スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

朝日オープン&第一部定理三二まとめ④

2007-05-14 22:12:23 | 将棋
 今回で最後となる朝日オープン選手権五番勝負第四局
 挑戦者の阿久津主税五段の先手で角換り相腰掛銀模様に進みましたが29手目に先手が▲5八飛と変化。僕はこういう将棋は初めて見ましたし,類例の少ない戦いなのではないかと思います。40手目,△6五桂から後手の羽生善治選手権者が仕掛け,横歩を取って飛車を切り,56手目に△4七角と打ったのが,3時前に僕が最初にアクセスしたときの局面。この仕掛けの仮定で,49手目の▲6七金に対して単に△同飛成とせずに,△7五角▲3九角の交換を入れてから飛車を切ったのは細かいところですが巧みな手順だと思いました。ここは攻守がはっきりとしていて,攻めきれば後手の勝ち,攻めが続かなければ先手の勝ちということは分かりましたが,攻めが続くかどうかは分かりませんでした。
 次に見たのは4時頃で,65手目,▲3三歩の局面。このときは単に受けていては負けなので,先手が反撃を含みにしたものと思っていました。
 終局後に,これを放置して△6八金としていたのでびっくりしたのですが,△3三同桂だとむしろ先手が有望だったようなので,▲3三歩はなかなかの好手だったのでしょう。ここから一気に先手が反撃に転じました。79手目からの▲5一飛成△同銀以降は後手の玉が詰めば先手の勝ち,詰まなければ後手の勝ちという局面ですが,この玉は詰まず,羽生選手権者の勝ちとなりました。▲5一飛成のところ,▲4三角と打ち込んでも△同金で後手が残していたとのことですので,▲3三歩は好手であったとはいえ,一手違いに持ち込むのが精一杯であったようです。したがって,△6五桂と仕掛けたのが機敏であったということでしょう。
 これで羽生選手権者の3勝1敗となり防衛,四連覇となりました。阿久津五段も実力ある若手には違いないのですが,まだ羽生選手権者を番勝負で負かすというところまでの力は現時点ではなかったということだと思います。今後の奮起に期待です。

 最後に,人間が能動的である場合にはどうなるのかということをみておくと,第四部定理三五によりこの場合はすべての人間の認識が一致するということになります。すなわち,すべての人間の喜びと悲しみの認識が一致するということになり,第三部諸感情の定義二および三と,第三部定理七により,喜びを追求し,悲しみを忌避するという人間の現実的本性が完全に一致するということになります。したがって,この場合は,ある人間が他人に悲しみをもたらすと仮定すれば,この両者は同じ現実的本性を有するわけですから,そのことによってまさに他人だけではなくその人間自身も悲しみを感じる,すなわちその人間の本性の実在性がより小さい状態へ移行するということになります。しかしこれは第三部定理四に明確に反しますので不条理です。つまりこのようなことは生じ得ません。したがって人間が能動的である場合には,一切の悲しみ,そして悲しみの認識こそ悪そのものなのですから,一切の悪は生じ得ないということになります。よって,責任を負わなければならないのは,ある人間が他人に対して悪をなした場合なのですから,少なくとも,人間が責任を負わなければならないようなこと自体が発生しないということになります。つまり,人間が能動的である場合については,責任という概念が発生する余地はない,あるいは,人間について責任という概念は考える必要がないということになると思います。
 個人的に,終り方がやや尻切れとんぼであったかもしれないという気がしてきました。明日,責任論についての僕の結論を明示することにします。
コメント (2)
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