トシの読書日記

読書備忘録

小説という虚構

2009-07-31 16:40:37 | た行の作家
筒井康隆「虚人たち」読了


今さら言うまでもないことですが、筒井康隆は天才であります。本作品を読んでいただければそれが充分に納得できると確信しております。

小説を創作する上での暗黙の約束事を全て取っ払うとこんな感じになりますという小説です。おもしろいとかつまらないとか言う前に、その果敢な精神が素晴らしいと自分は評価したいですね。どんな小説かというと、例えばこんな親子の会話。


「それだと何をしてもいけなくはないし言い換えれば何をしてもいいということになりませんか」
「なります。しかしならないのです。何をしてもいいことが即ち何をしてもいいことにならない。それは君にもわかるんじゃないかな」
「お父さん。なぜここであなたがチキンを。いや。食事をしなければならないのか説明することはできるのですね」
「できるよ」彼はチキンを頬張ったまま軽くそう言ってから息子がでは説明しないでくれと言うより早く説明をした。「腹が減ったからだ」



もう全編こんな文章が延々と続いていきます。小説の主人公が考えていること、目に入るもの、それらを最大漏らさず全て拾い上げて書き進めており、また主人公の思考では過去のことも思い出したりするので、時間軸も相当ゆがめられてもう何が何やらです(笑)


筒井康隆、さいこー!




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