脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

小ボケの人の運転をやめさせる

2020年03月15日 | 二段階方式って?
二段階方式を導入している町の保健師さんから質問が来ました。
「近隣の町で高齢者(85歳)が加害者の死亡事故が発生しました。
わが町でも、二段階方式で、MMS合格しても、かなひろい不合格(ほぼ0に近い点数)の方が運転しています。絶対事故を起こすと確信しますが、免許返納を説得できず(しても聞き入れない)にいます。
ご助言をいただければと思います」

(客人のポルシェヴィンテージカ―。ナンバーの354にも意味があるそうです)

私の回答です。
「世の中で使われる認知症テストはすべてMMSと同じと思えばいいのです。MMSが合格しても、たとえ満点でも、前頭葉テスト不合格者がいるということを識者はたぶん誰も知りません。それが『小ボケ』ですよね。
病院勤務時代は、とっても簡単で
『この脳機能では運転したら(させたら)いけません』でおしまい。
理由は簡単で公道で運転するには前頭葉の注意集中や分配力が必須だからです。
能力がなければ、どんなにやりたいといってもやらせてあげることはできません。
脳卒中の後遺症で片麻痺があってまったく立てない人が『今すぐ歩きたい』といっても、『脳に卒中が起きてしまったので、今は無理。リハビリがんばってみましょう』といいますね。
『お勧めはできないんですけども、それだけ歩きたかったら、好きなように歩いてみましょうか(そして転んでも、それはあなたの責任ですけど)』とは絶対に言いません。それと同じです。
皮ベルトで留めてある!

病院でない時はどうするか?
血圧や血液検査の異常値で考えてください。
血糖値、肝臓や腎臓その他の異常値に対してどのような生活指導をしますか?
まあ、まず受診でしょうけど、受診勧奨にしろ生活改善指導にしろ、その時のこちらの気分はどうでしょうか。
数値が悪いほど、真剣に『それ以外にはない!』しかも『できるだけ早く!』と指導しませんか。
『食べ過ぎ・飲みすぎ・運動不足・栄養バランス・ストレス・休養』などなど、よりよい生活になるように、やるべきまたはやってはいけない指導をしますよね。
マフラーがラッパみたいでした。

かなひろいテストの数値は、前頭葉の注意集中・分配力を表しています。
そこに問題があるとき、(前述のように運転などはまさにこの能力を使っています)
『この状態ではできないこと』『より悪化を防ぐためにしてはいけないこと』『改善のためにすべきこと』を指導するのは当然のことです。
血圧や血液検査の結果を使って生活改善指導をするのと同じ情熱でやりましょう。
それらの結果には信頼性があって、かなひろいテスト結果には信頼性がないので強く指導できないというのなら、脳機能検査をする必要性はないということになってしまいます。

付け加えると、結局は、どのくらいの誠意となおかつ熱意をもって指導したかに尽きると思います。
血液検査の結果を踏まえて、生活改善指導をしても改善につながらない人はいます。手を変え品を変えても、家族を巻き込もうとしても変化が起きないときには、私たちは諦めるのではないでしょうか?
それに匹敵するだけの過程をくぐって、なお、運転をやめないときには・・・
あきらめるしかありません。
私は、一回限りの生活指導をすることがよくありますが、この方の残りの人生をよりよく過ごしていただけるように、誠意を込めてお話しします。
だめなら・・・仕方がないとあきらめるのです。
検査結果に確信をもって説明すれば、ほとんどのケースは理解してくれるのですよ。
特に小ボケの方たちは、自覚があるだけにやりがいがあります。
ツーシーターですから夫だけ。

去年の池袋の事件も、まさに小ボケレベルの脳機能を疑いますよね。膝関節の問題ではなくて。
ブログに書きましたので時間のある時読んでみてください。
(続)の「法に定められた『運転免許取り消し方法』」こちらは必ず一度は読んでおいてください。
長くなりました。
実務研修会は10/7~8を予定しています。
では、お元気でね!」

お返事が来ました。
「かなひろいテストの威力、二段階の威力はすごいです。
自信をもって生活指導できてますので。
今回の先生のご助言で『間違いない』と自信がつきました。
ありがとうございました。」
がんばってください!
 

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