幽霊パッション 第三章 水本爽涼
第九十九回
『問題は、いつになるかですよね』
「そんなに気にすることもなかろう。なるようになるさ、ははは…。別に開き直る訳じゃないが」
『課長が云われるとおりかも知れませんね。僕も、もう考えないことにしますよ』
「それがいい、それがいい。ただ、君の姿を、もう一度、見たかったよ」
『いやあ…、僕も見えるシチュエーションで、もう一度、お話したかったです。まあ、こうなった今は、仕方がありませんが…』
「ああ…」
二人(一人と一霊)は俄(にわ)かに沈黙した。
『地球語もよかったんですが、エイズや癌(キャンサー)その他の諸病に有効とされる物質が発明されたのは朗報でした』
「ああ、それもあるな。いや、他にも反放射性物質の発見もあるな。これは、十万年規模でしか消せない放射性廃棄物を数分で完璧に中和除染できる物質なんだからな。人類の革命的成果と云っていい」
『ええ、無論です。それより、医学の発明の方も偉大ですよ。なにせ、人類の生存だけじゃなく、地球上の生物全般に有効なんですから…』
「そうだな。放射能とか地球語とかの文明進歩で派生したものじゃなく、人類を含む地球上の全生物の存在に最も大切な発明だった…」
上山は霊魂平林に云われて気づき、しみじみと話した。
『でも課長、これだけ偉大で究極の発明やら発見が続くと、なんか変な感じですね。僕の他にも、そう思ってる人がいるんじゃ…って思えます』
「それは云える。ノーベル賞ありきの柔(やわ)な発明とか発見じゃないからな。私だって如意の筆の荘厳な霊力を知らなけりゃ、恐らく首を捻(ひね)って、地球はどうかなっちまったんじゃないか…って思うぞ」
『そうですよね。僕だって恐らくそうなります』
霊魂平林は上山に同調して頷(うなづ)いた。
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