Wilhelm-Wilhelm Mk2

B級SFからクラシック音楽まで何でもあり

Koninklijk Concertgebouworkest

2008-11-11 | Weblog
 サントリーで聴いてきました。チケットは妻のお気遣いです。とにかく・・!これまで聴いた国内での演奏会では、文句なくトップクラスの感銘を受けました。曲目は
前半:ドボ8
後半:イタリア、ラ・ヴァルス
というオーケストラの能力を多方面から堪能できる絢爛豪華なラインナップ。指揮者は音楽監督のヤンソンス。ヤンソンス自体は以前にもピッツバーグ響の来日公演でみたことはあるのだけど、還暦を超えて巨匠の風格がグッと出てきました。(20年くらい前にレニングラードと来日したときのビデオを持っていたりする。)
 コンセルトヘボウも以前に一度、留学時にアメリカで聴いたことがあるのだけど、あのときもその独特の厚みのある滑らかな弦楽器と輝きのある管楽器に驚かされたものです。今回は席が人民席であったことから、楽団のメンバーをよく観察できました。1stヴァイオリンに数名日本人女性がおり、全体的にも女性比率が高い。平均年齢は低めで、若々しい感じを受けました。前半のドボ8。冒頭のチェロからのけぞりました。まずその音量!サントリーの人民席でこんな音が聴けるなんて!ふくよかで暖かみのある、まるで高級毛布のような音色(コンセルトヘボウの弦楽器の音色はベルベットのようだとよく言われる)。ヤンソンスの繰り出すテンポは、ドボルザークらしい快速さで、歌うところは徹底的に歌い、リズムになるとオケが一体となって徹底的に刻みまくる。バスの首席の燃えっぷり(仏弓・マシン付き)が激しかった。ダウンダウンダウンダウンダウンとかやってたし。そして金管の滑らかなこと!これは欧州のトップクラスのオケを聴くといつも感じることなのだけど、金管楽器がまるで弦楽器にみたいに聞こえる。どんなに音量がでても雑音がなく音程のみしか聞こえない(これは金管に限ったことではないが)。日本のオケでは絶対に味わえない音量と音色です。フルートの1番は女性が吹いたのだが、4楽章の大ソロは吹きながらどんどん盛り上がって、一体どこまで行くのかしらと思わせるような天井なしの素晴らしさでした。ドボ8、全楽章通して本当によい曲です。全ての楽器に出番が廻ってきて、オケの力量が丸出しになる試金石のような曲だと改めて感じました。来年弾く予定があるのだが・・・これは頑張らないと。
 前半だけでも十分に満腹だったのに、後半もさらに飛ばしました。イタリアは少々編成を減らして、リズム立てながら、ハーモニーも絶妙に溶け合わせるという名人芸。そのリズムの際だたせ方も、ラトルのように「やっちまいました」的なものではなく、音楽の自然な要求に沿っていて、違和感を感じさせないところが素晴らしい。そしてメインのラ・ヴァルス。この完熟を通り越して頽廃的な難曲を、これまでの2曲とは全く違う変幻自在、万華鏡のような音色に酔いしれました(ラヴェルって凄い作曲家だ)。特に、ヴィオラの空でも地でもない独特の響きに痺れました。指揮者とオケがまさに一体となり、最後は一体どこまで音量がでるのかと思わせるような大噴火のあとの急降下。ブラボー叫ぼうかと本気で思わせるような名演でした。しかし、この演奏でフライングブラボーが出なかったのは幸運。お客さんの質がよかったのでしょう。メイン終了後も殆どの人が席を立つことなく盛大な拍手の中、アンコールを2曲(スラブ舞曲とシュトラウス)披露して、大盛況のうちにお開きとなりました。(終演後はヤンソンスのサイン会もあったらしい)
 いや素晴らしかった。やはり聞くならトップクラスを聞くべきだとつくづく思いました。実は値段的には5桁してないんだよね。費用対効果を考えたら、国内オケや中途半端な海外オケはもう聴く気がしません。そしてオーケストラ芸術の素晴らしさというものを改めて噛みしめました。
 コンセルトヘボウというのは、いい位置に収まってるオケだと思う。実力的はトップでありながらも、世界的に名前の売れたソリストを抱えているわけでもなく、ウィーンフィルやベルリンフィルがいる限りは単独1位としては扱われないという万年2位の位置づけのなか、長期政権の音楽監督とともに独特の音色を磨き続けている。演奏に安定と余裕を感じさせるのもそういうところからくるのかもしれない。次は是非現地で聴きたいものです。