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長野畑のこと



先日ジャムと焼き菓子を納品させて頂いた掛川の自家焙煎珈琲豆店「ひとまめ焙煎店」さんからお電話を頂き、40分近く長話してしまった。目的は7月第2週に納品させて頂く焼き菓子の種類と数量についてのご相談なのだけど、自家栽培果実のジャムから畑のことに話が派生し「何で長野に畑を借りてるの?」という質問に。話せば長くなるけどと思いつつ話していたら長電話。
静岡県磐田市の自宅庭と自転車で10分以内に行ける場所に大小の土地を6か所借りて畑をしてるのだけど、なぜ静岡から300km離れた長野でも畑をやっているのか?別荘やセカンドハウスがあるわけでもないのに片道7時間かけて車通勤して車中泊生活してるとなれば疑問に思われてもおかしくない。
そもそもは20年ほど昔の若かりし頃、今長野畑を借りてる集落にかつてあった焼き菓子工房に私は居候させてもらい、お菓子作りを学ばせて頂いていた。その焼き菓子屋さんは数年前に急逝されて今は存在しないのだけど、その焼き菓子工房の土地の地主さんとはその後も淡くお付き合いさせて頂いていた。その地主さんが、今借りてる長野畑の土地の地主さんなのである。
畑をやりたいと思っても、野菜はいいけど果樹や木を植えるのはNGというところはけっこうあって、長野畑の地主さんはそれをOKして下さった。近くに湧水があり、空気もきれいな山奥の過疎集落の山の斜面。通行する車もめったになく、フクロウの声が鳴り響く静謐な地域は私にとってパワースポットのように心地いい場所なのだけど、熊も猪もサルも出没し放題、11月~4月は雪に覆われる標高の高い寒冷地。歴史的に土砂崩れのリスクもあるし、セカンドハウスがあるわけでもないし、なんせ静岡から遠いし、100%オールオーケーな場所ではないんだけど、2007年に長野畑を始めて早や13年。
元々地主さんが羊を放牧していた土地だけど羊飼いを辞められてから数年経ていたので、借りた当初は自分の背丈よりも高い雑草がはびこり、ジャングルの中を両手で草をかき分けるようにしながらまず草刈りを始めた。最初の5年くらいは草刈りと苗植え以外やること無かったけど、だんだん苗が育ち少しずつ果実が収穫できるようになり、それにともなって長野畑へ通う頻度も増えた。
静岡の自宅が南海トラフ地震と津波で被災したら、もしくは台風でうちの目の前の川が氾濫浸水したら、長野畑の近くに移住するか~と話していたこともあったけど、今や静岡の自宅近隣の畑の果樹も見放せない。この年齢になると10年なんてほんとあっと言う間で、あと10年経ったらどうなるか。未来を想像しても仕方ないし畑を継いでくれる子孫がいるわけでもないし仮に子孫がいたとしても必ず継いでくれるわけでもないし継いでもあまりに手間がかかり生計を立てることが出来ない稼業だし。そういう未来への不安を含めた暗澹たる思いがもやつくと
「考えなくていいのよ、感じればいいのよ」
という、住み込みでお菓子作りを習った長野の焼き菓子工房主さんのお言葉思い出す。あの方が今も生きてれば長野畑の様子を褒めてくれるだろうか。

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