脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

高齢者集いの場の喫茶店が閉店-認知症への落とし穴

2021年01月25日 | 正常から認知症への移り変わり
何を隠そう。私、友達と二人で学生時代に「〇〇〇の深情けグループ」を結成してたんです。困った人がいる(もしかしたら困ってないかもしれないのに)と、どうしてもおせっかいしたくなるタイプなんですね。
おせっかい屋さんとしたら見逃せない話を、また聞きで聞きました。
友だちの話です。
沼津市愛鷹運動公園。ナツツバキ

「知人のお父さんが毎朝、暇そうにしているのですって」
私が「そのお父さんはおいくつぐらいの方?」と尋ねると「知人が50歳くらいだから80歳位かなあ」という返事でした。
もうこれだけで「おっとこれは危ないな~」
私が何を恐れているかというと、アルツハイマー型認知症。
専門家といわれる人たちは、多い順に「アルツハイマー型認知症の原因はアミロイドβがたまること」「タウタンパクがたまること」「脳の萎縮」などがアルツハイマー型認知症の原因といわれます。
でもそれは違います!
トチノキ

詳しく聞いてみました。
「近所の喫茶店が閉店したんですって。ほとんど毎日通っていて、お仲間がいて席まで決まっていたそうよ。その仲間は職歴はさまざまで、だから日常生活上に起きる問題の解決場所でもあり、ニュースに対しても様々な意見が飛び交って会話がとにかく楽しかったそう。男の人って単なる世間話だと盛り上がらないってことあるでしょう?
こういう場所があると家族は安心よね。女の人は集いやすいのに、男の人は特別に趣味でもないと定年後外へ行かなくなる。ここだけの話、幼稚園のシルバーバージョン!
それなのに、このご時世のせいかどうか閉店。そうしたら行くところがなくなって毎朝暇そうにしてるっていう話なの」
カツラ

この話を聞いて、皆さんはどう思われますか?
少なくともこれからの生活が、お父さんにとって以前ほど楽しい充実した生活でないこと、それだけでなくどうもボケに近づいていくのではないかというような不安感には同感してくださると思います。
「寂しいだろう」
「楽しみがなくなってお気の毒」
「一日が長いだろうな」
「これから先どんな楽しみを見つけられるか」
「大丈夫?ボケないでいられるだろうか」等々。

一般の方々は、「よくよく周りを見てみると認知症の発症には学歴も職歴も関係ない。むしろ偉い人は危ない」というふうに言われます。「ああいう生活をしていたら、危ない」とか「あんなに楽しみごとがある人はボケない」というような認識を持っています。これは生活ぶりこそが、認知症予防の鍵と思っているということですよね。
高齢者を、研究対象として見るのではなく、一人の人間としてみた時に学歴や職歴ではなく、「今どう生活しているか」に「ボケるかボケないか」の決定的な要因があると感覚的にキャッチしているのだと思います。
まさに正答。
クヌギ

皆さんに納得していただくには「脳の機能」を持ち出すことが必要です。今年二度目の画像ですが。
年齢とともに脳機能が低下していくこと(誰にでもある正常老化)に加え、生活上に起きてきた大きな出来事や大きな変化をきっかけに、それまでの生活とは様変わりの、趣味も生きがいも交遊も楽しまず、散歩すらしないというような「ナイナイ尽くしの生活」になる人たちがいます。三頭立ての馬車を走らせて生活していくのが人生ですが、脳を使っていない、馬車が動いていない状態になるのです。

そうすると、脳の機能は「廃用性機能低下」を起こすのです。脳機能の衰え方が正常老化を超えて生じてしまう。
そして、小ボケ、中ボケと進み、最終的に世間で言われる「ボケてしまった」大ボケ段階に至ります。

この「大き出来ごとや大きな変化」を具体的に言うと、
「退職してからボケちゃった」
「趣味が続けられなくなっておかしくなっていった」
「配偶者との死別」
「孫が家を出ていった」
「病気やけがで安静にした」等々。
この喫茶店のお仲間の方々には、皆さん高齢だからこそ、ことの軽重はあっても、それぞれこのようなことがいろいろな形で起きたと思います。
なのに、なぜ誰一人としてボケていなかったのでしょう(これはもちろん推測。また聞きですからはっきりとしたことは言えないのですが)。でも、このお父さんのように、皆さんがその喫茶店に自分の場があって、おしゃべりやコーヒーを楽しむことができる状態そのものが認知症を発症していない証拠といえます。

本来ならば、三頭立ての馬車が動かなくなるような人生の大きな変化が起きても、ここに集った皆さんにはこの喫茶店での楽しい充実した時間がそれを補って余りある脳機能発揮の場所を提供してくれていたのです。
繰り返しますが、その喫茶店にあったのは、楽しい会話、交遊。
馬車は、仕事をするとき(左脳)にだけ動くのではありません。体を動かす(運動の脳)ときも仲間と遊ぶとき(右脳)も、動きます。
そのような時、つねにその状況を判断し、どうふるまえば自分らしいのか判断しながら進んでゆく前頭葉も活性化しています。
その場がなくなることは、廃用性の機能低下を起こしやすいのですよ。一日も早く馬車がイキイキと走ることができる場所や状況が必要なのです。



































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