水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

めげないユーモア短編集 (58)睡眠不足

2022年11月29日 00時00分00秒 | #小説

 睡眠不足だと、体調にいろいろな不具合を生じる。例えば、食欲不振、疲感といった症状だ。生じた不具合にめげないで状況を続ければ、進行して健康を害することになる。だから、こういう場合は、めげた方がいいのだろう。^^ めげないのも、時によりけり・・ということに他ならない。
 とある真夏の早朝の公園である。朝早くから一人の老人が、まだ暖気が残った公園を、めげないで散歩している。その対向から、同じような老人が小犬のチワワを連れ、こちらも暖気にめげないで歩いてくる。二人はバッタリと出食わした。
「あらっ!? お宅も…」
「はあ、そういうお宅も…」
 犬を連れていない老人は、犬が苦手(にがて)で、小声で返した。
「ははは…眠れないんで睡眠不足ですわっ!」
「私もそうなんですが、こうしてめげないで歩いておるようなことで…」
 犬を連れた老人は、ゆとりの表情で上から目線で言った。小犬のチワワでも犬は犬である。睡眠不足にめげないで、というより犬にめげないで老人は気丈(きじょう)に返した。
「年齢を重ねますと、質のいい睡眠が必要になりますなっ!」
「と、いいますとっ?」
「短くても熟睡すりゃいいんですわっ! どうです? あちらの氷(こおり)屋でカキ氷でもっ!?」
 犬を連れた老人は、またゆとりの上から目線で言った。
「それは、いいですなっ!!」
 かき氷は小犬の恐怖心にめげないで跳ねのけ、勝利したのである。
 睡眠不足は、カキ氷に弱いようである。^^

                   完


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