水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

分からないユーモア短編集 (9)景気(けいき)

2020年08月01日 00時00分00秒 | #小説

 景気(けいき)と書かれた文字を目にされれば分かっていただけるだろうが、お聞きになっただけではお分かりにならないだろう。それだけ日本語は語彙(ごい)[ボキャブラリー]に富み、実に数多いのである。「ケーキかい? この前、食ったろっ? 誕生日は、とっくに過ぎたじゃないかっ? えっ!? そうじゃないっ?」なんて話にもなりかねない。^^  冗談はさておき、景気は誰の目にも見えないから、私達は、『あっ! 景気だっ! 元気ねぇ~な…』などと、その存在を実感できず分からない訳である。^^ ただ、データとかの数値で推測することは可能だ。まあそれも、飽(あ)くまで推測であり、最近、国会で物議(ぶつぎ)を醸(かも)し出した統計データの不正問題などが生じれば、やはり分からない・・ということになる。^^
 とある町の商店街の一角(いっかく)である。店の主人が品出(しなだ)しをしている。そこへ、いつもの常連客が顔を見せた。
「おっ! いつも、ご精が出るねっ! 景気はどうっ!?」
「景気ですかっ? まあ、小さいショートケーキってとこですかね」
「ははは…上手(うま)いこと言うっ! ダジャレの例(たと)えが実にいいっ!」
「褒(ほ)めてもらってど~もですが、それで景気がよくなるってことでもないですからねぇ~」
 店の主人は品出しの手を止め、深いため息を一つ吐(は)いた。
「景気ってのは、分からないからねぇ~」
「ええ、そうです。よくなってるようで悪くなってる。悪くなってるようでよくなってる、みたいな…」
「そうそう! いや、私もね。給料上がって喜んでたんですよ。そしたら、なんのことはない。その分以上にさっ引(ぴ)かれてました、ははは…」
「ったくっ! 景気ってのは分からないですなっ!」
「me too![そのとおりっ!]」
「はぁ? …水戸は、ここから数十分ってとこですがっ!」
 景気は分からない人の英語のようなものかも知れない。^^ 
  
                               完


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