖心を煽り、管理者の落ち度を咎めることに目が行っており、警告的だが教育的な配慮が足りないと思う。

 私はノロ一族というわけではないが、一言申し上げておきたい。確かにノロウイルスは経口感染で嘔吐下痢を起こすために、あちこちに付着して感染しやすく警戒すべき感染症であるが、決して致死率の高い感染症ではなく、自立している人であれば数日で軽快する。但し、幼児や老人の場合には時に重症化することもあるので注意深い観察が必要になる、というのが実態である。

 介護を必要とされる高齢者の場合、ノロでなくともアデノやライノのような上気道感染症で肺炎や脱水を併発して亡くなることは希なことではない。病気というのは病原体と宿主の相互関係で成立する。そして医療看護などの治療に対する反応も様々で個々の経過を辿る。無謬、長寿、健康を絶対正義とする報道は配慮すべき個々の状況をかき消してしまう。

 理解しておいて頂きたいのは、ノロの同定には費用と時間が掛かるので、実際には殆どの場合症状から推定診断(臨床診断)がされている。医者の説明も患者がノロノロと言い募るので説明しきれずそうでしょうと言ったり、病原体を同定していないので嘔吐下痢症と表現したりとまちまちになっている。

 有り体に言えば一緒に暮らしている家族からの感染防御は中々難しい。子供から感染したときは仕方がないで済まし、婆さんや爺さんから感染すると咎めるというのは聞きづらいなあ。

コメント (2)
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