脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

6月の右脳刺激その2-猊鼻渓舟下り(時の見当識)

2010年07月01日 | 正常から認知症への移り変わり

仕事で気仙沼へ行きましたので途中下車。

岩手県一関市には厳美(がんび)渓猊鼻(げいび)渓という二つの渓谷があります。厳美渓には何度か行って、散策や名物郭公団子を楽しんだことがありますから、一度は猊鼻渓も尋ねてみたかったのです。
東北新幹線一関駅に14:13到着。大船渡線スーパードラゴンに乗り換えて、猊鼻渓駅に15:20到着。船着き場まで5分くらいでしょう。

木製の船、長い竿。たった一人の船頭さんが竿一本で船を操ります。2010_0627_154800p1000345_2
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舟は両岸の滴るような緑の中、とろりとしたような川面を進んでいきます。
高い岩には、凌雲岩とか壮士岩・少婦岩、錦壁岩などの難しい漢字の名前が付いていて、それはそれで雰囲気をよく表していました。2010_0627_153400p1000342_32010_0627_154900p1000346_2

 

 

 

 

 

 

渓谷の終わりのところでは舟を下りて、少し歩きます。
巨大な岩が屹立しなかなかに見ごたえがありました。そして猊鼻渓の名前のいわれにもなった「獅子の鼻」のような岩も確かに見てとれました。 (右写真の中央上部)2010_0627_160500p1000351_32010_0627_160000p1000349_4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「癒しとエコな舟下り」がキャッチフレーズの猊鼻渓舟下りは、ほんとに一本の竿だけで船を操っていきます。その竿さばきを見ながら考えたことをお話ししましょう。
竿を水に突き刺せば、固い川底がその竿を受け止めて、一瞬止まる(かどうか知りませんが)少なくともそこからがまたスタートになる。そこからなら進むだけでなく方向も変えられる。
舟は流れるように進んでいきますが、竿さした時点がいつもいつもスタート。2010_0627_161800p1000352_2

「時」もとどまることはありません。
でも、その「時」に対して私たちは今日とか明日とか区切りをつけて生きていきますね。
その区切りは、時間を区切るというだけの意味ではなくて、この「時」に何をするか、どう生きるかということの基本設定をしているように思います。

脳の老化が加速して、中ボケになったら、信じられないくらい繰り返し「今日は何日なのか?」を尋ねるようになります。
家族は、あまりにも度重なるのでそのうちに「まったく、もう。覚えようとしないんだから!」とか「自分でカレンダー見ればいいのに!」などと叱責したりします。

竿を何度突刺しても、突き刺しても、止まってくれない。
場所を替えてもだめ、受けてくれる底がない。
このような状態になったら、船頭さんはどんなに困るでしょう。2010_0606_150100p1000302

日付を何度も確認するレベルの時は、まさにこのような状態と考えてあげると、中ボケの困惑が少し理解できるかもわかりません。
私たちも、今日の日付があいまいなことがあります。でも、落ち着いてちょっと前の出来事のあった日はいつか考えてみる。またはちょっと先の予定の日はいつか考えてみる。そのようなことをすれば今日がいつなのかすぐに行きつくことができます。
竿をさせば、ちゃんと竿の先は川底をとらえ、次に進むことができるのです。

度忘れの「時の見当識障害」と中ボケになった人たちが陥っている「時の見当識障害」は全く別物だということをわかってあげてほしいと思います。