ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

いつの日か、電話は無くなるのか?

2011-05-11 07:44:29 | 経済

マイクロソフトがスカイプを850億ドルで買収すると発表した。注目に値するのは現金で買収した点である。日本企業は他の会社を買収するときに現金で買収することが多いが、アメリカの企業は株式交換が多い。しかし、最近の株価不安点な状況で、株をもらうよりも現金をもらうほうがスカイプとしては安心できるだろう。昨日の「ウィトラの眼」にはFacebookがスカイプを狙っているという情報を書いたが、Facebookではとてもこれだけの現金を捻出できないだろう。マイクロソフトの並々ならぬ意欲を感じる。

この報道を聞いて私は「いつの日か、電話は無くなるのか?」と感じたのだがこの間にはかなり大きな飛躍がある。それを順次説明して行こう。まずスカイプをインターネット電話と呼ぶ人がいるが私はスカイプは「インターネット音声サービス」であって電話だとは思っていない。私が電話という時には、一度つながればある一定のサービスが電話を切るまで提供される、110番などの緊急サービスが利用できるライフラインとしての音声通信サービスをイメージしている。

私が会社人生の大部分の期間関わってきた携帯電話は、この電話サービスを全ての地域で全ての人に移動無線技術で提供することが目標だった。そしてそのために膨大な技術開発が行われた。21世紀に入ってデータサービスの重みが増してきたが、電話としての機能なり性能を軽視した端末は売れるはずが無いと思っていたし、実際売れなかった。

流れが変わったのは私が定年退職してAppleiPhoneが売れ始めてからである。アメリカでも、日本でも、iPhoneは端末は良いがネットワークは良くないと言われている。このネットワークが良くないという不満は中身を聞いてみると電話をかけようとした時にうまくつながらなかったり、途中で切れたりする点にある。私はこれはネットワークだけではなくiPhoneの作りも原因ではないかと思っている。それでiPhoneユーザはかなりの人が別の携帯電話を持っている。

それでもiPhoneは売れた。爆発的な売れ方である。そしてiPhoneライクなサービスを提供するAndroidをGoogleが開発し、これも爆発的に売れている。これはユーザの指向が電話市場主義から確実に移行しており「電話機能はそこそこで良い」という人が増えていることを意味している。そこへ今回のスカイプ買収の話である。Microsoft、Google、Facebookと言った時代の寵児がこぞってスカイプを狙っていて最終的にはMicrosoftの手に落ちた。これからMicrosoftがどういうサービスを打ち出してくるかは分からないが、スカイプのサービスは次第に電話サービスを置き換える方向に行くのではないかと感じている。

長い目で見ると、ネットアクセスがライフラインになって、音声はそのためのメディアの一つという位置づけになっていく気がする。これが「いつの日か、電話は無くなるのか?」という感想の実態である。

技術的に言うと電話を提供するのはデータサービスよりもはるかに難しい。電話サービスは昔からあるサービスで変わっていないのに対して、データサービスは「何十Mbps」といった数値がどんどん大きくなっていくのでデータサービスのほうが難しいかのような印象を持つがデータサービスのほうが実ははるかに提供する側にとっては楽なサービスである。しかし、私のように電話のための技術開発で育った世代はなかなか頭の切り替えができない。最近ソフトバンクの業績が良いが、それは経営層に電話に対するこだわりが少ないというのが一因ではないかと思っている。

ドコモやKDDIの経営層の中にも頭の切り替えをできる人もいるだろうが圧倒的な少数派だろう。ここをどううまく切り替えていくかが今後の彼らの業績につながっていくように思う。私としては大胆な経営層の若返りが良いと思っているのだが・・・

 


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1 コメント

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電話の技術 (世田谷の一隅)
2011-05-12 11:56:12
ウィトラさんが言うように電話を「信頼性のある接続技術」として維持するのは大変難しいのは実感しているけど、それをさらに発展させるための技術開発はあったとしても、その開発費を段々評価されなくなってきた事が主因と思います。つまり、技術としては進歩しているけど、それに見合う対価が得られないので、限界に近づいてきたのでしょう。

携帯電話のビジネスにかかわっていた時に、大きさ、重さ、電池寿命、価格が主要な競争項目だったことがあります。ところが或るレベルを超えると、競争の様相が異なってきます。例えば大きさは、或る一定以上小さくしても却って使いにくくなる。電池寿命は待ち時間をいくら長くしても、それだけ「余分に数量が販売できたり、高い価格で売れる」わけではなくなってしまいます。つまり、市場が期待する技術が飽和点に近づくことになるわけです。これを超えてると、技術的には意味があるとしても市場価値はありません。

NTTが主導してきた「いつでも、どこでも、だれとでも」つながる技術が、飽和点に差しかかかってきたのも、同様の背景でしょう。それを乗り越えるのは、異業種からの参入、ブレークスルー技術の開発などの要因が挙げられます。経営陣の若返りも一案でしょう。段々衰退する既存の陣営を、誰が危機感を感じて、誰がそれを変えようとしているかです。

最近少し見直されてきましたがNTTでは真藤さんの登場がその大きな契機になりそうだったのは確かですね。
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