脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

補聴器に公費助成始まる

2024年08月12日 | エイジングライフ研究所から
補聴器購入に公費助成が始まったというニュースに、ひざを打つ思いです。
二段階方式では、認知症の発症は「アミロイドベータやタウタンパクが原因ではない」と考えています。
人生の後半になって起きてきた大きなできごとや生活の変化に対応しきれずに、生きる意欲を削がれてしまう高齢者がいます。生きる意欲がなくなった生活ぶりというのは、いわゆるナイナイ尽くしの生活、具体的には趣味なく交遊なく生きがいを感じることもなく、そのうえに運動もしない生活です。一日中ぼんやりと日を暮らす…
今日の写真は朝ボンヤリせずに庭に出て撮ったもの。八重のバタフライピー

これは脳機能からみれば、脳の使い方が足りないということです。
脳機能を簡単に分ければ、デジタル情報を処理する左脳、アナログ情報を処理する右脳、体の運動に特化している運動領域、そしてそれを統括してその3分野の脳を上手に使うための司令塔である前頭葉ということになりますが、ナイナイ尽くしの生活というのは、その脳全体がイキイキと使われてない状態といえます。
バタフライピー下に空蝉発見

「その機能を使わない」と私たちの身体には廃用性といわれる機能変化が起きてきます。使わない筋肉は廃用性委縮を起こします。使われていない脳は廃用性機能低下を起こします。
もともと加齢とともに、体の各所に正常老化ともいうべき変化が起きてくることは、高齢のかたなら納得されると思います。
一重のバタフライピー

もちろん脳にも正常老化があるのです。歳を取ると物忘れがひどい。仕事がテキパキできない。なにかやってるともう一つの為すべきことがおろそかになる。発想力が落ちた。若い時に比べるという冠語をつけると認めざるを得ないことが多々あります。
ところが、認知症はそのレベルが違います。前頭葉に注目した脳機能検査をすれば、正常老化か正常老化に廃用性の機能低下が加味されたものかはすぐわかります。

廃用性機能低下が起きている場合には、生活がナイナイ尽くしに変わっていった、そのターニングポイントをはっきりさせることで、本人や家族に了解してもらいます。
二段階方式を使っている保健師さんたちでも、なかなかそのきっかけにたどり着けないと嘆く人もいますが、生活が変わっていないのなら(脳の使い方に何の変化もないのなら)必ず正常老化にとどまっているものです。

検査結果を手にすれば、そのきっかけはあるに違いないのですから聞き取っていくのです。
〇本人や家族の病気や怪我。(家族の介護に手がいるようになると、その介護をしている方の生活も変わってしまう)
〇仕事を辞める。(定年退職や代替わり)
〇心配事の勃発
〇親しい人との別れ
だいたい以上にあげたようなことで、ほとんどの人はきっかけが出てくるものです。

きっかけを尋ねていてある時にふと気づきました。
「そのころから、耳が遠くなってしまって。もともと遠かったのですが、差し障るほどになってきて」家族からの情報。
「耳が遠くなったので、寄り合いに出てもよく理解できないし、失敗したら嫌だからといって寄り合いにも趣味にも出かけなくなった」家族からの情報。
「聞き返すのが相手に悪いと遠慮していると、だんだんどうでもよくなってきた」本人の述懐。
など聴力低下を訴える人がいるのに、視力低下をきっかけという人は記憶にありません。
視力は見えない自覚があって、自分の工夫が効きますが、聴力は聞こえにくいを通り越して聞こえないときには、刺激がないのと同じ!
確かに聴力低下が廃用性機能低下を起こすのも納得ですね。

行政が補聴器購入の補助をする、その実態を、一般社団法人日本補聴器販売店協会 がまとめてありました。
全国273自治体。そのうち155自治体が65歳以上。金額は10,000円から137,000円。30,000円64市町村。50,000円50市町村。
詳しくはクリックしてみてください。

厚生労働省の総計のページを見てみました。
給付(総費用額)2021年11.3兆円。2022年13.3兆円。2023年で13.8兆円!
2023年の65歳以上人口は3,623万人。
後始末に追われるお金の使い方でない方法の一つが補聴器助成かと思います。
補聴器を勧めても抵抗を示す高齢者は多いものですが、その流れの中で補聴器に対する「年寄り臭くていや」というアレルギーも改善していくのではないでしょうか?
あんまり暑いので、キクイモに日傘をさしてやりました。



by高槻絹子




ブログ村

http://health.blogmura.com/bokeboshi/ranking_out.html