原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

韓流スターの死と追っかけおばさんの涙の醜態

2010年07月03日 | その他オピニオン
 先日6月30日に32歳の若さでこの世を去った韓流スター パク・ヨンハ氏の突然の自殺には、この私も少なからず驚きショックを受けた。

 私は特段韓流スターファンという訳ではない。 そんな私も「冬のソナタ」と「チャングムの誓い」の2本は一応制覇している。 夜就寝前にたまたまテレビのスイッチを入れたところ偶然再放送をしているのに出くわし、そのストーリー展開の面白さや韓流スターの皆さんの魅力に引き込まれて、その後最終回まで毎週視聴したのだ。

 「冬のソナタ」のヨン様(ペ・ヨンジュン氏)は評判通りの魅力のオーラを放っている一方、恋敵役だった(と記憶しているが)のパク・ヨンハ氏の存在感も光っていた。 男優として完璧にまでも洗練された魅力の持ち主のヨン様に比して、童顔で素朴さがあるパク氏の雰囲気には母性本能をくすぐられるような魅力があった。現在の日本の男優には感じられない一種の新鮮さをパク氏に発見したものである。
 そう感じていたところ、やはり多くの日本女性が思うところに共通点があったのか、パク氏もヨン様同様に「冬ソナ」以降、幾度も日本のファンの要望に応え来日しているようである。特にパク氏の場合、元々音楽分野においても活動しているアーティストであり、日本全国でライブツアーもしていたようである。
 今回のパク氏の自殺は、日本におけるライブツアーの途中で一旦韓国に帰国していた時に起きてしまったとの報道である。

 
 ここで私事となり恐縮だが、8月末に韓国の首都ソウルへ所用と観光を兼ねて訪れる予定の私である。 時差がなく航空便を利用すれば短時間で訪れることができるお隣の国韓国であるが、実は私にとって韓国へ旅立つのは今回が初めてである。
 お互い隣国同士でありながら過去の悲しい歴史を抱える関係上、交流が深いとは到底言えなかった両国を結びつける親善的役割を果したのは、まさに韓国ドラマの「冬ソナ」であり「チャングム」であろう。 両ドラマが文化的国際親善分野で両国の橋渡しをした偉業は“歴史的快挙”と言っても過言でないと私は捉えている。
 8月末にソウルへ行って韓流スターに会おうと志している訳ではないが、「冬ソナ」において心を揺さぶられたパク・ヨンハ氏が32歳の若さで他界してしまい、もうその地にはいない事実に“はかなさ”を掻き立てられる思いである。

 それにしても、やはり両国の文化的相違であろうか。
 韓国においては、今を煌く(あるいは直前まで煌いていた)人材の自殺が際立つように感じる。 例えば、韓国第16代大統領であったノ・ムヒョン氏も大統領退陣直後に自殺するに至っている。 あるいは人気絶頂の20代の若手女優の自殺の報道もあるし、今回のパク・ヨンハ氏にしても自国における人気は下降傾向の様子であったものの日本からのオファーは絶えておらず、アーチスト生命は今後いくらでも維持できたはずである。
 パク・ヨンハ氏の場合、自殺の原因として実父の病気に関する苦悩も報道されている。 直系尊属を敬うという歴史的文化人類学的遺産を、我が国が失いつつある実態とは比べ物にならない程に今尚継承している韓国の現状が、今回のパク氏の自殺に大いにかかわっていると考察できるのかもしれない。


 さて、話を日本の“韓流スター追っかけおばさん”(おばさんと言うよりは“婆さん”と表現した方が適切かもしれないが)に移そう。

 今となっては政権から消え去ったセレブ鳩山前首相の奥方鳩山幸氏も、ひいきの“韓流スター”を追っかけていたという報道を見聞したことがある。 私としてはさほど興味がない話題であるため詳細は把握していないが、どうやら幸氏は韓国までそのひいきのスターを追っかけて旅したと見聞している。 セレブ故にまさか“公費”を拝借した訳ではなく自費での行動であろうが、一国の首相の奥方たるもの一体何を目的にその種の目立つ行動を取ったのであろう。必ずや報道されてしまう自分の私的趣味がまさか韓国との親善に貢献できると勘違いしたのでもあるまいに…

 それにしても、昨日のパク・ヨンハ氏の出棺の様子をテレビ報道で垣間見た私は愕然としてしまった。
 日本の報道が捉えた影像はパク・ヨンハ氏の出棺よりも“パク氏追っかけおばさん”がツアーを組んで(?)この出棺式に参加して沿道で一斉に涙を流している“醜態”なのである。
 いや、自由にしていいと思いますよ。 どうしても家族も子どもも日本にさて置いて韓国に渡ってパク氏の死をお悔やみしたいのならば経済力が許す限りそうすればいいでしょう。

 それにしても、やはりこの光景は私に言わせてもらうと“異様”としか言いようがない。
 恐らく40代から70代と思しき日本女性の集団が沿道で一斉に号泣する姿に、私は一種の“フラストレーション発散”の心理を垣間見てしまうのだ。
 きっとこの女性達は普段何かに満たされていないに違いない。 その欲求不満解消の矛先として「韓流スター」に心を回避しているのであろう。 しかも、この人種とは自らの力ではその欲求不満解消が不可能であるため「集団心理」に依存してしまっている。“皆で泣けば心が晴れる”との集団心理に酔っているだけの浅はかな心理が読み取れる気がする。

 だが、どう見てもこの光景は日本にとって“恥晒し”でしかない。
 今は亡きパク・ヨンハ氏にしても韓国国民にしても、この日本高齢者女性の集団心理を自国の経済力に繋げようとも、決して“心の拠り所”には転化し得ないはずだ。 (また日本の“勘違いおばさん”がいっぱい来たね…、と思うのが関の山ではなかろうか… )
 我が身の欲求不満解消のため故の身勝手な国際親善などむしろ自粛した方が、今後の日韓両国の真の親善に繋がるのではないかと私は思うのだが…。 もう既に経済力も文化力も韓国に優位を譲っている実態を、日本の世間知らずのおばさん達は少しはわきまえて今後行動するべきであろう。
             
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