脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

日本文化の粋二つ

2010年02月12日 | 私の右脳ライフ
天城湯ヶ島の落合楼村上で催された「能を楽しむ会」に行ってきました。
この旅館の建物の大部分は登録有形文化財に指定されています。
この登録制度にのっとった宿泊施設は全国にありますが、この落合楼村上は「普通の家一軒の建築費が100円、立派な家が1000円の時代に20万円以上もかけて造られたもの(ご当主の説明より)」だけに、使用されている部材も見事なら、大工さんや指物大工さんのたちの匠の技が素晴らしい。確かに残さなくてはいけない文化財だと思いました。
玄関

富士山と投網の指物細工

紫檀の床柱

アールヌーボー調の欄間(クモ) 

格子模様の細工が、廊下の窓枠などそこここにありますが、その3センチほどの一片ははずしたりはめたりできる程のち密さで、職人さんの指先は0.何ミリを感じることができるといわれることが納得できました。
人間の脳って素晴らしいですね。ただしこれも実践の中から身につくことで、考えるだけではだめです。
実はこの立派な落合楼も倒産の憂き目にあって、7年前にそれを再生したのが今の落合楼村上。再生のために工夫の限りを尽くされ、またそれを続けていらっしゃる様です。
ひとつが前を流れる狩野川の水を利用した水力発電所の復活(このサイトからは落合楼村上復活の理念がよくわかります。私はすぐにサポータ気分になりました)。
もうひとつが、さまざまな文化的なイベント。
有形文化財の旅館を舞台に、重要無形文化財保持者の能楽師青木道喜さんの講演が開催されたのです。
「道成寺」(安珍清姫伝説のほうがわかりやすいでしょうか)を、合間合間に大鼓や鼓や能管の拍子を発しながら謡、仕舞をなさりながらの解説で一気に引きこまれました。
その後、シテに能装束をつけていく様子を見せてくださいました。
前シテ(白拍子) 蛇なのでウロコ模様

かわいい模様の腰巻 
     
さらに表着(うわぎ)
               
鬘(人毛ですって!)

面を付けます

烏帽子も

この後、釣鐘の中で、後シテにどのように「変身」して行くかを一つずつ見せてくださいました。
後シテ1  般若の面、ウロコ模様が!

劇的変化を狙った後シテ2

能というと、動きも音も最小限という印象です。
講演の締めくくりに青木先生はこのようにおっしゃいました。
「能を演ずるということは、骨から動くといわれるほどの強い肉体と、感ずることのできる柔らかい(ここでちょっと間があって)心が必要です」
この「心」は言葉や理屈で説明されたものを理解して感じた気持ちになるのではなく、それを超えた「感ずる力」のことをおっしゃっているのだと思いました。それはまさに右脳の世界!

今日の体験を通して「能と脳」についてちょっと考えてみました。
あの緩やかな動きは、知らなければダダの動きというふうにしか受け取れませんが、学んでみるとかすかな動きの中にも象徴的なものが込められていることがわかりました。ここには左脳の出番があるということです。

謡はセリフですから言葉の意味がわかるところからスタートで、もちろん意味を知るには歴史的なことや文学上の常識なども必要ですね。勉強が不可欠(左脳)!いっぽう声音そのもので、怖いほど感情表現を担うのは右脳の分野です。

「楽器の音」と「人の掛け声」の効果は、思った以上に臨場感や緊迫感を高めます。つまりこれは理性的なものというよりも微妙に感覚的なものだということですね(右脳)。演奏そのものが楽譜ではなく「阿吽の呼吸で」行われると聞いたことがあります。
そして実際に能に触れてみると、その効果はこれなしには能は成立しないと思うほどなのです。
館内に飾られていた創作面

頂いたパンフレットに興味深いことが書かれていました。
「能をせん程の者の、和才あらば、申楽を作らん事、易かるべし。これ、この道の命也」風姿花伝書より
世阿弥が、右脳も左脳も必要だということを言っています。

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