原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

ボディスキャナが映し出す現代社会の落とし穴

2010年07月06日 | 時事論評
 昨日(7月5日)テレビ報道にて、空港における航空機搭乗前の検査の一環として開発されつつある「ボディスキャナ」の実証実験が行われたとのニュースが流れた。

 このニュースを垣間見た原左都子の脳裏に、真っ先にあらぬ妄念が過ぎったのだ。
(「ボディスキャナ」を通して見た私のナイスボディに一瞬にして心を奪われた男性検査員から“交際して下さい!”なんて迫られたらどうしよう~、困っちゃうな~~、ウッフ~~ン♪) 

 冗談はさておくとしても、現在実証実験が行われている「ボディスキャナ」の中には一人一人の体のラインが鮮明に写し出される機能を装備している機種もあるとの報道である。 このボディラインを堪能したいがために保安検査官に応募しそうな人種が存在してもちっとも不思議でないし、検査目的を歪めてボディラインを楽しむ特殊趣味の検査官も中には出現することであろう。(私の取り越し苦労に過ぎないとも言えない現実社会の荒廃ぶりを決して否定できないぞ。)
 
 昨日私がテレビニュースにて見聞した「ボディスキャナ」機種に関しては、体の詳細のラインまではクリアではないものの、何とも艶かしい裸の人間の全身像が検査画面に映し出されているのだ。 その艶かしいまでの裸体の中に「不審物」が写し出されるという検査画像のようであった。


 現在の航空機搭乗に伴う保安検査は、以前にも増して細分化している様相である。

 この私も、国内外を問わず航空機搭乗の際に何度も保安検査にひっかかった経験がある。
 ある時は私が身に付けているベルトの金属部分が反応したらしく、「ベルトをはずしてもう一度通過し直して下さい」と検査官から指示されたことがある。(ちょっと待ってよ。このベルトを着ける位置にはこだわって自宅の鏡の前で頑張ったんだから、ここではずすと再現が困難なのに…)と思いつつも指示に従わざるを得なかったものだ。
 この春郷里に帰省した際には、腕時計が検査機に感知されたようだった。
 それから、眉毛カッターのカミソリが何度もひっかかった。 刃の部分の長さが適当で重宝していたのだが、その刃渡りの長さが基準を超えていたらしい。 検査官から廃棄処分にするかあるいは別便にするかと迫られ、一度は別便にしたものの、別便で届いたカミソリをわざわざ受取所へ取りに行くのに大いなる時間を費やしてしまい、結局それが理由で長年愛用の眉毛カッターをその後別の商品に買い換えた経験もある。
 現在では“スプレー類”が困難を極める状態である。 静電気防止スプレーが機内持ち込み禁止とのことだったが、別便にする時間の余裕がなく結局空港にて廃棄処分を余儀なくされたものである。
 上記はすべて、航空機機内でのハイジャック防止策の一環と捉えられそうである。


 原左都子の場合、まさか覚醒剤や大麻等の密輸を企てた経験は皆無である。
 今回の「ボディスキャナ」の開発及び実証実験の趣旨とは、覚醒剤や大麻等等薬物密輸の取り締まりに重点が置かれているのであろう。
 確かに禁止薬物の世界的蔓延の実態は、法の水面下をくぐる違法な空輸や海輸によってもたらされていることは揺るぎない事実であう。 そして、人類がこの種の薬物の常用を繰り返すことがいずれは世界規模での早期の人類の滅亡に繋がることに関しても、原左都子も異論はない。 その水際である空港に於いて、是が非でもその密輸入を堰き止めるのが一番有効な手段であることにも間違いない。

 ただどうしても引っかかるのは、だからと言って数多くの善良な一般市民が自己の“ボディライン”を空港の保安検査所で公開させられるという手段で、親しい人相手にさえも普段は包み隠している至って個人的な情報を見知らぬ検査員に提供してまでも、(イコール“体をはってまでも”)この取締りの水際作戦に協力せざるを得ないのか、という部分である。


 しかも、現在の航空機搭乗券とは個人の氏名や年齢等の個人情報を詳細に提供した上でしか購入できないシステムとなっている。
 今後「ボディスキャナ」の実証実験が進んだ暁には、搭乗券情報をすべて網羅した上で、上記の保安検査所を通過して“ボディライン”という至って個人色の強い個人情報までをも公開せざるを得ないシステムが構築される訳である。
 今回の成田空港における「ボディスキャナ」実証実験にたまたま出くわした旅客者の中には、「あっと言う間に終わって、抵抗なく簡単だったので良かった」などとの軽率な回答もあるようだが、これは個人情報保護、プライバシー保護上とんでもなく安易な回答であろう。

 個人情報とは必ずや漏洩するものとの認識を、今一度市民には持ってもらいたいものである。
 その意味においても、個人のボディラインが鮮明に写し出される「ボディスキャナ」の採用だけは是非共拒否したい思いの原左都子である。
 その上で、今後空港において「ボディスキャナ」を運用しようとしている立場にある事業所には、まずは社員教育を徹底し、そしてボディラインという個人のプライバシーの究極であるとも言える情報の漏洩防止に徹底的に対処できるシステムの構築に尽力して欲しいものである。

 “マイボディ”を披露できる相手なんて、一般個人にとってはほんとにほんとに一部のごく親密な相手だけなんだからね~。 いくら国際的危機管理上の要請とは言えども、そこんとこ、心しておいて欲しいな~。 
Comments (4)