無意識日記
宇多田光 word:i_
 



勿論、EXODUSからの3曲はハイライトである。それなら全く同じのがUU06DVDで観れるじゃないか…と言われそうだが、さにあらず。あれは純粋なLIVEテイクではなく、後から加工してある音源なのだ―って根拠もなく断言したら訴えられちゃうかな? いやそりゃイヤだけども。

ITF10のテイクなら、撮影された時の調子次第だが、後加工なしで収録できる筈である。2010年時点での光の歌唱は、オリジナル以上に艶やかだった。よくまぁあんなキツい3曲を崩れずに歌いきったもんだとその時は感服したものである。スタジオバージョンからは変更されている箇所もあるが、概ね満足のいく変更であると保証しよう私が。要らんかそんなギャランティ。

ただ、演奏陣はわからない。私の観た最初の公演は探り探りでかなり慎重な演奏だった。皆あのパート―ヱキソドス3部作だから"Exodus Trilogy"と名付けよう―の難易度が高い事がわかっていたのだろう。メンバーの中で最も仕上がりが早かったのが光だったんだな。

思えば、UU06のツアーを通じていちばん大きく変化したのがこのEXODUS TRILOGYだ。私は7月上旬の静岡公演をまず観たのだが、歌も好不調が激しかったけれどもそれより演奏がボロボロで救いようがなく、こんなんで2ヶ月乗り切れるか心配だったのだが2ヶ月経った9月上旬の最終代々木公園公演(いやややこしい)では見違えるように鮮やかな演奏を聴かせてくれていてびっくらこいた。特にこのEXODUS TRILOGYの飛躍っぷりは凄まじく、間違い無く今まで観た光のLIVEの中で(総合力でいえば)頂点のパフォーマンスだったのだ。あれをDVDにして欲しかったなー。

ITF10のテイクがどれだけの出来なのかはわからない。しかし、バンドメンバーの半分はその時の代々木で実際に舞台上でパフォーマンスをしていたのだ。感覚を取り戻せていれば、UU06より遥かに良いものを聴かしてくれるだろう。光の歌は言わずもがなだ。ただ、ギタリストに関しては流石に今剛は(国際基準でみても)桁が違うので、そこまでのものは期待していない。一応そこだけハードル下げとくね。

残念ながらWILD LIFEでは、UU06とは違いUtaDAの曲は演奏されなかった。UTADA THE BEST騒動を思い返せば、とてもその音源をLIVEで演奏する状況になかった、というべきか。当初の構想には入っていたが騒動によって外された、なんて可能性すら考えられる。流石にそれは妄想が逞しすぎるが、やはりUtaDAの2枚のアルバムは珠玉。今後のUtada HikaruのLIVEでも歌って欲しいものである。ITF10での素晴らしいパフォーマンスは、必ずやそういう私と同じように感じる向きを増やしてくれると信じている。そういう声が大きくなれば、Hikaruだって無視できなくなるだろうから。いや小さい声だって決して無視しない人だけども。その時の予習の為にも、HikaruファンはこのITF10作品を必ずやゲットしなければならないだろう。はよ予約したいわぁ。

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In The Flesh 2010で忘れてはならないのが観客の反応だろう。当初は彼ら―いや心境的には"俺ら"だけども―に何を期待していいかわからなかったが、普通に宇多田ヒカルのファンだった。日本語曲への反応のよさは嬉しい驚きだったのだ。

日本ではFirst Loveのピアノ・イントロが流れてくると悲鳴が聞こえてくるのが通例になっているが、寧ろあれよりもコアな感じかもしれない。人数が限定されているというのもあるのだろう、好きな人が集まったんだなぁという感じ。その上反応が日本人に比べダイレクトで遠慮がない為熱気のテンションがストレートだ。これもまた、ライブハウスという環境がそうさせているのかもしれない。

あと、よく歌う。日本語曲ですら歌ってしまうのだから凄い。彼らからすりゃハナモゲラ語なんじゃないのかねぇ。となると英語曲となるともう遠慮がない。最大のハイライトはCome Back To Meで、それはもう大合唱と呼べるレベルだった。やはり、Utadaの代表曲といえばまずこの曲なのだ。

しかし懸念がひとつある。ライブハウス収録という事で、どこまで観客の反応を捉えられているか未知数だという事だ。円形ステージでもないしカメラが舞台上からてな事はなかったろうから基本的に後ろ姿のみだろうが、それ以上に、音声をどれ位拾えているか。MCでは観客と会話する場面もあったはずだからそこは外せないポイントだと思うのだがはてさて。

いずれにせよ、シューティングされているのはそういった観客陣の反応に光が慣れてきた頃の公演の、筈だ。最初は何を期待したものか戸惑いもあったかもわからないが、今回映像として残るのは自信満々順風満帆の光の姿だろう。一応真冬で、一部を除き外は酷寒の中でのツアーだったと思うがライブハウスの中はホット極まりない。日本とは異なる、日本人も含めた多種多様な人物たちによる素直な、Utadaと宇多田ヒカルの楽曲に対する反応。英語曲はどうもなぁ、と思っている人たちは、彼らが日本語曲に対してどういう反応をしているのか一度見てみて欲しい。言葉の違いを乗り越えて、というか最初っから壁なんてなかったというノリでどの曲も楽しんでいる。踏み込んでいえば、この雑多な観衆こそがUtada Hikaruのリスナーなのである。そう思って眺めてみると、WILD LIFEとはまた違った意味での「集大成」がここにも存在していた事が、よくわかると思われる。

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