Wilhelm-Wilhelm Mk2

B級SFからクラシック音楽まで何でもあり

名曲喫茶

2007-09-21 | Weblog
 10年ぶりくらいに行った。潰れたとかいう噂を聞いたこともあったように思えたが、どこか別の店の話だったのかもしれない。昔は昼間にしか訪れたことがなく、曇りガラスを透して注ぎいる青い光線に照らされた耽美な大正ロマン風喫茶と記憶していた。しかし、今回は夜に赴いたためか、随分とゴシックな印象を受けた。吹き抜けの壁に神殿のようにそびえる巨大スピーカー。その下のオーディオセットとレコードキャビネットが納められている場所は、暖炉であろうか?橙色の淡いランプ照明に照らし出された店内は、まるで中世の古城のようだった。2階へは登ったことがないが、階段への通路も一工夫がある。これら全て、創業者(故人)の設計によるものであるらしい。素晴らしいセンスだ・・・私はこういった大正ー昭和初期の建造物にめっぽう弱く、生まれるのが遅すぎたと本気で嘆くことがある。基本的に店内での会話は禁止であるのだが、お客さんは、皆常連の愛好家ばかりという感じで、黙って座り、もくもくと聴いている。そのちょっと緊張した空気が良い。そう、あそこは喫茶店ではなく、演奏会場なのだ。
 昨晩の定時コンサートは遠山慶子女史のノクターン集だった。コルトーに学び、今でも欧州で活躍する女史の若き頃の陰翳に満ちた演奏が、時間が停まったままの喫茶店の空間に沁みた。その後、客からのリクエストでクナッパーツブッシュ指揮のワルキューレがかかる。冒頭の低音群の蠢きに圧倒される・・吹き抜けの構造をとおして店内全体に響くせいか、本当の演奏会に来ているような臨場感であった。(残念ながら冒頭しか聴く時間がなかったが)
 自分もこういう店を持ちたいものだと感じた。(昔はペンションのオーナーになりたいと思ったこともある)。そのときはワインバーにでもするか・・・