一昨日はお世話になっている東京日語学院の卒業式、中国やベトナム、ロシアなどから日本語留学に来たおよそ80名を送り出す会に出席しました。
昨年10月頃に荒木理事長の肖像画を頼まれていたのですが、気乗りがせずに、そのままペンディング。気乗りしないから描かないというほど、売れてる絵描きでないくせに生意気な話ですが、締切日が明確でない仕事は、どうも先延ばしになるわるいクセが私にあるようです。
それというのも、本人を目の前にして描く線画の似顔絵と違って、油彩で本格的に描く肖像画というのは、描けば描くほど画面が平坦になり、似なくなっていく傾向があるからです。
荒木理事長のお顔は何枚かスケッチはしたものの、似せて描いたハズですが(笑)、あまりどれもご本人は満足されなかったようでした。
そこで何度か、お会いする度に横顔から正面、本人が意識しない瞬間などを何10枚も撮影し、それを元に描き起こしていったのですが、どうもピンと来なかったので、数ヶ月放置するありさまに。
肖像画を描く場合、最近の傾向で多いのが写真を撮影して、それをトレースして描いていく方法があります。
これは技術のある人がやると、ある程度確実に似ます。
でも、荒木理事長のように頭のハチが大きく奥行きのある人を描く場合、それだと平面的にペッタリしてしまうし、何より肖像画で一番大切な人柄みたいなものは表現できません。
そこで卒業式の案内が来た段階で、その場で披露することを思いつき、作業を開始。
理事長にお電話し、そのことを伝えると独特の茨城なまりをまじえて
「 自分の肖像画を卒業式に披露するのは恥ずかしいよ。それより、最近遊びに来ないじゃない。また遊びに来なさいよ」とのお言葉。
何とか卒業式に合わせて、絵をお渡しする約束をとりつけたあと、仕上げにかかると、あーら不思議!
荒木理事長の声を頭の中で反芻させながら、口の周り、目元など描き進めていくと、絵がススムじゃありませんか♡
人の声は顔や頭、体に反響して出ますから、不思議とそうなるのですね。
理事長の声が聞こえるように、頭に浮かべながら描き進め、なるべくご本人がいるよう描いていき、ようやく納得いくカタチに仕上げていったのです。
さて、お気に召して頂けるかどうかドキドキ……。
最初は「照れくさい」とおっしゃっていた理事長ですが、絵を一目見るなりお気に召したようで、懇親会のお客さまに見せて歩いてくれました。
顧客の喜びは、まさに絵描き冥利に尽きます。
たまたまでしたが、ネクタイの柄とスーツの色、バッジの位置も示し合わせたように一緒だったのも、お祝いの席に合わせたようでした。