脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

地図が読めない女?

2009年09月12日 | 右脳の働き

テレビを見ていたら、ちょっと気になる話が流れてきました。
まじめなドキュメンタリー番組です。
2009_0903_084100p1000024 チェスの世界チャンピオンになったハンガリー人の女性の話でした。

彼女の父親が心理学者で「天才は環境で作られる」という信念のもと、わが子をチェスの世界チャンピオンにしたその経緯などが語られていました。

その方法は「チェスの盤面の全体をイメージとしてそのまま記憶する」
もちろん、考えられないほどの反復練習のたまものです。

私たちが顔を認知するときには、以下の過程を経るといいます。
①個々の目や鼻や口を区別しながら比較するのではなく、まさにイメージとして全体像を認知し、
②すでに出来上がっている「顔」の記憶の内容と照合する
③そして親しい顔、ちょっと知っている顔、知っているはずなのに名前や関係は分からない顔という風に瞬時に分別する。

2009_0903_084100p1000025_2_2 この女性チャンピオンは、MRIで測定してみると、チェスの盤面を見るときには顔を記憶する領域が賦活化するというのです。顔を認識する領域で盤面を見ているということになります。
万の単位の盤面を記憶しているのですから、ほとんど考えることなく次々と駒を進めることができます。
訓練によって脳の能力を極限まで開発するとこういうことができ、それは才能の問題よりも環境の問題だという結論でした。
その説明の最中「相貌失認」(去年の春に四回に分けて説明しました。このページから前に三つです)という言葉が出てきました。

私たちは自分ができることは誰でもできると思ってしまいますが、その能力を発揮する脳の領域が壊れたら、その途端できなくなってしまうのです。
顔を認識するところが壊れたら、人物の違いはわかりません。
先のブログにも書いた私の患者さんは、人物だけの障害ではなく動物ということはわかるのですが、ゾウとキリンの違いはわかりませんでした。乗り物ということはわかるのですが、フォークリフトと消防車の区別はできませんでした・・・

臨床を持つということは、テレビに取り上げられるようなことも自ら体験できるチャンスがあるということですね。
Image ところで、同じ番組の中で10年くらい前のベストセラー
「話を聞かない男、地図が読めない女」を引用して
「女性は、右脳で地図が読めない。理由は脳梁が太くて、刺激が左脳にも伝わってしまう」というような説明だったと思いますが、?がいくつかつくような解説がありました。

それでは男性は、右脳に入った刺激は左脳に到達しにくいのでしょうか?左脳に入った刺激が右脳に到達しにくいということにもなりますので、男性はずいぶん刺激量が減ってしまうことになります。

一般的に、脳梁を介して刺激が伝播するスピードは宇宙的速度と言われているのです。太さは大きくは関係しないと思いますが。

確かに地図を読むのが上手な人がいますね。
番組でも言っていましたが、地図の中に起点があって、そこからどちらの方向にどれだけ行くのか、その後直進か曲がるか、あたかも地図の中に線描きしていくように理解すると地図はわかりやすいのです。
この機能はまさに右脳!

地図が不得手な人は(方向音痴と言われる人とかなりダブってると思います)地図の中で起点を作らないまま自分が動いてしまうので、起点からの図形が出来上がらないために位置関係が分からなくなってしまうのです。つまりうまく右脳が機能していない。

2009_0908_134600p1000030地図の理解力の差は、女性の脳梁が太いために刺激が左脳に分散される、脳の形態上の男女差から起きるというよりも、その個人の脳の使い方の差だと考えたほうが実態に合っています。

ちなみに私は地図は読めるし、描くのもできます。
私の夫は、とてもとても苦手です。ついでに仲間内では有名な方向音痴でもあります。「左脳の能力が高いのに、受け狙い?」といわれるほどです!

方向音痴の男性を探して御覧なさい。結構たくさん出会いますから。
種々の情報は、一度自分で咀嚼してからその意味を考えるようにしましょうね。
「話を聞かない男、地図が読めない女」はアメリカでは医学書扱いではないそうです。男女ではなく脳機能の左右差と理解すると面白い本ですよ。



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