「あっ! もしっ!!」
二人が庵(いおり)の外へ出た瞬間、老婆が大声で呼び止めた。二人の脚は今まで聞いたこともない老婆の大声に、ピタリ! と止まった。いや、止められたと言った方がいいのかも知れない。二人は後ろを振り返った。庵の前には老婆が立っていた。
「一つ、言い忘れましただ…。お帰りにならっしゃいましたら、鳩村様に老婆がよろしゅう言ってたとお伝え下せぇまし…」
「署長とは、どのような?」
「あのお方は全てをお知りになっておられる崇高なお方でしゅじゃ~」
「はぁっ!」「…」
口橋は驚きの声を上げ、鴫田は無言で驚いた。
「なにもそのよう驚かれることはごじゃりましぇん。鳩村様はあの彼方から来られた尊い方ですじゃ。ミイラは今も生きておることをご存じのはずですじゃ」
「どういうことです? 消えたミイラが生きておるとは?」
「初めから五体のミイラなどいなかったということでごじゃりますよ」
「それじゃ、我々は何の捜査をしておるのですかっ!?」
「お婆さん・・いや、ご祈祷師様、ならば、署長はなぜ捜査本部を立ち上げたのですかっ!?」
口橋が声高に訊ね、鴫田が続いた。
「フフフ…詳しいこたぁ、署長でいらっしゃいます鳩村様にお訊ね下せぇ~まし」
老婆の怪しげな嗤(わら)いに、二人は背筋に悪寒が走る思いで凍りついた。
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