脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

救急隊員「話せるから梗塞はないよ」?ー左脳と右脳の働き

2014年05月05日 | 右脳の働き
左脳と右脳の話は興味を持って読んでくださる方が多いようです。

アネモネ 昨日・今日・明日…
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久しぶりに、遠くの友人と電話で話しました。
友「私、慢性硬膜下血腫になったのよ!」

私「そう。でも、もう何ともないでしょ」

友「そうなの。今は普通にやってるけどね」

私「いつ、どんな事が起きたの?」

友「2月ごろだったか、何だヘンになったのよ。なんだかうまく歩けなかったのよね。左の方によるというか…」

「左」に問題が起きたわけですから、脳の障害は「右」側。そして「運動領域(特に下半身)」ということになります。
ですから、次の質問は上半身はどうだったか聞くことになります。

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私「左手はどうだったの?しゃべる時、ろれつが回らないということはなかった?」

友「おかげさまで、手は何ともなかったし、話す方もなんともなかったの。でも何というか…」

ここまでのやり取りで、右脳の頭頂葉(下半身を動かすのは頭頂葉ですから)のあたりに血腫ができたことが推定されます。
そうすると、このブログでも何度か書いてきた「右脳障害」が生じてきたことになります。
右脳障害は、なかなかことばでは説明しにくい障害です。

私「洋服が着にくかったでしょ?袖口と首がわからないというか」

友「そうなの!おかしいなあって思ったのよね」

私「キチンとしまおうと思っても、なんだかうまくいかないのよね」

友「そうそう!」
この辺りになると、なんだか楽しそうなやり取りになってきました。

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私「慢性硬膜下血腫は処置してもらえば、あとはきれいさっぱり。何ともないのだから気にすることはないのよ。そう先生もおっしゃったでしょ。脳外科でいえば一番簡単な処置といわれてるくらいだし」

友「盲腸の次って言われた(笑)結局救急車で病院へ行ったんだけど、その時救急車の人が『話せるから脳梗塞じゃないよ』って言ってくれて安心してたけど」

私「それはちょっと違うのよね~。心配しなくていいのはよかったけど。
今回は左脳はやられなかったから、ことばの障害が出なかっただけよ。」

これから先の説明は電話だけではちょっと難しいかと思って終わりにしました。でもこれほど右脳障害は軽視されているのだなあと改めて思い至りました
脳はそれぞれの場所ごとに機能が決まっていますから、その場所に障害が起きなければその機能はそのまま維持され、何の変化も起こしません。
ことばに障害が起きなかったのは、ことばを司っているところ(普通は左脳)に障害を受けなかったということです。ことばの障害はわかりやすいのですが、右脳障害は、頭に置いておかないと理解できません。(右欄カテゴリーの『右脳の働き』に具体例を挙げています)

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右脳の運動領域を大きく障害されると、左半身にマヒが出ます。下半身を動かす領域だけやられたら、左足にはマヒが起きますが、左手は何ともありません。

けれども、いずれにしろ左脳の運動領域が障害されていない限り、右半身は何ともありません。以前通りに動かすことができます。
このように考えた方がわかりやすいかもしれませんね。

ことばでうまく説明できない、形や色や音楽や感情などの処理を担当している右脳の働きを忘れないようにしてください。




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