真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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廬溝橋事件と二個師団増派の措置問題

2008年12月11日 | 国際・政治
 田母神論文に『日中戦争の開始直前の1937 年7 月7 日の廬溝橋事件についても、これまで日本の中国侵略の証みたいに言われてきた。しかし今では、東京裁判の最中に中国共産党の劉少奇が西側の記者との記者会見で「廬溝橋の仕掛け人は中国共産党で、現地指揮官はこの俺だった」と証言していたことがわかっている「大東亜解放戦争(岩間弘、岩間書店)」』とある。しかし、このようなほとんど知られていない書籍から、その結論部分だけを持ち出して、広く受け入れられ、歴史的常識となっている事実をひっくり返そうとする論法は極めて危険であり、彼の立場を考えると悪質であると思う。(書名でから予想できるが、岩間弘という人物は、いわゆる「大東亜戦争肯定論者」であるという)
 田母神論文に関しては様々な指摘があるが、地道な調査や事実の検証、科学的分析などを抜きにして、「廬溝橋の仕掛け人は中国共産党」などといいふらす人物を空幕長としていた組織や関係者の浅学非才も疑われていると思う。「陰謀・暗殺・軍刀<一外交官の回想>」森島守人(岩波新書)からの一部抜粋である。
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十二 運命の7月7日 廬溝橋事件

 廬溝橋事件は出先の陰謀か

 廬溝橋事件は、わが華北駐屯軍が北京の近郊、廬溝橋の附近で演習中、一兵士が行方不明になったのに発端する純然たる局地的事件であった。後に判明したところによると、右の兵士は生理的要求のため隊伍を離れていたに過ぎなかったが、部隊ではただちに宛平縣城内に入って捜査方を要求し、縣長がこれを拒否したため、ついに中日両国間の発砲事件となったもので、私が北京に到着したころは北京の特務機関長松井太久郎大佐や、大使館附武官補佐官今井武夫少佐、第29軍の顧問として中国側に働いていた櫻井徳太郎大佐の如きは、昼夜を分かたず現地解決のため涙ぐましい努力をつづけていた。また部隊の方面では、河辺正三旅団長も牟田口廉也連隊長も純粋な武人型の人で、けっして平地に波瀾を起こす型の人ではなかった。また天津に本拠を持っていた華北駐屯軍の田代司令官も橋本群参謀長も、華北の経済開発にきわめて熱心であったが、武力の行使には賛成せず、その平和的実現方について外務省ともかねがね話合を重ねていた。廬溝橋での武力衝突後、北京から連隊旗を現地に送った際には、もともと陸軍の遣り方からすれば、連隊旗を先頭に堂々と進軍すべきところであった。しかし連隊旗に対する発砲などからかえって事を荒だてることを危惧して、箱に納めたまま携帯したような実情で、この点のみから見ても、現地部隊の事態不拡大の気持ちを察知し得るであろう。現地部隊の遣り口には事情を十分に調査しないで、宛平縣城内の捜査を要求するなど、軽率な行為のあったことは否定し得ないが、けっして事を起こす口実をつくるために仕くんだ芝居ではなかった。世間でとかくの観測はあるが、私は廬溝橋事件の発端は柳條溝と全然事情を異にしているを確信して疑わない。

 この意味で廬溝橋事件は、性質上現地限りで解決し得る純然たる局地的問題だったにかかわらず、日本政府が中央において軍の一部のものの策謀に乗ぜられて、過早に2個師団増派の不賢明かつ不必要な措置をとった結果、事態を拡大、中日両国の全面的抗争から、太平洋戦争にまで追い込めたものであった。

 満州事変は出先の関東軍が、ちゅうおうの不拡大方針を裏切って、遮二無二、既成事実を作りあげて、中央を引きずったものであったが、華北事変はこれと正反対に、中央政府が現地の不拡大と局地解決の努力を否認して、政略的出兵に出て、かえって事態を拡大したもので、奇妙な対照を形成している。


 日本政府の政略的出兵

 関東軍は満州国の育成、強化のため、華北においてもわが方の実勢力下に立つ政権の樹立を策し、好機をとらえて強圧的態度に出んと、虎視眈々としていたことは前述した通りだ。
 この関東軍が廬溝橋事件の起きた翌7月8日、ただちに、
 「暴戻な第29軍の挑戦に基因して今や華北に事端を生じたわが関東軍は多大の関心と重大な決意を保持しつつ、厳に本事件の成行を注視する」
との声明を、独断で公表したことは注目に値する事実であった。日本政府は9日不拡大方針を堅持し、早急に現地で問題の解決を計るべきことを決定したのだから、爾後の施策でも、冷静慎重、事件の本質や真相を究明し、不拡大方針に適応した措置を講ずべきであったにもかかわらず、事実はこれに逆行していた。

 政府は11日、事件を「華北事変」と称するむねを発表して、自らこれを拡大したのみならず、同日から近衛首相自ら陣頭に立って政界、財界、言論界を総動員して輿論を煽り、最後に現地の意見を徴することもなく、独自の情勢判断から華北出兵を決定して内地から2個師団動員の内命を出したのだった。
・・・(以下略) 

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