９月に咲くヒマワリ

バイトの行き帰りのバスの中では、大抵寝ている。
だけど今日、久々に起きたまま外を見ていたら、
道路沿いのヒマワリが目に入った。

なぜか、９月になってから咲くヒマワリ。
（…もしかしたらヒマワリではないのかもしれない。茎細いし）
それはずっとそこに植えてあって、原チャで通勤してるころにはこの時期は毎日すぐ近くで見てた。


今年はいつ咲いたんだろう。今まで気づかなかった。
そんなことをぼんやり考えていたら、
一人の女の子のことを思い出した。




ヒマワリが植えてあるそばの電柱のところに…何日か花束が置かれていた。
毎朝その様子を見ながら、原チャですぐ横を通り過ぎていた。
…誰かが、ここで事故にあったんだろう。
たまに…あることだ。
自分も運転には気をつけないとな、と思ってた。

ある日、その場所に座っている女の子がいた。
少し離れた場所からその子に気づいていた私は、なんとなくその子を気にしつつ、いつものように横を通り過ぎようとした。


通り過ぎる直前、彼女が顔を上げた。目があった。
…泣きはらした顔だった。



通り過ぎる。いつものように。
見てはいけないものを見てしまった気がして、苦しい気持ちになった。
若い、普通にかわいい子だった。…あんな泣いていたのなら…あっこで事故にあったのは…もしかして、彼氏さんとかだったのかもしれない。

その場所で泣くのは、いったいどれだけの苦しさがあるんだろう。
その場所に花束を持ってくるのは、どれだけの悲しさがあるんだろう…。




何年も前のことだけど、ヒマワリを見ながらそのことを思い出した。
あの子はどうしただろうか。
少しでもあの悲しみは癒えただろうか。
それともまだ…



バスの高い窓からじゃ、花束にもきっと気づかない。
９月に咲くヒマワリに、今まで気づかなかったように。