水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第三章 (第九十六回)

2012年04月16日 00時00分00秒 | #小説

   幽霊パッション   第三章    水本爽涼                                              
                                                  
    第九十六回

「おお! 君か…。見えんと、なんか不便だな」
『いいじゃないですか。電話してるかラジオを聴いてると思えば…』
「電話にラジオか。ははは…上手いこというな、君は。それよか、別状ないようで、よかったよ」
『ええ、お蔭様で…。案ずるよりナントカでした』
「産むが易(やす)し、か…。そうだな。私も変化なかったしな」
 二人(一人と一霊)は、お互い、陰陽の差こそあれ、ニンマリとした。
「ははは…。そう落ち込むなよ。また人間界へ戻れるんじゃないか、目出度いことだ」
『はあ、それは、まあ…』
「私の方は、その時点で君の幽霊以降の記憶は、完璧に消えてるんだろうがな…」
 今度は上山の方が少しテンションを下げた。
『課長! そう肩を落とさず…。生前の僕の記憶は残ってるんでしょうから…』
「ああ、そりゃそうだが…。ははは…、お互い、慰め合ってりゃ世話ねえや」
 二人(一人と一霊)は、ふたたび陰陽の差こそあれ、ニンマリと笑った。


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