「へぇ…」
老婆は、やはり前の老婆に間違いない…と口橋は見て取った。弥生時代の装束を身に着けている老婆など、他にいる訳がない…と、即断したからである。^^
「実は、この前、南西の方角から降りてきよるとミイラが言っておったと申されましたが、その五体のミイラが警察の霊安室から忽然と消え去ったんですよ。その件で今日は寄せて戴いた・・というようなことでして…」
口橋は細かな説明をした。
「さようでごじゃりましたか…。ミイラは消えよりましたか…」
「はい…その消えたミイラはどこへ行ったか? それを占ってもらえないかと…」
「なるほど…。消えよりましたミイラがどこへ・・ということでございましゅな?」
「そのとおりで…」
「お婆さん、分かりますか?」
鴫田が会話に加わった。
「ちと、お待ち願えれば、祈祷いたしましょうほどに…」
「是非、お願い致します…」
二人はペコリと老婆にお辞儀した。この不可解な事件とも事件でないとも言えない一件の手がかりは、今のところ老婆を置いて他にはいなかったのである。
「あの…どれほどお待ちすれば?」
「さよでしゅな、およそ20分ばかりお待ちを。ドクダミ茶でもお出ししますでな…」
「いや、お構(かま)いなく…」「お構いなく…」
二人は同時に遠慮した。本心だった。^^