ウィトラのつぶやき

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巨象が立ち上がり龍は地上に落ちる

2014-06-08 14:46:49 | 社会

最近、インド株が上がって中国株が下がっている。実際の株価もそのような動きになっているが、「株が上がる」という言葉を「期待が高まる」という意味で言ってもインドへの期待が高まっている。インドでは4月から5月にかけて総選挙があり、BJPというヒンズー教の政党が地滑り的大勝を収めた。そして、その党首であるナレンドラ・モディ氏が首相になった。選挙はBJPへの支持というよりモディ人気という色彩が強い。

モディ氏はヒンズー教徒の中ではあまり身分の高くない商人(紅茶の屋台売り)の子供であるが、ヒンズー至上主義を唱えるBJPの中で戦闘的立場を取って頭角を現してきた。モディ氏がインドの首相として大きく期待され始めたのはグジャラート州の知事として高い経済発展を実現したからである。今回の総選挙でBJPは単独過半数を実現し、非常に強い権限を握ることになった。インドでは伝統的にこのような強い首相は存在せず、野党や国民の目を気にしながら政治を行ってきただけに、モディ氏は日本の安倍総理のように停滞気味であったインド経済を成長軌道に乗せてくれるのではないかと世界中が期待している。

インド人は能力が高く、貧しいので大きな成長が期待できる。10年ほど前にはソフトウェアアウトソーシングなどで大きな期待があったが、最近はその動きは停滞している。これは政府の閉鎖的な政策が大きく影響しているといわれている。これまでずっとインドの与党であった国民会議派は日本で言うと社会党的性格が強く、BJPは自民党と公明党を合わせたような性格である点も期待が高まる理由になっている。しかし、BJPは日本の民主党のようにずっと野党で来たために、果たしてどの程度国政のかじ取りをできるかには疑問がある。モディ氏は日本で言うと維新の会の橋下代表のように地方で実績を上げている。維新の会は地方選挙で勝ったが大阪がどの程度良くなったかについては疑問がある。その点モディ氏はグジャラート州を成長軌道に乗せたという実績があり、橋下氏よりはるかに現実的な期待ができる。しかし、政党自体は政権担当能力があるのか疑問で、首相個人の能力に期待がかかっている点が危なっかしい。

また、BJPはヒンズー教徒の政党である点でイスラム教徒との関係がどうなるかを危ぶむ声も強い。実際、モディ氏が知事の時代にグジャラート州でヒンズー教徒によるイスラム教徒の虐殺事件があった。それでも、インドの人口と、潜在能力の高さを考えると大きな期待がかかるのは当然だろう。その一方でこの30年間高成長を継続してきた中国は経済成長が低下してきている。これも一時的な現象ではなく構造的問題の感じが強い。今年は龍が力を失い巨象が立ち上がるきっかけの年になるかもしれない。



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