右脳のことを読んでくださる方が多いようです。続けて今日も右脳の話を。
日経新聞に興味をそそられる記事が掲載されていました。
記事の概要は以下の通りです。
「知的障害のない自閉症(つまりアスペルガー症候群といわれるタイプ)の成人男性15人を対象にした東大による研究。
『否定的な言葉を明るく笑顔で話す』画像と
『肯定的な言葉を嫌悪感を示す表情と声音で話す』画像
を見て、友好的か敵対的かどちらに感じるか調べた。
同時にファンクショナルMRIで脳活動の変化も調べた。」
「結論は表情よりも言葉を重視して判断する傾向があり、内側前頭前野とよばれる、他人の意図や感情の理解に関わる脳の領域の活動が低下していることが判明。」
「普通の成人男性17人に同じ調査をした結果は言葉よりも表情を重視していることが多く、内側前頭前野が強く活動していた。」
とっても納得。
もともと、前頭葉は人に特有の働きをするということは、いつも強調してきていることですね。
人に特有な能力はいくつも挙げられると思いますが、コミニュケーション能力は、動物たちの能力とは異次元のはずです。
そこに前頭葉が関与することは当然予測されます。
「将来的には自閉症の原因を前頭葉の器質的な障害ととらえるようになるはず」という学会発表を、ひざを打つ思いで聞いたのは、もう10数年前のことなのですが。
その後、なかなかその方面の研究を目にすることがありませんでした。
自閉症児に対して、当初は「抱っこをしない」「テレビばかり見せる」などとお母さんの育て方が悪いといったのですよ!
それよりも子どもの方に器質的な問題があるからこそ、育てにくい状況を生むと理解した方が母子を救います。
話を戻しましょう。
アスペルガーの人たちは人間関係の作り方が難しくて種々の問題を起こします。
その理由
1.アスペルガーの人たちには前頭葉の障害がある。
2.コミニュケーションを図る時に、多くの人たちは、言葉よりも表情などを重視するのにそれができない。
コミニュケーションをするときに、どのような言葉を使うのか決めるのは「言葉の左脳」と前頭葉の連係プレイです。
それ以外のすべての伝達手段は、右脳と前頭葉の出番です。声の高さ低さ、大小、抑揚、表情、身振り・・・全部右脳の働きですよ。
そして私たちは、言葉の内容よりも、それがどのように発せられるかを判断の大きな基準にする傾向があるのです。
エイジングライフ研究所の研修会で、「最近、楽しかったことを話してください」直後に「そのことを悲しそうに話してください」ということをやりますね。
これが難しい。ありがたくなさそうに「ありがとう」を言うのも、嫌いでたまらないのに「好き」と言ってみる真似をするのも、難しい。
人を動かす近道は、今回の研究結果を待つまでもなく、どう考えても情動的に動かすことのようです。
ホラ、また右脳の出番。
若い人たちに「右脳と左脳の働きの差」を説明するときにはお見合いのケースで説明します。
釣書きを理解するのは左脳。
「大学も立派だし、仕事も安定的。二男で親の面倒も見なくていいそうだし、趣味もまあ、合いそう。確かに世話人の言う通り、なかなか無いほどよい条件のお相手だこと・・・」
そしてお見合いには必須の写真を手にして、顔を認識するのは右脳です。
右脳が壊れるということー相貌失認(続けて3回)
「ウーン。どう考えてもこの人とは一緒にいられない。虫が好かないタイプ」
釣書きと写真とどちらが優先するでしょうか?
普段は右脳の働きのことなど気にも留めてないのに、結構強く主張すると思いませんか?
「虫が好かない」という気持ちはムシできない(笑)
それはわかりますが、本当の答えは前頭葉がこの状況をしっかり理解して自分らしく決断を下すということが大人の判断になります。