水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分からないユーモア短編集 (10)天気

2020年08月02日 00時00分00秒 | #小説

 天気は優柔不断(ゆうじゅうふだん)で、いつ急変(きゅうへん)するか分からない不確かなものの一つである。当然、私などの凡人にはその先の変化は分からない。^^ 要は、天気が人智(じんち)の及ばない性質のものだということである。
 ここは、気象庁のとある観測所である。
「いいえっ! この雨雲の流れからして、一時間後には必ず晴れてくるでしょう!」
「ははは…その読み筋は、温(ぬる)いっ! 緩手(かんしゅ)、緩手っ!!」
 最近、囲碁のアマチュア初段に昇段した先輩予報官は、覚えたばかりの[温い]を、したり顔で使用して窘(たしな)めた。
「そうですかぁ~? 先輩…」
「ああ、そうだっ! 天気はそんな単純なもんじゃないっ!」
 先輩予報官は自信有りげに言い切った。
「そうなんですかね?」
「ああ、そうなんだっ! まあ、一時間後を見ていたまえっ!」
「はいっ!」
 その一時間後である。天気は後輩の予報官が指摘したとおり晴れてきた。
「晴れたな…」
「はいっ!」
 ハズレた先輩予報官は面目をなくし、スゥ~っと幽霊のようにその場から去った。
 まあ、天気は分からないから断言しない方がいい性質のものだということになる。そういや、『見込みです…』を予報で、よく耳にする。^^ 

                               完


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