今日はせっかくの休日だというのに、外は“春の大嵐”。
と、いうわけで、外出もままならず・・・溜まっていたHDDの中の映像を整理しました。
wowowで録った舞台中継や、ライブ映像、お気に入りのドラマスペシャル、等々。
その中で、なぜかずっと消すことが出来なかったドラマで、2006年のスペシャルドラマ『恋愛小説』の中のひとつ『デューク』。ドラマを見ながら、なぜか涙が止まらなかったのを覚えています。
江國香織さんの処女短編集『つめたいよるに』におさめられたこの物語は、愛犬・デュークが死んでしまった悲しい日に、目の前に現れた少年との不思議な一日を描いています。
ドラマを見たあと、原作本を読み、さらに号泣。
歩きながら、わたしは涙が止まらなかっ た。二十一にもなった女が、びょおびょお泣きながら歩いているのだから、ほかの人たちがいぶかしげにわたしを見たのも、無理のないことだった。それでも、 わたしは泣きやむことができなかった。
デュークが死んだ。
わたしのデュークが死んでしまった。
わたしは悲しみでいっぱいだった。
デュークは、グレーの目をしたクリーム 色のムク毛の犬で、プーリー種という牧羊犬だった。わが家にやってきたときには、まだ生まれたばかリの赤ん坊で、廊下を走ると手足が滑ってぺたんと開き、 すーっとおなかで滑ってしまった。それ がかわいくて、名前を呼んでは何度も廊下を走らせた。(そのかっこうがモップに 似ていると言って、みんなで笑った。) 卵料理と、アイスクリームと、なしが大好物だった。五月生まれのせいか、 デュークは初夏がよく似合った。新緑のころに散歩に連れていくと、におやかな風に、毛をそよがせて目を細める。すぐにすねるたちで、すねた横顔はジェームス=ディーンに似ていた。音楽が好きで、 わたしがピアノを弾くといつもうずくまって聴いていた。そうして、デュークはとても、キスがうまかった。
これは、その冒頭の一節です。
すねた横顔がジェームス・ディーンに似てるなんて!!なんて美犬!!(そこ?)
ずっと泣いている“わたし”が電車の中で席を譲られ、悲しいはずなのにその少年に誘われるまま、コーヒーを飲み、プールに行き、落語を見て・・・
いつのまにか、悲しかったことを忘れかけた時、それはすべてデュークの思い出につながっていることに気づく“わたし”。
ドラマでは、プールがスケート場になっていたり、ちょっとした変更があったりするのですが・・・う~ん、演じてる中尾くんは、ジェームス・ディーン、という感じではないかな
・・・でも、笑った顔がすごく屈託なくて動物的ではある、かな(笑)
「今までずっと、ぼくは楽しかったよ。 」
「そう、わたしもよ。」
下を向いたままわたしが言うと、少年は わたしのあごをそっと持ち上げた。
「今までずっと、だよ。」
懐かしい、深い目がわたしを見つめた。 そして、少年はわたしにキスをした。
わたしがあんなに驚いたのは、彼がキス をしたからではなく、彼のキスがあまり にもデュークのキスに似ていたからだっ た。呆然として声も出せずにいるわ たしに、少年が言った。
「ぼくもとても、愛していたよ。」
寂しそうに笑った顔が、ジェームス= ディーンによく似ていた。
「それだけ言いに来たんだ。じゃあね。 元気で。」
そう言うと、青信号の点滅している横断 歩道にすばやく飛び出し、少年は駆けて いってしまった。わたしはそこに立ちつ くし、いつまでもクリスマスソングを聴 いていた。銀座に、ゆっくリと夜が始 まっていた。
「デューク」・・・大好きな大人のファンタジーです。
と、いうわけで、外出もままならず・・・溜まっていたHDDの中の映像を整理しました。
wowowで録った舞台中継や、ライブ映像、お気に入りのドラマスペシャル、等々。
その中で、なぜかずっと消すことが出来なかったドラマで、2006年のスペシャルドラマ『恋愛小説』の中のひとつ『デューク』。ドラマを見ながら、なぜか涙が止まらなかったのを覚えています。
江國香織さんの処女短編集『つめたいよるに』におさめられたこの物語は、愛犬・デュークが死んでしまった悲しい日に、目の前に現れた少年との不思議な一日を描いています。
ドラマを見たあと、原作本を読み、さらに号泣。
歩きながら、わたしは涙が止まらなかっ た。二十一にもなった女が、びょおびょお泣きながら歩いているのだから、ほかの人たちがいぶかしげにわたしを見たのも、無理のないことだった。それでも、 わたしは泣きやむことができなかった。
デュークが死んだ。
わたしのデュークが死んでしまった。
わたしは悲しみでいっぱいだった。
デュークは、グレーの目をしたクリーム 色のムク毛の犬で、プーリー種という牧羊犬だった。わが家にやってきたときには、まだ生まれたばかリの赤ん坊で、廊下を走ると手足が滑ってぺたんと開き、 すーっとおなかで滑ってしまった。それ がかわいくて、名前を呼んでは何度も廊下を走らせた。(そのかっこうがモップに 似ていると言って、みんなで笑った。) 卵料理と、アイスクリームと、なしが大好物だった。五月生まれのせいか、 デュークは初夏がよく似合った。新緑のころに散歩に連れていくと、におやかな風に、毛をそよがせて目を細める。すぐにすねるたちで、すねた横顔はジェームス=ディーンに似ていた。音楽が好きで、 わたしがピアノを弾くといつもうずくまって聴いていた。そうして、デュークはとても、キスがうまかった。
これは、その冒頭の一節です。
すねた横顔がジェームス・ディーンに似てるなんて!!なんて美犬!!(そこ?)
ずっと泣いている“わたし”が電車の中で席を譲られ、悲しいはずなのにその少年に誘われるまま、コーヒーを飲み、プールに行き、落語を見て・・・
いつのまにか、悲しかったことを忘れかけた時、それはすべてデュークの思い出につながっていることに気づく“わたし”。
ドラマでは、プールがスケート場になっていたり、ちょっとした変更があったりするのですが・・・う~ん、演じてる中尾くんは、ジェームス・ディーン、という感じではないかな
・・・でも、笑った顔がすごく屈託なくて動物的ではある、かな(笑)
「今までずっと、ぼくは楽しかったよ。 」
「そう、わたしもよ。」
下を向いたままわたしが言うと、少年は わたしのあごをそっと持ち上げた。
「今までずっと、だよ。」
懐かしい、深い目がわたしを見つめた。 そして、少年はわたしにキスをした。
わたしがあんなに驚いたのは、彼がキス をしたからではなく、彼のキスがあまり にもデュークのキスに似ていたからだっ た。呆然として声も出せずにいるわ たしに、少年が言った。
「ぼくもとても、愛していたよ。」
寂しそうに笑った顔が、ジェームス= ディーンによく似ていた。
「それだけ言いに来たんだ。じゃあね。 元気で。」
そう言うと、青信号の点滅している横断 歩道にすばやく飛び出し、少年は駆けて いってしまった。わたしはそこに立ちつ くし、いつまでもクリスマスソングを聴 いていた。銀座に、ゆっくリと夜が始 まっていた。
「デューク」・・・大好きな大人のファンタジーです。