浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

そうか、、

2010-07-29 21:46:08 | 
最近、本の話ばっかりだけどなんでかと言うとパソコン買い換えてDVDドライブついてないのにしたのね。

だもんだから、出張で出てるとDVDが見られない。なんで本ばっかり読むことになる。

家にいるときはDVDも見てるんだけどね~。

つーことで今日も本の話。


金魚は一匹で金魚鉢で飼うよりも、金魚鉢にオスメスのつがいを入れて飼った方が長生きする。

更に言うと、そのつがいのオスを殺してもメスは生き続ける。

でもつがいのうち、メスを殺すとオスは弱って死んでしまう。

そんな実験結果があったと思う。

(こういう話、僕はそもそも事実関係を間違えて記憶してたりするし、たまに事実よりおもしろいように喋る傾向があるのであんまり信用しないでほしいけど)

この実験結果が僕の記憶違いかどうかは定かではないけど、これって「そりゃそうだろうなぁ」と納得できるものじゃないですか?

個人的な意見だけど、オスって遺伝子的にはぜったいに不完全で、すごく弱い生き物だと思う。もちろん人間のオスもね。

その弱い人間のオスが、弱いからこそ論理や力で武装をしてきた、というのが人類史だと僕は思ってます。

この本を読んでそういうことを思い出した。

そうか、もう君はいないのかそうか、もう君はいないのか

城山三郎、という作家がいてその作家はかなり硬派な経済小説を書く人。

その人が奥さんに先立たれた後、その思い出を綴った手記。

奥さんとの出会い、奥さんとの生活、そして別れまでが書かれている。

多くの男に取って愛した人に先立たれる、と言うのは常に心の底にある「恐怖」の一つだと思う。もちろんそれは女性に取っても「旦那さんに先立たれる」ということで変わりはないんだろうけど、男の僕の気持ちとしては「いや、奥さんに先立たれた男性のほうがつらいんじゃないかな」と思ってしまう。(偏見だったらすいませんね)

タイトルがいいよね。

「そうか、もう君はいないのか」

作者は奥さんが亡くなった後、何度もこの言葉を口ずさんだんだろう。

桜を見れば「ああ、桜がきれいだね、、、そうか、、、」、冬になって雪が降れば「今日は雪だね、、、そうか、、、」、なにかおいしい物を食べたら「これ美味しいなぁ、、、そうか、、、」と。

もちろん僕は結婚したことがないから奥さんに先立たれたことはないけど、それでもすごく好きだった人と別れた後にそういう気持ちになったことはある。僕の気持ちなんて奥さんを亡くした人に取ってみれば取るに足りないものだけどさ。

その人と一緒に行った場所にふとたどり着いて「ああ、もうあの人はいないんだな」と思ったり。


本の中で作者の奥さんと言うのは非常にチャーミングに描かれてる。

でも僕は思うんだけどその奥さんが殊更チャーミングだったわけじゃないと思うんだよね。

どんな女性もある一面においては非常にチャーミングじゃないですか。そして奥さんを失った後に、作者に残っている思い出は、奥さんのチャーミングな部分だけだったんじゃないか、と思う。

作者は昭和一桁生まれの人で、海軍にもいたからいわゆる「日本男児」でマッチョと言えばマッチョなんだろうけど、それでも心の中には奥さんのチャーミングな面だけを記憶している、というロマンティックさがあるんだね。

そういう面においては男性ってすべてロマンチストなんじゃないかと思うね。