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証言・フルトヴェングラーかカラヤンか

2008-11-27 | Weblog
気になっていた一冊。殆ど同じ邦題名の本があるが(原題は全く違う)、そちらはカラヤンと仲の悪かった首席ティンパニ奏者テーリヒェン氏(今年逝去)がフルトヴェングラー>>カラヤンを一方的にぶちまけてるだけであったのに対し、今回はそのティーリヘン氏も含め、フルヴェンとカラヤンの両方を知る複数の元ベルリンフィル団員を綿密にインタビューしており、情報量の多さから二人の偉大な指揮者の実像が浮き彫りになっている。インタビューを受けた側は現在相当な高齢に達しており、二人の指揮者に対する想いも答える側の培ってきた人生観が大きく反映されているのだが、全員に一致する意見も多々あり、その当たりがこの偉大な指揮者2人の真実の姿(すくなくとも周囲の人にとっての)なんだろうと想う。印象に残った内容を羅列すると、
フルトヴェングラーの音楽に対する姿勢は純粋かつ圧倒的だったということ、名演として有名なシューマン4番の録音の際、機器の不備で演奏を途中で止められたフルヴェンが怒り狂ったということ、噂通りフルヴェンには相当の私生児がいたらしいということ、死去する2年前からのフルヴェンの難聴は伝えられているよりも酷く、最後は補聴器も試みたということ(最後の演奏会)、カラヤンの響きに対するこだわりは徹底していたこと、団員の誰1人としてカラヤンビデオを褒めないこと(笑)。カラヤンの膨大な録音は奏者にとっても高収入のバイトであり、聴き直しなどしないこと。カラヤンはあくまでオーストリア人であってベルリンに家を持つこともなかったということ。誰もアバドを良く言わないこと。両者とも最晩年に病気をした後はより一層気むずかしくなり(フルヴェンが難聴、カラヤンは脊髄)、オケ側はつきあうのが非常に困難だったということ。テーリヒェン氏のカラヤンへの想いは愛憎入りまじって非常に複雑だと感じたということ。

 インタビュー受けた奏者の中には、首席チェロのフィンケ氏や首席バスのZ氏、クラのライスター氏など往年のベルリンフィルの中核メンバーが含まれており、彼らの半生や現在の生活状態を細かく知ることができるのも嬉しいところである。過去のベルリンフィルのファンは是非ご一読を。