三井記念美術館で開催中の「北大路魯山人の美」、見に行きました。
魯山人に対する私の見る目は、”美味しんぼで有名になった、過大評価された人”という、言うとヒンシュクを買いそうなものですが、実際に一堂に会したものを見るのは初めてなので、本当はどうなのかを確認しに行った感じです。
さて、実際に展覧会を見た限りで言うと、いやどうして、なかなか面白い。
ただ端的に言うと、この人が手ずから作った焼き物や絵画というのは、いかんせん作りが甘い。黒澤明の”七人の侍”のセリフで言うと「 腕は中の下」というところでしょうか。
“七人の侍”では「しかしながら、苦しい時には重宝な男でござるよ」と続きますが、魯山人の作品にはそんなプラスαがありました。
魯山人の陶器は料理と組み合わせてはじめて完成する作品ですから、造形作家としていささか腕前に疑問はあるものの、プロデューサーとしては極めて優秀な人だったのではないかと思います。
プロデュースやデザインは、絵など変に上手くない方が良いというところがありますが、北大路魯山人はその最先端というところでしょうか。
作品の中には青磁や備前など、専門家でも作るのが難しいものがありましたが、それらは魯山人が専門の作家に作らせたもので、特に備前の作家とは深い親交があったようです。
料理を作ることと、美術作品を作ることはきわめてよく似ています。
特に陶芸は、土を捏ねることすなわち、小麦粉や蕎麦粉を捏ねるに似てますし、盛りつけはすなわち、絵付けをすることに共通します。
料理人の中には絵心のある方も少なくありませんし、また美術作家に調理を好む人も少なくありません。
魯山人はもともと、自分の店に出す皿を自分で作ることから陶芸をはじめたそうです。アート作品をめざして作っていたわけではなく、後世がそれを評価したということになりましょうか。
魯山人は後世に過大評価されたという私の考えは、展覧会を見ても変わりませんでしたが、自分が料理人だったら、この皿に何を盛るのか考えると、そら楽しいだろうなあ・・・なんて、思ってしまいました。