トシの読書日記

読書備忘録

神の如き無智にひれ伏す

2009-07-15 18:24:03 | た行の作家
太宰治「人間失格」読了


今年は太宰治生誕百年なんだそうで、あちこちの書店でフェアをやっており、ちょっと久々に読み返してみるかと、まんまと書店の陰謀にはまって本書と「斜陽」を買って来ました。


太宰治というと、イメージとしてはずっと昔の作家みたいに感じていたんですが、今、生きていれば100歳ということで、少なからず同じ時代を生きた可能性もあったわけで、それを考えると不思議な気持ちになります。


本書は、中学生の頃に読んだような記憶があったんですが、どちらにしろ、もう内容はすっかり忘れていて、まぁ初読といっていいと思います。


読後、解説を読んで思ったんですが、太宰を何冊か読むなら、本書は最後にすべきだったんですね。順番としては「晩年」→「女生徒」→「富岳百景」→「走れメロス」→「駆込み訴え」→「新ハムレット」→「右大臣実朝」→「津軽」→「お伽草紙」→「トカトントン」→「ヴィヨンの妻」→「斜陽」→「人間失格」→「グッドバイ」とこんな感じになると思います。また、これだけ読めば充分「太宰通」を気取ってもよいのでは、とも思います(笑)


で、「人間失格」の感想ですが、とにかくすごい本です。読み終わってから「うーーーーーん」と30秒くらい唸ってました(笑)でも、すごいんですが、素晴らしいかと問われると、またまた「うーーん」と唸らざるを得ません。もしかしたらとんでもない駄作か?とも思ったりもします。

主人公が社会の既成の倫理や価値観と全く相容れないところから、それらに対して反逆し、自分の見る真実に従って生きようとするわけですが、それは自分が野放図に生きたいための体のいい方便ではないのかという思いがどうしても拭いきれないんですね。要するに、世間に対して逆らうという大義名分を振りかざして、女と遊び、酒を浴び、果ては麻薬(モルヒネ)を常用するという、全く真摯な気持ちが見えてこないんです。

逆にこの主人公、葉蔵に問いたい。人間や社会に絶望して酒やクスリに走るより、もっと建設的な道があるんじゃないかと。


こんな青臭い正論、鼻で笑われるかもしれませんが(笑)でも、自分はこの男に到底賛同する気にはなれません。


次、「斜陽」いってみます。

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