▲一昨日、搬入の準備をしている際にこの絵が出てきました。
ユングの部屋を描いていた30代に描いた絵です。
当時、読んでいたプルーストの「花咲く乙女たちのかげに」のイメージをインドのゴアに置き換えた作品です
乙女たちは楽しげに描かれているようですが、いかにも海と空の色が暗い。
あの時代は色々悩ましいことが多かったのか、空も海も何度も塗り重ねているうちに色が濁ってしまったようです。
昔、お世話になった画廊の人が「作品は展覧会に出すたびに成仏させなきゃダメよ」と言われ、一度描いた作品に手を入れない方針をしてきたのですが、どうも昨年くらいから考えが変わってきました。
南無三!(最近使いませんが)
30年前(正しくは28年前)に描いて、一度も手を入れたことのなかった絵に思い切って、筆を当てた瞬間……
なんと30年前の自分が話しかけてくるではありませんか!
なんて言うとおおげさですが、言葉ではあらわせない感触がビビビと全身を貫いたのでありました。
あしびきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む 柿本人麻呂
まだ会社員だった綱島時代。
園芸ハイツのアパートで、会社に行く前と帰ったあと、ひとり寂しくキャンバスに向かって描いていた頃が走馬灯のように……。
なんてことはありませんが(笑)、30代になったばかり頃の感触がよみがえってきたのですね。
不思議なもので30代半ば、メキシコ旅行に行ったあと……フリーランスになる直前に少しだけ手を入れたこの絵には、その感触はまったく感じられませんでした。
▼いや〜絵って不思議です。