「パティシエになりたーい!」ブログ。

元パティシエ・オペラのお菓子の話やらオタクっぽい話やらのごちゃ混ぜブログ。

またまた、最近読んだ本

2018-09-21 19:05:27 | 感想文
本日は大安なり (角川文庫)
クリエーター情報なし
KADOKAWA/角川書店

これも夏の文庫フェアの小冊子の紹介から。表紙がかっこよかったのと、やはり自分も結婚式を挙げたところなので気になった。うちが挙げたのは神社だったし、シンプルの極みみたいな式やったから、こういうゴージャスな式場とは全然違ったけど、同じように大安の日だったから、一日に5組の結婚式があって、控室あたりのスタッフさんはてんやわんやしてた印象があるので。
とある有名な結婚式場の、大安の一日を描いた群像劇。複数の人の視点が切り替わりながらに語られるために最初はなかなか混乱した(しかも双子もいるし)けど、中盤からは先が気になるのもあって一気に読めた。
忘れてたけど、私は創作上の「双子」が大好きなんです(別に実在の双子が憎いわけではない)。…でも、この双子は……、今まで見たり読んだりしてきた中でもかなり強烈な双子だった……おもしろかった。お互いへの感情とかを理解できるかって言われるとそれは「全然!!」って答えるしかないけど。
いやほんま「結婚式」ってかなり特殊な場だよねえ。私も友人たちの式にいくつか参加させてもらったけど、ほんと、たった一日、数時間のためにどんだけ金をかけるのか、準備とかで時間をかけるのか…!(大抵は)人生で一度きりの、自分が主役になれる日なんだもんねえ…。シンプルの極みだったうちの神社の五組の主役と、それぞれのゲストたちの中にも、実はいろんな人の色んな思惑はあったのかもなあ、とか思っちゃう。いやうちはあんま何も考えてませんでした。儀式の手順を間違えないかっていう心配しかしてませんでした!(……)

よるのふくらみ (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

……感想、書きにくいわあ、これ……。
これの感想が書けないばっかりに、図書館への返却がだいぶ遅れてしまった。反省。いや、おもしろくなかったとかじゃ全然ないんです。ガシガシ読めました。ほんまに。
これもまた小冊子の紹介を読んで「たまにはこういう、なんかドロドロしてる系も読んでみよう」って思って借りたんだけど、そういや「ドロドロ」は全くしてなかったな。もっとこう…どうしようもない気持ちになって苦しくなるかなあと思ってたんだけど、全体的にはさらっとしてて、そのドロッとしてる感情の部分をどこに持っていけばいいのかわかんなくなったというか…うん。
ずいぶん後で気づいたんですが、うちは創作上の「三角関係」がめちゃ苦手なんでした!(現実の三角関係が好きとかではない…ってもうええな、このパターンは)感想がひねり出せなかったのはそのせいもあるのかも?なんかねえ…、三角関係ってどうしたって誰かはかわいそうな結末になるわけじゃないですか。で、うちは大抵そのかわいそうな人を好きになってしまうので、見てて苦しいんよね…。

幻夏 (角川文庫)
クリエーター情報なし
KADOKAWA

図書館で次は何を借りようか考えてて、思い出したのがこの本だった。本屋さんで、このカバーじゃなくその上に字ばっかりの紹介がずらずらっと書いてあった(そういえば、似たような感じで「タイトルを隠して売って話題になった本」も読んでみたいな)。そこに文字があればとりあえず読んでしまう私なので、それを読んで作者さんが「太田愛」さんだと気づき、それでますます気になって、覚えてた。
「太田愛」さんは私の大好きな「相棒」シリーズの脚本家のひとり。「相棒」にはたくさんの脚本家さんがいるけど、その中でも私が一番くらいに好きな人。人気もあるらしく、最近はスペシャルの時とか、劇場版の脚本を担当されることが多い。小説を書いているなんて全く知らなかった。アニメの「デュラララ!」で名前を見た時も驚いたけど、脚本家さんってなんでもできるんですね…。
読み始めてから、自分が本格的な「ミステリー小説」を全く読んだことがないことに気づき、大丈夫かなって不安になった(「相棒」はミステリーだから見てるわけちゃうし…えっミステリーじゃない?)。まあ読むの自体は大丈夫だったんだけど、ハラハラがず~っと続くまま読み続けるのってしんどいな…とちょっと思った…。
でもそれは最初だけで、章の区切りとかで「さて休憩~」と思って本を置いても、先が気になって気になってすぐに続きを読んじゃう…ってのを繰り返し、結局お休みの一日で読み切ってしまった。だいぶ序盤で色んなことの繋がりを匂わせる描写があったから「えっ、これまだこんなにページあるのに大丈夫?」って思ったけど、全然大丈夫でしたね。ていうか今書きながら気づいたけど、これって「相棒」見てる時と同じやな!「えっ犯人…!?いやまだ15分ある、おかしいぞ」みたいな。
最後の一行で涙が出そうになって、そこで初めて、ここまで一度も泣きそうにならんかったんや、って気づいた。悲しいシーンは何度もあったのに、ハラハラドキドキな緊張感がすごすぎて、泣いてる場合じゃなかったらしい。
うちってミステリーも結構いけるんやな!とわかって良かったです。やったぜ、読む本の幅が広がるぞ~(収拾つかなくなるような…)。ってかね、太田愛さんはこれが2作目の小説だったんですよね。どうやら世界は繋がっているらしく、ちょいちょいその前のお話の存在を匂わす描写があったので、1作目から読めばよかった…と思いました。まあいいねん。次1作目読むからいいねん。

最近読んだ本

2018-08-27 22:53:57 | 感想文
みみずくは黄昏に飛びたつ
クリエーター情報なし
新潮社

あっAmazonの画像やと帯がない!(いつもそうか…)帯のツーショットがすごいいい雰囲気やのにな!
村上春樹さんのファンで、そのまま小説家になったという川上未映子さんが村上さんにインタビューする本。
すごくおもしろかった。……と言ってもうちは川上さんの質問にも村上さんの回答にも全くついていけず、初見では完全に置いてけぼりでした。終盤でやっと大事なことに気づき、そのまま最初からもう一回読み返しましたw
これよりちょっと前に昔のインタビュー集「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」を読んでて、その時も思ったけど…なんか作者さんのインタビューって、答えを見ちゃってるみたいでなんか「見ていいのかな」みたいな気分になる。多分うちが何度も読んでる割にはなんにも意味とか考えてないからだな…。
てか村上さん自身が何度も繰り返してるから本当に本当なんだろうけど、展開もラストも何にも考えないで書き始めるって、マジで信じられない…。お借りした本だけど、いつか絶対に手元に置いて、これまた何度も読み返したいと思いました。
あ、初見の終盤で気づいた大事なことは「うちは村上さんの『文体』が好きなんだ」ってことです。


とにかくうちに帰ります (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

表紙の感じとタイトルから、なんか定時だから誰が何と言おうと帰るし!!っていう話かと勝手に思ってたら、「豪雨による帰宅困難者の心模様を描く…」とか紹介されてて一気に興味が沸いた本。目次のページを開いて初めて短編集だということに気づいた(おい)。表題作は最後かあ…、これすごい気になるから先に読みたい…ともちょっとだけ思ったけど、とりあえず最初から読んだ。これがおもしろくてするする読めた。お話としては全部で6つ入ってるって目次でわかるんだけど、そのうちの5個は同じ人の視点で語られるので、イメージもしやすいのが読みやすい理由だったと思う(ずっと前も書いた気がするけど、私は「短編」は割と苦手。大好きな村上春樹さんの作品でも構えてしまう。主人公の気持ちに寄り添えないままお話が終わってしまって、突き放されてるような気持になってしまうから)。こういう感じの職場で働いたことはない私だけど、何の引っ掛かりもなくするする読めて、あーこういうことってめっちゃあるんやろうなーとか考えれておもしろかった。
6つ目のお話、期待の表題作にたどり着いた時、持っていた本を上から見て位置を確認すると、まだ本の厚みの半分くらいだったので嬉しくなった。別に短くてもおもしろい話はあるんやろけど、うちとしてはできるだけ長く読みたい。
んで、読んだんやけど…そこまでの半分にかかった合計時間より短い時間で、あっという間に読み終わってしまった。豪雨で交通機関がストップしてしまって、仕方なく歩いて帰る人の話。って書いてしまえばそれだけやのに、一気に読まされてしまった感じ。別に途中で橋が落ちたりすごい怪獣?とか出てきて大ピンチになったり、命を懸けたラブロマンスとかそういうのないのに。すごい。
いつもの帰り道やのに、なんでこんな大変なことになってるんだっけ?とか思うこと、ある(うちは旅行先とかでそういう目に遭いがちだけどね…)。電車やバスが普通に動いて、「家に帰れる」ってことがすごく特別に思えるんよね…。
好きなセリフ。
「屋根を考えた人はえらいと思うのよ」
「わたしは、アイスクリームを発明した人がいちばんえらいと思ってたけど、撤回して、今日から屋根を発明した人にしようと思う」


あこがれ
クリエーター情報なし
新潮社

上のインタビューで川上さんの事も大好きになったので、せっかくだから読んでみようと借りてみた。村上さんのファンってことだし、もしかして文体とか似てたりするのかしら?ってかなりドキドキしながら読み始めたんやけど、始まったとたんがめちゃくちゃに独特で難解に思えて、もう一息で読むの諦めようかと思ってしまった(かなり読み進むまで、日本が舞台ってことも確信が持てなかったし…いやこれはうちの見落としもあるのかも)。独特さの理由は小学生の子の一人称だからで、慣れてくるとすいすい読めるようになりました(これまた独特なあだ名の友人たちのイメージが描きにくくてそこはちょっと困ったけど)。自分が小学生の時にこうやって思っていたかどうかはわかんないけど、「あこがれ」って感情は意外に身近なところに感じてたと思う。多分「あこがれ」って言葉とか意味を意識しないままに。
好きなセリフ。ようわからんことに巻き込まれて、成長していったらこんなことばっかり起きるんだろうか、って言った麦くんへのヘガティーの言葉。
難しいこととかさ、いやなこととかさ、それはもういろんなことがわあってふえてくるんだろうけど、やってくるんだろうけどさ、でもこっちだって、そうじゃないところに自分でさっといけるようになるんだよきっと。自分で決めて、自分の力で。
…いいなあ。こういう風に思えてたら、大人になるのはもっと楽しみだったかもなあ。
表紙もめっちゃ素敵ですね。まじまじ見ちゃう。


さいはての彼女 (角川文庫)
クリエーター情報なし
角川書店(角川グループパブリッシング)

最近「村上さん以外の本も読んでみよう」をテーマにたくさん読む!って決めて、それで最初にたよりにしたのがあの、本屋さんでやってる夏の文庫フェアを紹介した小冊子なんです。色んな人の小説があるし、あらすじとかざっと確認できてすごく役に立ってる(それでフェアで買うんじゃなく図書館で探してるあたりが相変わらずセコイんやけど…でもこのペースで買ってたら実際えらいことになるし…)。今回ここに載せてる本、対談集以外は全部それ。
んでこの本は小冊子の紹介では「失意のまま出かけた一人旅は行き先違いで……!?」ってなっておりました。実際借りてきて、文庫の裏表紙にあるあらすじを読んでビックリ!その「行き先違い」は「女満別」らしい!大好きな北海道ってだけでも嬉しいのに、つい先日新婚旅行で行ったばかりの場所なのでめっちゃワクワクしました。読み始めると女満別どころか、めっちゃうちらの行った知床の風景が描かれていて、簡単に風景を思い浮かべることができて、もうニコニコしまくりで読んでました。しかも別の話ではめっちゃ「タンチョウサンクチュアリ」出てくるし。行ったよ~!タンチョウ見た!うちが行った年は記録的にタンチョウがいなかったらしいけど!(そんなんばっかやね…)
いつか「行ったことある場所がテレビで出ていたりすると嬉しい」ってことに気づき、このブログでも「行ったことあるとこマップ」とか作って遊んでたりもしましたが、小説で出てきても嬉しいんだなって今回新たにわかって嬉しかったです。「女性と旅と再生がテーマ」って小冊子にもあったけど、おかげでどれもすっごく読後感がいいし。
「人生を、もっと足掻こう」って言葉がとても胸に沁みました。
そうそう、私、小さい頃から本を読むのが大好きでしたが、よく読書好きの人が表現する「本は、読むだけで別の世界に連れてってくれる」みたいな感覚がどうにもピンときてませんでした。お話はおもしろいし本は大好きやけど、あくまで読んでいる私は私であって……とか思ってた。でも、移動中のバスや電車の中でこの本を読んでいるとき、初めてその感覚がわかった。意識してないだけで私もいつも別世界に連れてってもらってたみたいです。だってこの異常な猛暑の中、北海道の話を読んでる時は確かに爽やかな風を感じてた!!(いや冷房効いてたとかじゃなく!)


マイ・インターン

2016-11-05 16:50:36 | 感想文
TSUTAYAのDISCASで、昨年度のレンタル年間1位だったかなんだかで借りてみました。アン・ハサウェイは「プラダを着た悪魔」もすごく良かったし。
マイ・インターン [DVD]
クリエーター情報なし
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント


んで見たんだけど……すごいよかった!!
笑えるシーンもいっぱいあって、見終わった後幸せな気持ちになれる…、すごく素敵な映画でした。なんていうか、元気と、やる気がもらえる。

Amazonの内容紹介より。
あの『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイが、ファッションサイトの社長に!
全ての女性を応援するデトックス・ムービーの誕生


わたしを救ってくれたのは、40歳年上の“新人(インターン)"
舞台はニューヨーク。
華やかなファッション業界に身を置き、プライベートも充実しているジュールス。
そんな彼女の部下に会社の福祉事業として、シニア・インターンのベンが雇われる。
最初は40歳も年上のベンに何かとイラつくジュールスだが、
やがて彼の心のこもった仕事ぶりと的確な助言を頼りにするようになる。
そんな時、ジュールスは仕事とプライベートの両方で思わぬ危機を迎え、大きな選択を迫られる──。


最初は大丈夫かな……ってハラハラ見守ってしまってたんだけど、ロバート・デ・ニーロ演じる「ベン」からにじみ出る安心感みたいなものに、アン・ハサウェイ演じる「ジュールズ」と一緒に癒されてしまってたというか…。うん、どこを取っても素敵なベンを中心に、周りが変わっていくのを見るのをニコニコして見れてた。
映像特典での誰かの言葉だけど、「たった一人」の存在で場の空気は変わったりするんだなあって、感心して見てた。あと、「自分たち若者はパソコンとかは上手く使えるけど、人間関係を築くのはそんなに上手ではない」って言葉も、何か映画見る前とは違って聞こえた。だから悪い、とかじゃなくて、その得意なこと得意じゃないことを補っていけるんだ、ってことなのね。
「すべての年代の人に響く映画だと思う」って言ってる人もいた。本当にそうだと思う。

「影響」が気がつくと画面に表れてる、ってのがとてもさりげなくおしゃれでよかったなー…。周りの男性たちの服装はまあ、わかりやすい変化だけど、あの秘書(?)の女の子とかね。ぼさぼさの頭で、シャツもシワシワだったりしたのに、最後の方はめっちゃかわいくオシャレしながらお仕事してたりして…しゃべり方もゆっくりになっててね…。かわいかった。よかったね…。
笑えるポイントも多いし、何よりテンポがいいのって向こう(外国の、ってことね)の映画の特徴なのかなー、とか見ながら思ってたんだけど、…ナンシー・メイヤーズ監督って聞いたことある名前だと思ったら、私の大好きな「ホリデイ」の監督さんやん!!どうりで…!(私、外国の方のお名前はなおさら覚えられないんです…)
ホリデイ [DVD]
クリエーター情報なし
ジェネオン・ユニバーサル

ホリデイもまた見たいなー。キャメロン超かわいくて大好き…。

って、予告編の動画あったよ!

アン・ハサウェイ本っ当かわいいな!!プラダを着た悪魔も見たくなってくる…。

好きな映画が増えて嬉しいです。見る度に元気をもらえそう…!
つーか今見たところだからめっちゃ元気!やる気にあふれてる!(単純や…)

「銀河鉄道の夜」を読んでみた……のだけど

2014-02-18 23:55:23 | 感想文
む……むずかしかった………。

毎週見ているBSの「鉄道・絶景の旅」が岩手県の釜石線で。
元々「銀河鉄道の夜」のモデルになった路線とかで、駅にそれぞれエスペラント語の愛称がついてるとか、やってて!
「そういえばちゃんと読んだことない…っけ?」と思って、図書館で探して借りてきてみました。

いっぱいあって迷ったけど、何か有名な話がいっぱい入ってるっぽいこちらを。
新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社


読む前から、ちょっと気持ち的に「構えてしまう」みたいなとこはあったんですよね…。
というのも。幼なじみの親友がですね、昔からとてもこの物語が好きみたいで。
こういうとこがいい!みたいに熱烈に言ってくることはなかったんですけど(それに比べて好きなものはとにかく語りたいうちェ…)(今はそんなことしません。え?ここでしてる?)、何かすごく、大事な物語っぽくて。…この子がそんなに好きならそりゃあ魅力的な物語なんだろうと思ってですね。あの、猫の、アニメの…映画がテレビでやる時に、録画して見てみたんですよね。
……わけが、わからなくて……。ほ、ほんとに。
わからなすぎて途中で寝ちゃうくらいだった。いやいや、さすがに、一度は通して見ようよ!と思ってもう一度は挑戦したんだけど、やっぱり理解できず、理解できないから物語にも引き込まれなくて…。途中で諦めて、…自分で、録画分を消去した。
これは、自分でもかなり情けなくて、なんか恥ずかしくて。
親友にも言えなかった。「見てみたんだけど、わかんなくって途中でやめちゃった~」とか、口が裂けても言いたくなかった。
…これは結構前の話。

それからまた1年以上経った頃、またアニマックスかどこかで放送してて。
その時はなんとか、最後までは見れた。どんな話かはわかった、けど…。どこに魅力があるのかはまだわからなくて。
わかるようになりたいとはずっと思ってた。
原作を読んだらわかるかもしれないって。
でもまたわからなかったらどうしようとも思ってた。

収録作品の中では、「銀河鉄道の夜」は長い方っぽかったので、教科書に載ってたからまだ親しみのある「オツベルと象」とかを先に読んで勢いをつけようと試みる。…というのも、最初の「双子の星」がいきなり難解で心を折られかけたからなんだけど。

難解っていうか、……そこに表現されてる情景が、映像として思い描けないんだよね。
「銀河鉄道の夜」は特に、そう思った。舞台が銀河だし?
単語は決して難しい言葉じゃないから、読むのは問題ない。普通に読めてる気がしてしまうんだけど、…はっと気がつくと、今、この段落で語られてる情景が、一つもイメージとして思い浮かべれてなくて、愕然とする。あまり聴きなれない、美しいものを例えた言葉が、ただただ頭の中を通り過ぎてっただけだ。
まだ、先にあの映画を見ていたから…、うっすらだけど、覚えてるシーンはあるから、それを手掛かりにできる箇所もあったけれど。
それすらなかったら、きっと最後まで読むことすらできなかったんじゃないかな。

私の想像力では、宮沢賢治の描く世界をなぞることすらできないんだ。
そんな予感はしてたんだけど、……なかなかの絶望感でした。


絶望しつつも、なんとか収録作品は全部読み切りました。「今度は信号機の恋バナ…だと…!?」とかめっちゃ頭を抱えつつも。
それで、これを書くためにも(あと、もしかしたら次は理解できるかもしれないって思って)、「銀河鉄道の夜」は何度も読み返してみたんです。
じゃあ、印象が違って見えた。
…情景の想像はやっぱり難しいんですけど、頭抱えるほど「難解」じゃないんだなって思いました。
旅の途中の様々な出来事の意味も、全体で考えると悩んじゃうけど…そこでの会話とか、そこで主人公のジョバンニが感じることとかは、難しくないんですよね。「わかる」って思えちゃうとこもある。
大事なことはそこにあるような、気がした。何度か読んでて、やっとそう思った。
想像力の貧困な私の、ただの言い訳かもしれないけど。

今、あの映画を見たら、また違う気がする。それでそのイメージが新しいうちに原作を読んだら、文字の表す景色も想像できるかもしれない…!
またレンタルするなりなんなりして、見てみようと思います。
「釜石線」…「銀河ドリームライン」も、絶対乗ってみたい!花巻駅前の壁画、見たい!
そしてどうせ行くなら、宮沢賢治のことをもっとちゃんと知ってから…!
知らなくて行っても楽しいけど、知ってる方が絶対楽しいだろうし!

そうそう、遠野もいつか行ってみたいと思ってたので、同じ路線にあるとかびっくりでした!(……)(あんましゃべらないほうがいいですよ…)
「遠野物語」も明らかにうちには難解すぎるので…、いきなり手を出す勇気はない…。
んで、やっぱり図書館でこういう本を借りてたり。
図説 地図とあらすじでわかる! 遠野物語 (青春新書インテリジェンス)
クリエーター情報なし
青春出版社

こういうのでまずはざっくり掴んでおいて、周りから攻めてくスタイル!

銀河鉄道の夜も、なにか興味深そうな絵本を見つけたので、借りてみようと思ってます。
うむうむ。構えて挑んで、正面からぶつかって玉砕してないで、周りから攻めてくのも悪くない。
今日は難しくても、明日はわかるかもしれないし! ♪あすな~ろ あすな~ろ 明日は~なろう~

「みにくいおひめさま」

2014-01-31 23:20:39 | 感想文
子供の頃に読んで、忘れられなかった本。
図書館で借りて、改めてこれは、手元に置いておきたい本だな、と思った。
みにくいおひめさま
クリエーター情報なし
瑞雲舎


絵本と言うには文字が多い。ほとんどのページに挿絵はあるけど。
その、しっかりめの「読み物」ってとこが好きだった。
大きくなってから誰に聞いても、この話の事を知らなかった。(ほぼ「『みにくいあひるのこ』じゃなくて?」って言われる)
その、有名すぎない「おはなし」ってとこが好きだった。
(有名すぎる「小公女」とかも大好きだったけど)

むかしある王国に、なに不自由なく暮らしていた王女がいました。
ただひとつのことをのぞけば世界一しあわせなおひめさまでした。

(表紙カバーの折り返し部分より)

王女エスメラルダがひとつだけ持っていなかったもの、それが「うつくしさ」でした。
「みにくいおひめさま」として国中に知られていた王女さま。
顔色や姿勢はすごくいいんです(教育は一流なので)。ただ、顔つきがどこかおかしい…。
鼻はつんと上を向いていて、口はへの字に曲がってて、目には輝きがない。
王様もこれには大変嘆いていて、名医を集めたりもしますが、どうしようもない。
一人の医者の提案で、「王女を美しく変えることができれば金貨一袋」というおふれを出すことにします。この国は大きいから、どこかにそんな魔法を知ってるものがいるかも、ということで。まさに藁をもすがる思いです。

失敗したら首をはねるとおふれに書いてあったためか、最初は誰も名乗り出てこなかったけれど、
そのうち一人の女性がお城を訪れます。魔女っぽくない、いかにも普通の女性が。
魔法の力の証明として彼女が見せたのは、5人の美しい娘の写真でした。
9か月の猶予があれば、王女を美しくできると。
そのためには王女に、自分の家で娘たちと一緒に暮らすのが条件だと、彼女は言います。
王様は最初はそんなことはできないと驚いて言いますが、最終的には彼女の「魔法」を試してみようという思いから、いやがる王女にその女性と一緒に行くように言うのでした。

王女はそこで、5人の娘と夫人と一緒に生活を始めます。夫人は王女を特別扱いせず、娘たちと同じように扱いました。
最初はお城に帰りたいと大泣きしたり、自分も家の仕事をしなければいけないということに怒っていた王女ですが、次第に、「自分は何もできない」ということを実感していきます。仕事はもちろんだけど、遊びだって5人の娘たちの方がずっとたくさん知ってたり。自分よりちいさい一番下の子が、上手に木登りしてたりね。

朝おきたとき、ベッドをきちんとととのえておかなかったら、夜はくしゃくしゃのシーツでねなければなりません。食事のテーブルにお皿をならべる手つだいをしなかったら、エスメラルダの席には、お皿がおいてもらえません。ぬいだ服をきちんと、かけておかなかったら、しわくちゃになっても、だれもアイロンをかけてくれません
ここ!ここの部分は、…この絵本を読むのはそれこそ数十年ぶりだというのに、ずっと忘れられない部分でした。シーツを伸ばす度に、思い出す部分でした。…まあ、私のはベッドじゃなく、布団なんですけどね。

娘たちは仕事をする時も実に楽しげで、その様子を見ながら王女はだんだん、いいつけられた仕事も嫌がらずやるようになっていきます。
ある時娘の一人がパンを上手に焼いて取り出すのを見ながら、うらやましそうに王女は言いました。
「フロリー、わたしもあなたみたいに器用だといいのに。」
その瞬間、不思議なことが起こります。王女が急いで鏡を覗きこむと…
みっともなく上を向いていた鼻が、下を向いていたのです!
王女は「魔法が効いた」と喜ぶのですが、夫人は静かに、王女が人に対して鼻高々ではなくなったからかもしれませんよ、と微笑んで言うのでした(決して、嫌味っぽくじゃなく)。

…そんな感じの出来事をいくつか経ながら、王女はうつくしく変化していく、そういうお話です。
子供の頃の私はこれを読んで、とても励まされる思いでした。その頃からお世辞にも「かわいいね!」って言われるような外見じゃなかった私ですので、本当の美しさとは、内面も大きく影響するのかもしれない…と、ぼんやりと思ったのでした。
それなら、自分でも目指せるかもしれないって。
じゃあせめてうちは「徳」のある人間になりたいと、子供心に真剣に願ったことも、よく覚えています。それで外見の分もポイントを少しでも稼げたらって…(何かこの書き方、嫌やな…)
まあ、大人になったら忘れてたんですけどね!!(…………)

一番好きなのは、王女がマフィンを作るシーン!
雨の日に、お城ではお盆にのって、あったかなマフィンが出てきたことをふと思い出した王女が自分で作ってみようって決めて、皆が休憩のお昼寝をしている中、一人で台所に向かうんですよね…!そして悪戦苦闘しながらも、マフィンを作ってオーブンへ入れるのです。
みんながおひるねからさめて、エスメラルダはどこかと、さがしにやってきたとき、とくいまんめんのエスメラルダは、ちょうどオーブンから、パリッときつね色に焼けたマフィンを、どっさりとりだしているところでした。
みんなが、どんなにおおさわぎをしたか、おわかりでしょう。エスメラルダのマフィンは、世界一じょうできとはいえなかったかもしれません。まんなかが、ちょっとなまやけだったし、よく見ると、はじっこがすこしひしゃげていましたが、エスメラルダは、このうえなくまんぞくしていました。

絵本や童話の中で、おいしそう!とか幸せそう!って思う食べ物のシーンはたくさんあると思いますが、私の中ではこのシーンはその、かなり上位にランクインします。
このシーンのおかげで、うちは「マフィン」ってちょっと特別やしね…!


鼻は上品に下を向き、唇の両端は微笑んで上がり、目はお星様のように輝いて。
美しくなった王女様に、迎えに来た王様も大喜び。国民も大喜びでお祭り騒ぎです。
でもエスメラルダは、その騒ぎの中心で一人、嬉しいながらも控えめにしていました。落ち着いた頃に、王宮の中の一つの家を作り替え、その家族が移り住めるようにしました。
そして王女はちょくちょくそこへ遊びに行って、クッキーを焼いたり、リンゴの木に登ったりしました。
自慢だったピカピカの自転車や、子馬や、ローラースケートを快く姉妹たちに貸してあげました。

9か月の「魔法」は、王女の心も大きく成長させたのです。
この物語も『いつまでもしあわせに暮らしましたとさ』みたいなフレーズでシメられるんですが、美しくなって隣の国の王子もメロメロで、国家も安泰!だけじゃなく、そういう…王女の内面の成長が最後まで描かれてるのがすごく好きな部分です。


王女様のマフィンはどんなのだったかな、と思いながら久々にマフィンを焼いてみた。

ふくらみはイメージ通りですね!
あともっと…黄色い感じで…ほら、パン屋さんに置いてあるみたいな、めちゃしっとりなマフィンにできたらなあ!
色々試してみようと思います。そんで、ぴったりなの見つけたら、「王女様のマフィン」って名前つけるんだ…。
それで「これってどういう意味ですか?」って聞かれたら、意気揚々と「みにくいおひめさま」の話をするんだ……(うぜえ)(私、「ハイジの白パン」も、どういう意味かわかんない人にはめっちゃ説明したいし、します!)。

そして、焼く度に思い出したい。
「作る喜び」を初めて知ったエスメラルダの、微笑みをたたえたくちびるを。

読んだ本の感想・2

2014-01-25 23:35:56 | 感想文
「読んだことのない方に薦めたい」という意思が全くない、ただのうちの読んだ記録です。
一番大事なラストの部分とか平気で書き出したりもしますので、ごちゅうい!(1のきいろいゾウのとこは、我ながらひでえと思った。やめないけど。)
あんまり…ってか物語的には全然重要じゃないとこも自分が気に入れば書き出しますが。
あと、本に関係ない自分の話もしますが。…そりゃこのブログではいつもか。

今回のテーマは「家族」ですね。
でも狙ったわけじゃないのが情けないところ。家族よりもむしろ、「食べ物」につられて選んでます。
あと井川遥。


幸福な食卓
幸福な食卓
クリエーター情報なし
講談社


「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」
朝の食卓で、主人公の父親がそう宣言して物語が始まる。

「家族の役割」っていうのは、私は昔からよく考えてしまう事柄の一つだ。
昔見たドラマで……母親と、自分が好きだった(フラれた)男の人が一緒になってしまう、っていうのがあって…序盤こそめっさドロドロなんだけど、ラストには主人公は母親を一人の、「生きてる女」だと認めて、(祝福まではしないまでも)黙って二人を見送るんだよね。
……うちは、それに、ものすっごく納得がいかなかった。
そりゃ、結婚したからって、子供が出来たからって、それ以降絶対恋愛するなっていうのは、状況によっては酷な事なのかもしれない。うちがいざそうなったら、「私だって一人の女なのよ」とか理解を求めるのかもしれない…。でも!!
でも…「娘として、そんな『母』を認められるか?」って考えると、それは絶対できない……うん、どうしても、できないって思う。(…あ、念のため、うちの母がそういうこと今にも言いそうな女だとか、そういうことは全然ありません。あったらこんなこと、のんきに想像とかしてられない気がするし)周りの人みんなが仕方ないと思う状況でも、きっと娘である私は最後まで認めないだろうな、とか…、そのドラマを見た後、よくそんなことを想像してました。
だって、娘だから。全くもって感情的過ぎる意見だけど、母親としてそういうことはしないでよって、それが役割でしょうって訴えることができるのは、他人じゃなくて、娘だけだろうって思うから。

この物語の主人公は、そんなこと全く言わない。「父さんを辞める」と決めた父親を、そのままに受け止める。
すでに出て行っている母親に対しても、その生き方を尊重している。
物語のスタート時は中学生なのに。
素直にすごい、と思った。想像とはいえ、最後まで糾弾し続けることを決めてる心の狭い私(↑)とは大違いだ。

「幸福な食卓」というタイトル。出だしがやや不穏とは言え、軽くて明るい感じの会話や、描写。
母親が出て行って不在、父親は役割を放棄、お兄さんも優しいけどだいぶ変わってる……、それでも、主人公はそれらを内心不満に思ったりもしないまま、過ごしている。
不安のかたまりのようなものがあるのはわかるけど、こちらには最初は見えてこない。
それが、少しずつ見えてくる。5年前の事件もそうだけど、お兄ちゃん…「直ちゃん」の変化のきっかけの話とか、ぞくっとした。
そこで主人公が気づく。ずっと一緒にいてもわからないこともあるんだって。
この家族は、一見崩壊してるようだけど…力を合わせて困難を乗り越えてきたし、これからもきっとそうだろう。
でも。
他人じゃないと救えないものが直ちゃんにはある。きっと、同じように私にも。

…最後に起こる事件には、本当にびっくりした。
今までとは比べ物にならない大きな悲しみと喪失感に苦しめられ、主人公はなかなか自分を取り戻せない。
久々に4人そろった食卓の場で、主人公は父親に対してずいぶんとひどいことを言ってしまう。でも誰も咎めない…。
「かわいそうに」
しばらくして直ちゃんが言った。
「そんなこと言うほど、佐和子は傷ついてるんだね」
直ちゃんの静かな言葉に、私は何も言えず、またしくしく泣いた。
私はどんどん嫌なやつになっている。こんなんじゃだめなのに、もっとちゃんとしたいのに、ちっともうまくいかない。


言葉で傷つけて、気分も落ち込ませて、…それでも、言われる。もっと甘えてもいいんじゃないって。家族じゃない、外の人から。
「家族は作るのは大変だけど、その分、めったになくならないからさ。あんたが努力しなくたって、そう簡単に切れたりしないじゃん。だから、安心して甘えたらいいと思う。だけど、大事だってことは知っておかないとやばいって思う」
ほんと、ヨシコはおいしいとこ持ってくよね…。感心してしまうわ。
「全然違うってわかってるんだよ。でも、他に方法がわからないんだ。あんたがどうしたらいかわかんないように、私はもっとどうしたらあんたが元気になってくれるのかわかんないから…」
それでも必死で、伝えようとしてる姿が、すごくいいと思った。

何をしても戻ってこない人がいる。どうしても元に戻せないものがある。
でも、続いているものだってあって。壊れてるように見えたって、断ち切れることはないものもあって。
だから、何が起こっても。
いつかはきっと、元気にもなれるんだろう。


聖家族のランチ
聖家族のランチ
クリエーター情報なし
角川書店


「役割」をちゃんとこなすことが、家族として重要な事ではない。
…という希望めいたものを「幸福な食卓」から感じ取った後だったので、序盤はいろいろと苦笑…というか、こういう家族もあるんだろうなというか、どっちかというとこっちのがリアルなのかなとか、色々考えながら読んでたんですけど。
いやあ、あまりの展開にビックリして、全部吹っ飛びましたね…。マジで。(「幸福な食卓」の感想まで見事に吹っ飛んだので、上のん書くためにほとんど一冊読み返したよ…)
そ、そりゃ、不穏な感じはあったさ!でも、そ、そこまで、するか……。

いや、知らなかったんですよね、どんな話か、全然!タイトルと、この、オシャレっぽい表紙に惹かれただけなんです!あと林真理子さんって、an・anのエッセイで「すごく面白い人」って印象が強かったから…ま、まさかこんな、……ううっ。
途中で「これは本当にヤバイ」って思って、本を閉じて真剣にここで読むのをやめるべきか悩んだ本は初めてかもしれない…。ラスト知らないまま終わったら余計に気になるかもしれないってのと、もう8割読んだし単純にモッタイナイって思ったので、最後まで読んだけど…う、うーん……。

家族に、理想を求めすぎるのはヤバイのかもなって、思いました。(心の狭い私↑を含めて)
家族であれ、普通は他人をどうにかできるものではないのだろうけど、ここのお母さんはそれができる力があった。…あったっていうか、そういうものを手に入れるための努力は惜しまない人だった。だから、「維持」するために、あそこまでしたんだろうって…。
…うん。想像しないように読むの、大変でしたねー…。

あ、中盤の、傷ついた娘さんとお父さんの会話は好きだな。
(お父さんのセリフ部分のみ抜粋)
「美果が生まれた時…、パパはこう決心したんだ。将来、この子を傷つけるような人間がいたら、絶対に許さないってね――。でも、それはちょっと違うと今は思うよ。
美果は誰かに傷つけられたかもしれないけれども、それ以上に喜びや嬉しさを与えられている。その喜びは、親が絶対に与えてやることの出来ない喜びなんだ。そういう年齢になったんだよ。
もちろん、犯罪のようなことがあったら、パパは絶対に許さないよ。だけど人間が、誰からも傷つけられずに生きていけるはずはないんだからね。」


…あれ?今、書き出しながら気づいたけど。
さっきのヨシコのセリフといい、私は小説の中に「傷ついた人へかけるべき言葉」を探してるんだろうか?
確かに、なんて言っていいかわかんない時って、ある。そんな時に気のきいたことが言えたらなあってことは、常に思う。
…いや…、むしろ自分が傷ついた時に自分自身に言い聞かせるためなのかな…。自給自足!ある意味前向き!(えー)


その日のまえに
その日のまえに
クリエーター情報なし
文藝春秋


これは、図書館の返却台に偶然置いてあって…いつかVERYで井川遥さんが最近読んだ本ってことで紹介してたなってことで、見つけて2秒で手に取りました。ミーハーです(……)。
今回はこれが一番好きかな…。いやもう、「聖家族のランチ」の後だったから、ちょっと読んだだけで「こういうの!こういうのが読みたかったああああ……」ってむせび泣きそうでした。聖家族がダメな本とかじゃないんだけどね…。うちは、手に取るべきじゃなかったよね…。

…ただこれも、「好き」とは…、ちょっとストレートには言いづらいとこは…あります。とても辛いとこも多いし。全体的に切ない感じはずうっと漂ってるし。
図書館の本には(当たり前ですが)帯はついていないので、「連作短編集」って知らないで読んでました。その…テーマは同じってことはもちろんわかってたんだけど、つながりもあって…。前に読んだ「陰日向に咲く」もそうだけど、一見関係ないと思ってた話がつながってる!ってわかった瞬間はぞくりとしますね。読書の醍醐味です。まあ、はっきり言及されるまで気づかなかったんですけどね…。ヒントはもっと前からあったんだろうな。街とか、海の様子とかの描写で。

5つめの短編の名前が、タイトルにもなっている「その日のまえに」。
その次が「その日」。「その日のあとで」。
「その日」が何を指す言葉なのか、そこまで重ねられたいくつもの物語を通してうっすらは感じられるけど…、はっきり書かれるのは6つめの話。
そこからはずっと考えてしまう。自分だったら、「その日」に向けて何をするだろう…って。

その想像は、…想像だけでも、かなり辛い。自分が当事者でも、残される方であっても。辛くてなかなか、具体的に想像ができない。
でも、「その日」は私にも必ずやってくるんだ。

「思い出めぐり」は、やるかもしれない。
いや、「やりたい」気がする。彼女の言葉で、そう思った。
「あのね、昔と同じものに再会したいわけじゃないんだな、って。逆に再会できない方がいいっていうか、もう会えないんだっていうことを確かめたいっていうか……みんな幸せにやってるよね、って言いたいんだよね、要するに。」

「その日」が間近じゃなくても、別れって普通にあるから…
例えば、私が前に住んでいた家は、もう跡形もない。あと高校。私が通ってる時にあった校舎はもう、ない。
そういうのって、見るとやっぱりさびしくなってしまう気がして、…「本当にもうどこにもないんだ」ってことを実感してしまいそうで、あんまり見たくないなって思うんだけど。
でもそれは違うのかもしれないって思った。そこにいた人もきっと元気でやってるよって(いやうちの家族は今全員ここにいるから知ってるんやけど)、新しくそこにいる人もきっと幸せに過ごしてるよって、そうも思えるんだなって。

私はずっと地元にいるせいか、「別れ」っていうのがよくわかってない気がする…(高校卒業しても仲の良い子はたくさん地元にいたし、休みの時はこっちに戻ってきたりして会えてたし。専門…専門は、元々バラバラのとこから来てたし…一番の仲良しは関西にいたし)。思いっきり直面して、苦しんだり悩んだりしたことがないから余計にそれがよくわかんなくて、大人になってからは「直面しないように」してきている、気もする。
だから、いざ、本当に身近な人が…死んでしまって永遠に会えなくなってしまう「その日」が来たら、…うちは、耐えられないんじゃないかと思う。
でももう大人なんだし、泣いて暮らしていけるわけもない。「耐えられんかも」とか言ってる場合じゃない。
今、気づけてよかった。気づけないままでいなくてよかった。

ただ…、考えて、それで、耐えられるんだろうか。受け入れられるんだろうか。
最後の、看護師さんとの会話にも、ヒントを探して読んでいて…ウッとなった。
「終末医療にかかわって、いつも思うんです。『その日』を見つめて最後の日々を過ごすひとは、じつは幸せなのかもしれない、って。自分の生きてきた意味や、死んでいく意味について、ちゃんと考えることができますよね。あとにのこされるひとのほうも、そうじゃないですか?」
「でも、どんなに考えても答えは出ないんですけどね」

仕事として、何人も看取ってきた看護師さんも、どんどんわからなくなっている、と言う。
「でも、考えることが答えなんだということだけは、最近わかってきましたから」

読んだ本の感想・1

2014-01-04 20:53:08 | 感想文
今年中にいくつ書けるかなー。
ネタバレありありです。
あと今回のテーマ?は、「映画化とかして本屋さんに積まれてた話題の本を思い出して借りてみた」。


食堂かたつむり
食堂かたつむり
クリエーター情報なし
ポプラ社

恋人が突然消えてしまい、声も出なくなった主人公が、故郷に戻って小さな食堂を始める。
そのお店の名前が、タイトルの「食堂かたつむり」。一日一組限定の、しかもここの料理を食べると恋や願いごとが叶うというステキなお店!
…めっちゃ、行きたいです。
料理の描写が多くて、どれもがすごくおいしそう。中でも一番「食べてみたい!」って思ったのは、シンプルな「だし茶漬け」。これ、主人公が、あんまり好きじゃない相手に作るものなんだけど…ここで思い出す、祖母(主人公に料理の楽しさを教えた人)の言葉がすごく、いい。
イライラしたり悲しい気持ちで作ったりしたお料理は、必ず味や盛り付けに現れますからね。食事を作る時は、必ずいいことを想像して、明るく穏やかな気持ちで台所に立つのですよ。
よし。これから心がけよう…!(単純)
…主人公の「おかん」がすごいキャラすぎて、読んでる私ですら「…この人とはわかりあえる気がしない」って思ってたんですが(うち、関係ないのにね。血が繋がってるわけでもないし)、後半の展開はびっくりしましたね…。
読み終わって最初にぼんやり思ったのは、外からはめちゃくちゃに見える人だって、信じてるものや大事にしてるものがあるんだな、ってことだった。わかりあうのは大変なことかもしれない、許し合うのだって間に合わないかもしれない、…でも、きっかけになるものはそこに、あるんだろうなって。

きいろいゾウ
きいろいゾウ
クリエーター情報なし
小学館

…何かAmazonのこの写真、暗くないですかね。もっと鮮やかにきいろいんだけどな。
タイトルと、この、まっきいろの表紙からはどんな話なのか全く想像がつかなかったんですが…田舎で暮らすめっちゃ仲良しの夫婦、「ツマ」と「ムコ」さんのお話です。
冒頭に入っている「きいろいゾウ」のお話らしきもの?との関連も最初は全く分からず、おそるおそる、という感じで読みだしたんですが…二人の関西弁での会話が、かわいくて!田舎暮らしの様子も、読んでてスッと映像が浮かんでくるようで…すぐ引き込まれました。あとおもしろかったのが、章ごとにまずツマの視点で出来事が語られ、その後にムコさんの日記が載ってるとこ。同じ日の事なので、同じ出来事が書いてあるんですが、「思ってたけど言わなかったこと」とか、「ツマの語りには出てこなかったこと」とかがあったり、なかったりするのがおもしろくて…。几帳面なのか、食事の内容を細かく書いてたりね。
軽やかに始まるんですが、後半、ズシッと重くなります…。ちょっと読むのが辛いくらいに。でもその重くなる「予告」が本文中にあるので、構えれるって意味では、まだマシだったかな…。
………そうそう、そうだ!思い出した!!私、これ読んでる時からずっと疑問な事があったんだ!
日記に、何か貼ってたのは、本当に「ツマ」なのか?って……。
「人の日記を勝手に読むような人であってほしくない」って、うちの勝手な願望なのかもしれないけど…。だから、あの庭にいた人?がやってるのかと思ってたんだけど…(それはそれで怖いけど…でもそんなん言い出したらこの物語…)。
結局最後までわからなかったことが、衝撃だった。明記されないってことは、つまり、常識で考えて、…ムコさんの思うとおり、ツマがやってたってことなのか、って、…ちょっと、ショックだった。
でも、今ここで書いて思ったけど、明記されてないってことは、そうじゃないかもしれないんだよね!……って、映画であっさりそのシーンとか映像になってたらどうしよう。ツマが宮崎あおいさんとか、イメージぴったりじゃん!って思って見たくなったけど、そういう意味では、見るの怖い…。

怖くて、辛くて、でも読んでてよかったと思えた、終盤のムコさんの言葉。
今僕を動かし、慰め、戒め、休ませ、そしてそこにい続けさせていること。それは、ツマを愛しているということだった。僕の世界はツマその人を中心に回っていて、そしてそれは揺るぐことがなかった。そうだ、揺るぎのない世界だった。それだけで心底安心して、眠り続けることができるほどの。それでもそれをとてもあやうい何かだと思い、消えてしまう可能性に怯え、恐ろしい想像に蓋をしていた。そうではなかった。ツマがそこにいないことに怯えるのではなく、ツマがそこにいること、人生のように、日常のように、そこにただいてくれるだけで、安心して眠りにつけるのだということ。堂々と、幸せだと笑っていられるということ。どうしてそんな簡単な、だけど途方もなく尊いことに、気づけなかったのか。

最後に、ムコさんは日記を捨てると言う。
ソラで言えるかわからないけれど、必要なものは、覚えているのだ。
それはきっといつも、そこにあるのだから。

…覚えていたいことがありすぎて、必死に書き残そうとしている自分を、思わず省みてしまった。
揺るがないものに気づければ(手に入れることができれば?)、私もいつか書くことをやめるんだろうか?
……いや、それは、ないな。

陰日向に咲く
陰日向に咲く
クリエーター情報なし
幻冬舎

劇団ひとりさんって、特にどうとも思わない人だったんだけど…(すみません)。
表紙もご自身の写真だから、よくある芸能人のエッセイとかそういうのだと思ってたし…。でも読み終わって思う、これ、すごくいい表紙だって!!
ちなみに今回の本、今、感想書いてる順に読みました。「食堂かたつむり」は割とサクッと読めて、「きいろいゾウ」はそれに比べると文字数もぐっと増えるし、内容も重たいしでちょっと時間もかかった。で、これ。パッと見でもう空間が多くて、すごいスピードで読めちゃう感じだった。だから、小説としても「軽い感じ」かな?って思ったんだよねえ…。小説家の人が書く話じゃないしね、って、ちょっと思ってた。…いやはや、これがなかなか、…おもしろかったです!見くびっててすみません!章ごとに主人公が違うんだけど、その、つながりがね…!結構ビックリするようなつながり方してたりして、思わず前の章読み返したくなるんだよね…!で、読み返すと、その「実は出てきてた人」だけじゃなく、その章の主人公も、少し違って見える。これが不思議だったし、実際人ってそうなのかもしれないって思った。普通にしてれば、「自分と相手」ってだけで他人の事を見るし、それで好きとか気に食わないとか別にどうでもいいとか思うけど…他人の目から見たその人は、また全然違う面を持ってるのかもなって。いや当たり前なんだけど。忘れがちっていうか…。それを、押しつけがましくなく、思い出させてくれる本でした。
登場する主人公達の中に、自分に近い!みたいな人はいないんだけど…でも、それぞれの心情とかはわかる気がして、読みやすかった。…ああ、でも、ギャンブルする人の語り口はちょっと怖かったかもしれないwうちは宝くじすら「当たる保障ないのに自分のお金出すの嫌」って理由だけで、それ以上は考えず、関わらず…ってしてるから、ギャンブルする人の気持ちって全然わからないんだけど、…その人がアツく語るせいで少しわかった気がしました。…よけいに怖くなりました、ええ。

デスノはすごい

2009-01-27 16:53:10 | 感想文
遊戯王文庫版13巻感想…書ける気がしません!!(えー)
ほんっま、…どっから書いていいやら…。
今までも書くのが大変だった巻はあったんですけど…(3巻とか6巻とか8巻とか)それでも何回も読んでたら手がかりはつかめるんですけどね…。どうしよう。
でも書かないと先が読めないので(←私が)、書きます…。

で、タイトルの話。
あまりに「行き詰まり感」を味わったので、久々に別のマンガを読んでみようと思いまして(最近、本当に遊戯王以外読んでませんでした)。
本棚から引っ張り出してきたデスノートを読み返してみたんですけど…
やっぱ、めっちゃおもしろい…!!
夢中で読み進めちゃいました!字が多いから大変なんだけど!
1~7巻・8~12巻と二日で読みきりました。
バランスおかしい?ソウデスヨネー。
でも読んだことのある人なら、どうしてこういう切り方したか一目瞭然ですよね!

ネタバレ…注意、なのか?
何年もたってるわ、映画にもなったわ地上波でも放送されたわ…だけど…
まあ一応。ネタバレですので未見の方はこの先はご注意下さい。



7巻はLが表紙です。
この巻でLが死にます。ライトとLの戦いに、決着がつくわけですね。
しかしデスノートをめぐる物語は終わらず、Lの後継者であるニアとメロが出てきて、ライトと戦うのです。そして、12巻にて、完結。
(どーでもいいけど…「戦う」が「闘う」って変換される!遊戯王の影響で…)
7巻までの第一部、Lが死んでからの第二部……
世間的な評価までは詳しく知らないんですけど…少なくとも私の周りでは…「第二部はあんまり…」という声が多い。
今じゃなくて、書店員だった頃も。デスノは人気あったし、それこそうちの本屋さんの人は高い割合で購入してた。でも。「前半は、おもしろいんだけど」という声が多い…。うちもそれをずっと聴いてたから、自分が買うときも「7巻まででいいかなあ…」という気持ちもあった。

でもさ、…おもしろいと思うんだけど…第二部も。つか、すげーおもしろいんだけど…。
第二部がなんでおもしろくないか、っていう理由を聞くと、たいてい「物事が進んでない」とか「作者もめんどくさくなったんじゃないかって感じがする」みたいな答えが返ってくるんだけど…まあ確かに、動きは少なくなってる…よねえ。Lもライトがやるようになってるしさ。
だからこそ、通信でのやりとり…あの、ニアが言葉巧みに、「キラは本部内にいる」って考えを浸透させようとするくだりとか、最高じゃないですか!!しかもライト通して!うっわ、これライトめっちゃむかつくやろうな、みたいな!

ていうかさ、…みんなLが大好きだったんですよね。わかります。
私もめっちゃ好きだし。Lの影響で角砂糖家に常備するようになったし(えー)。
ライトとLとの対決がなくなったから、第二部が物足りなく思うんですよね…。なによりそれが最大の理由ですよね…。
でも…ニアも、ニアもいいじゃないですか!かわいいよ!!
表情がめっちゃ変化するのがかわいい!これはLにはなかったポイントです!
「ふーん、見たんだ」のムカつく顔も、アメリカがキラに屈した報道を見たときの真剣な怒り顔も、相沢と話す時のスネたような顔も…かわえええええ!あと、なによりLを想って話すところの表情も大好きです。
「私やメロにとって、Lは憧れでもあり、尊敬に値する唯一の人間…。Lは、ワイミーズハウスの者全ての目標だった…。その尊敬し目標とするLがキラに殺されたのは明らか…。どんな手を使ってでも捕まえたい…当たり前の感情だと思いませんか…?」

そして私はメロも大好きです。手段がめちゃめちゃ過ぎるけど…それもすべてキラを捕まえるため。しかも、…ライバルである、ニアより早くと考えたため。どれだけがんばってもニアに勝てなかった…というあたりの回想がたまらない。…アレ?またライバル萌え?(ex.某社長)
最期がかわいそうすぎたけど…でもさ、物語のラスト、ニアがライトを追い詰めるところで、「メロのおかげです」って言ってくれたから…それでちょっと救われた…(メロじゃなくて…私が、だけど…)。あのシーンが最高に好きです。多分、デスノートで一番好きなシーン。
「互いが互いの目標とする者を超せなくても…二人ならLに並べる。二人ならLを超せる。そして、今……私達は、Lが証拠を挙げられなかったキラに、Lが敗れたキラに…確たる証拠を突きつけている!…言い逃れられるのなら言い逃れてみてください。」
私達、ですよ……!私達!!
よかったね、メロ…いやメロ的にはよくないかも知れないけど…でもメロの行動がなかったら確実にニア側が負けていた、っていうのを考えると…うん、ありがとうメロ!

ライトは……まあ、妥当な最期でした、よね。
デスノはどういう風に完結するのか…みたいなことは連載中ずっと話題になってたと思うけど、…ああするしかないよな。うん。
妥当、はおかしいか…。もっとひどい罰を受けてしかるべきだった。
でも…あの、最期の「ちくしょう…」って言葉と、表情を見てたら…かわいそうな気もするけど…。でも、ニアの言うとおり…神なんかじゃなくて…人間で……人間なら、人を殺したら、殺人犯だから……

ライトも実は、めっちゃ好きです(嫌いなキャラいないな…デスノ…)。
今回読み返してみて、特に前半は「ライトもかわいいじゃん!」って思ったり。テニスのあたりとか、かわいいよ!リュークのやりとりとかもね。


うーん、デスノはやっぱりすごい。おもしろい!
絶対売らないわこれ。
…さて、息抜きにもなったし…再びデスノは本棚に押し込んで、遊戯王13巻読むか…。

「アフターダーク」感想文

2008-09-08 23:13:46 | 感想文
先日、図書館でこれを見つけたときも、
ずっと前…これが新刊として出たときも(当時書店員でした)、
中身をぱらぱらって読むことはしなかった。
読むなら、ちゃんと読もうと決めてた。読み始めたら最後までいくだろうってことがうすうすわかっていたから。「海辺のカフカ」上下巻を一晩で一気に読んでしまったという前例もあることだし。

そういうわけで…
案の定、一気に読み終わった私は、ふと思い出したことがあった。
ペン立てにしている缶を探ってみる…あった。
私は、こういうのは異常に物持ちがいい。特に紙媒体。

これは、発売当事に書店に配られた販促グッズの「しおり」。
確か5種類くらいあって、それぞれがこういう感じだった。どれも暗めの濃い色で、絵があって、小さな字でセリフが一言添えられている。私が一番好きなのが、これだった。
トロンボーンの絵。
「音楽を演奏するのは、空を飛ぶことの次に楽しい」の言葉。

他には「逃げられない。どこまで行っても逃げられない。」とか「これからしばらくの間眠る」とかだったと思う。どんな話なのか全然予想がつかなかった。あ、あと「ゆっくり歩け、たくさん水を飲め。」もあったな…。これはPOPに書いてあったのかもしれない。そういやあれももらったはず…どこいった?(絶対、この部屋のどこかにある。)

しおりをなにげなく裏返してみた。
「書き下ろし最新作 作家デビュー25年記念 9月7日発売」
…なんという偶然。図書館で借りてから、数日放置して…さあ読もう!と決意して、読みきったその日は、この本が出た日だったんだ。4年前の。
なんとなく、うれしい。


(以下、めっちゃネタバレあります。)


半分まで読んでも、「これがどんな話なのかわからない」というのは、ちょっとした恐怖だった。前情報をできるかぎりシャットアウトしてきたのは自分だけど…それにしたって。すでに半分読んでいるのに、誰の物語かすらわからない…。どうなっていくのか全然わからない…。

だから、4分の3ほど読んでやっとマリが高橋に向かって「エリは今、眠っているのよ。」と口に出してくれた時にはほっとした。やっとつながったって。2つの違う場所がやっとつながった。しかもエリのいる場所は、読んでて不安になるくらい不思議な場所だったから、「夢の世界なのかも」と思えることは…一種の救いだった。…エリにとってじゃなく、視点としての…私にとって。…文中の、エリを見つめる「視点」は、それはまた私のものとは違っていたから。


上のセリフから、とりあえず主人公はマリでいいんだろう…とより安心して読み進めることになった。高橋が大きな鍵を持ってそうだったけど、どうやらそうではなさそうだし。これで…安心できる。

安心…安心ってなんだろ?

小説を読むときにはイメージを頭の中に描きながら読む。…それは、ある程度展開の予測ができないと、とても困難な作業になる。…展開の予測、と言っても、結論が見たいわけじゃなくて…ただ、自然に、1分後の行動が想像できるだけでいい。会話が始まった…マリはあんまり積極的に会話を広げようとはしないだろうけど、このまましばらくはこののんびりした会話が続くのだろう、とか。そういう。1分刻みで舞台がガラガラ変わったり、しゃべる人がガンガン変わったりすると、もうイメージは描けない。イメージが描けなくなると、読むスピードがガクンと落ちる…。そうなると大抵、「読むのがしんどい」と思って、読むのをやめてしまう。
だから、(一応の)主人公は誰なのか…その人はどうしたいのか…がわからないと不安になるし、わかると安心して、読むスピードが加速していく。
「海辺のカフカ」の時は、二人の視点が章ごとに切り替わって進んでいく物語だった。視点が切り替わるたびにそれまでの加速度がゼロになってしまうのだけど、後半はその加速→急停止→再び加速という自分の脳の動きがちょっと快感になってきて、こういう読書の楽しみもあるんだなあ…と思ったものだ。それを少し思い出した。


マリと高橋の会話のシーンが好きだ。深夜のファミレスで出会って、話をする二人。初めは警戒している風のマリが、だんだんと心を開いていくのがかわいらしい(って書くと恋愛小説みたいだ…全然ちゃうけど)。こういう会話をしてみたいなと思う。小粋だなあと。


夜の街を舞台に、話と時間が進んでいく。
私自身は…夜の街なんて今のところ恐怖しか感じない。そこで過ごす人の気持ちなんて全然わかんないや~…と思う。舞台となるファミレスも、ラブホも、バーも、公園も、コンビニも…夜中であるということに魅力は感じない。
だけど、そこで生きてる人というのは確かにいるのだなあ、と思った。普段目をそらしている方面のことだし、今後もなるべく関わりたくはないと思うけど…私は。
マリも、夜の街に慣れているわけではないようだ。…彼女が一晩に出会った人たちと、そこでなされた会話のすべてを思い出すと…ちょっとだけ、いいなあとは思うけど。

…打ち明け話って、話せるほうがいいよね。聞かされるより。いや、聞かされるのもある意味いいことだけど。
この一晩の間になされた、いくつかの打ち明け話。
その中でも、私の心に一番残ったのはマリと「コオロギさん」とのもの。
後半のコオロギさんのセリフは、思わず手帳にメモってしまった(えー)。

「そやからね、マリちゃんもちゃんとええ人を見つけたら、そのときは今よりもっと自分に自信が持てるようになると思うよ。中途半端なことはしたらあかん。世の中にはね、一人でしかできんこともあるし、二人でしかできんこともあるんよ。それをうまいこと組み合わせていくのが大事なんや。」



…私の、小説の読み方はやっぱりおかしいんだろう。
いつも、自分にも当てはまる言葉を、それだけを探してる。励まされる言葉を、支える言葉を。
登場人物たちの心の動きも、自分もこうできたら…とくらいにしか思わない。

だけど、こんな出会いをしてみたいと思った。
一晩のうちに。打ち明け話ができる人と出会いたい。
ううん、そうじゃなくても…知ってる人とでも…こうやって意味のある会話をしたい。粋で、かつ、前に進めるような。





…変な感想文!
いっつもへたくそだとは思うけど、今回ほどわけわかんないのもないな!さすがのうちですら投稿ボタンを押すのがためらわれるぜよ!(←誰)
でも、読んで感じたのは確かに、こういうことなんですよね…困ったなあ。

「番線」 感想文

2008-07-10 21:04:04 | 感想文

「暴れん坊本屋さん」で、書店員さんのハートをゲットしまくった久世番子さんの、本への想いにあふれたエッセイコミック!

…もっと早く買えばよかった!

めっちゃおもしろいー!!さすが番子さんー!!

 

いきなり最初の、「貸し本借り本」で「あるあるある~!」と思った!

 

「人に本を貸す時に…本を入れる袋、気にしますか?」

 

気にする~!!そうそう!あんまうすいのじゃなあ…とか!持ってても恥ずかしくないのにしてあげよう、とか!だから本屋さんの袋って(大抵は透けないから)すごくこういう時使えるので、捨てられないんだよね~!!…でも最近は一気買いしすぎなので、紙袋しかもらえなくってピンチです!(笑)

 

本棚の話もおもしろかった。「あなた」の替え歌が…(笑)。

やっぱり「壁全面の本棚」というのは本好き共通の夢なんでしょうか!

ていうか、「ティッシュの箱にコミック収納」が載っててびっくりした!そして自信にもなった!もう堂々とやるぜこれ!あと横積み作戦も…やってるわあ……。

 

教科書図書館、めっちゃ行ってみたい!!国語の教科書、めちゃ好きでした!授業で使わないとこも、めっちゃ読んでました!

でも、この番子さんも言ってる「一つの花」もそうだけど…ちょっと怖い気もする…。わけわからず読んでたけど、実はものすっごい悲しい話だったりするからなあ…。「よだかの星」を、大人になってから読んだ衝撃はすごかった…。

 

あと国会図書館もめっちゃ楽しそうで……ああもう、こんなふうに書いてたら、いつまでたっても終わらない!

やっぱり番子さん、おもしろくて大好きです!…またこういう、エッセイコミック出して欲しいな~…。

私が、唯一サイン会に参加したのがこの番子さんのでして…めっちゃ普通に、きれいなお姉さんでした。本屋さんにいそうな!そして横にはおなじみの担当さんと、かーやまさんもいらっしゃって、…あのイラストかなり特徴つかんでるなあ!と感心してしまったものです!だから、担当さんとかーやまさんが出てくるたびに、あの時のことを思い出してほのぼのしてしまいます。いい人達だった…。(「コミック担当なので、ポップめっちゃ書いて暴本売りました!」とか言ったらお礼を言われた…)