水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

めげないユーモア短編集 (55)記録

2022年11月26日 00時00分00秒 | #小説

 つい先ほどまで賑(にぎ)やかにオリンピック競技が行われていた女子走り高跳びの会場である。
 時間を少し戻(もど)すことにしよう。いよいよ決勝はクライマックスを迎えようとしていた。接戦が接戦を呼び、バーの高さはオリンピック・レコードに近い高さまで引き上げられている。予選を通過し、決勝に残った4人のうち3人は、2.00m以上の自己記録を持っているにも関わらず全員が試技3回[2.00m]を失敗した直後である。その瞬間、1.98mまで一度も無効試技がなかったトベルナ・コレハー[&#%]が5度目のオリンピック出場にして初の金メダルを獲得したのだった。彼女はすでにメダル圏外だったから、3人が最終試技を終えるまで気分的にはすっかりめげていた。自力での優勝が消えたのだから、めげるのが道理で、めげない方が怪(おか)しい訳である。アナウンサーの質問に答える金メダル決定直後の彼女の言葉である。
アナウンサー「どうでしたか? 帰り支度(じたく)を、されてましたが…」
通訳「&%#$ '%"&!( &&$#$$#$%…」
トベルナ・コレハー「%&$& #%&" ('&%'%$#」
通訳「はい、すっかりめげて、早く引き上げようと思っていました」
アナウンサー「それが、思いもよらない結果になりましたねっ!」
通訳「##"$、'&$%$&&&% !」
トベルナ・コレハー「%$, %%$$%& !""#$$"'$$#$% $#$"&$」
通訳「はい、なりました。最後までめげないで、よかったですっ!」
アナウンサー「途中棄権しませんでしたが…」
通訳「$%$%& #""# (&%$' …」
トベルナ・コレハー「%$」
通訳「はい」
アナウンサー「めげない、あなたの精神力の金メダルですよ、これは」
通訳「%#& "% &%&%%#" (&&$$!>」
トベルナ・コレハー「%$,#"$''(」
通訳「はい、今回は記録じゃなかったと思います」
アナウンサー「会場から、お送りしました。マイクをスタジオにお返しいたします」
 めげない気力が、記録ではない最後の金メダル勝利を呼び起こすのである。^^

                   完


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