実家の畑では種々の冬野菜、そして春に収穫する野菜、初夏に収穫する野菜などが
これからの厳しい雪の季節を耐え忍ぶように、アラレの降る中しっかりと根付いている。
11月後半に収穫した 丸大根、この冬も大根寿しを作るため母が下準備の塩漬けをしていた。
暦も変わり師走、母はその日の内に大根寿しを漬けようと下漬けしてあった大根を取り上げ、
2、3日間仕込んだ麹(こうじ)、二シン、人参など、すべての準備をしていた。
ところが思いもかけずの体調不良で入院。
さてどうしたものか、大根寿しは今すぐにでも漬け込む状態になっている。
しかし手の込んだ漬物は実家の者も私も漬けたことがない。 方法が分からない。
今回はあきらめようか、せっかくだけどこれらの材料を捨ててしまおうか、と思いあぐねていたら
代わりに漬けて、と、意識の戻った母が作り方を教えてくれた・・・こうしてああして、と。
大根の塩加減は確かめてから加えること、というものの、どれほど加えたら良いのか見当もつかず。
塩辛いより薄味の方がましだろう、味が薄ければあとで醤油をかけるなりすればよい、と思って
薄味にして教えられた通りにして漬けた。
大根、麹(こうじ)、二シン、人参、大根、麹(こうじ)、二シン、人参・・とサンドイッチにして一樽分を漬けた。
さらの漬物用ナイロン袋の口をしっかりと結び、その上から軽めの重石をのせて完成。
そして出来上がった 大根寿し がこれ。
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窯変鉄耀皿 縦 24、0cm 横 24、0cm 高 4、5cm |
入院が少し長引き、加えて師走の気温も心もち高くて取り上げるのに時間がかかってしまった。
母の立会いのもと、しっかりと結んであった紐を解くと、いつもの大根寿しの香りがしてきた。
さて肝心の味見。 ん、味はほぼ完璧に仕上がったが少し酸味がある(塩が少なすぎたのだ)。
でも母の味にかなり近づいている。 ・・・「心配しとったけど、まあまあの出来やなぁ」と母・・・
この漬物、途中で味を確かめようと取り出すと、必ず失敗してしまう厄介な漬物なのです。
そのため熟成がどうなっているか、味が馴染んでいるかは上げるまで分からないのです。
たかが漬物、されど漬物、塩加減一つでガラッと味が変わってしまうのです。
小松では 「大根寿し」 と言い、 「二シン」 といっしょに漬け込むことが多い。
金沢当たりでは塩漬けした 「鰤=ブリ」 を同じく塩漬けにしたカブラ大根に挟み、
私が行ったように順々に漬け込んでいくのが一般的で、 「カブラ寿し」 と名付けている。
この漬物は一種の 「なれ寿し」 でもあると思う。
店頭で売られている大根寿しもカブラ寿しも、高級品扱いの価格設定をしてある。
以前それ等を買って食べたことがあるが不思議と甘かった、なぜか。
麹(こうじ)の、あの自然の甘さとも違うし、砂糖とも違うような・・・?
それでも懐かしい味として、この時季には好評でもあるのです。
それぞれの家庭にはその家でしか味わえない料理や漬物がきっとあると思う。
親から子へと伝えていく味、何でもありの多様化の現代において
代々培ってきた食べ物は残していくべき、と今回の突然の出来事でさらに強く思ってしまった。
我が家に伝わる味、母からもっと教わっておこうと思った。