浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

酒のあるところには何かがある。

2008-04-27 04:29:10 | 日記
給料日の金曜日、ということになれば飲みにいくしかない。

なんか最近きっちり休んでないので土曜日はゆっくり休もうと思って金曜の夜は飲みに行く。

会社が一緒だった頃には毎晩のように飲みに行ってた友達と飲みに行く約束をし、ついでなので最近ご無沙汰の後輩をもう一人誘って浅草の裏路地あたりでジョッキをぶつけ合う。男3人が23時から飲み始めるとまぁそんなに生産的な話にもならず、女の子の話とか仕事の話とかをだらだらと。
店じまい5分前くらいに彼ら2人(彼らは初対面)が同じ群馬の高校出身ということがわかり2人は異常に盛り上がる。

明日朝から仕事がある、という後輩を送り2人になったので飲みなおすか、とバーへ。カウンターに座ったらひとつ椅子を空けた隣で女性が一人で飲んでた。

僕は友達と群馬話とか茨城話しているとどうにもその女性が反応しているみたい。
はい、当然のごとく話しかける。

バーで一人で呑んでいる女性、というのはいいよね。別に変な下心なく普通に知り合いになりたい。

するとその女性は友達の高校の近所の女子高出身のようでさらに盛り上がる。

場所変えますか、ということで浅草雷門通りで24時間営業のすし屋に入る。

3人でバカ話していたら外が明るくなってた。

うん、こういう感じでたまにストレス解消しないとね。ストレスたまるほど仕事してんのか、と言われそうだけど。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僕らはみんな生きている

2008-04-20 23:59:24 | 日記
土曜日に水戸あたりで仕事を終えました。

茨城出身っていうと水戸のイメージが強いみたいだけど、僕の地元あたりから水戸に行くってことはほとんど無い。18歳で実家を出るまで、水戸とかそのあたりに行った覚えは家族で買い物に一回と、センター試験受けに行ったくらい。

水戸から実家、というのも結構遠いし。

うちの実家からだと水戸へ車で30分かけて駅に行き、そこから1時間10分。一方東京は車で10分かけてバスセンターに行き、そこからバスで1時間半。そういう状況なんで何かあると東京のほうが楽。

今回は鹿島臨海鉄道という鉄道で帰ってみました。まぁつまりはJRは通っていない、ということです。途中、「長者が浜潮騒はまなす公園前」という異常に駅名が長い駅がある。

日曜日には妹の娘をお借りする。レンタル料として妹に福岡土産の明太子。

4歳。かわいいなぁ。

天気がよければ公園にでも連れてくつもりだったんだけど、強風に小雨だったので屋内。どこ行きたい?と聞いたら「ベイシア(近所のショッピングセンター)とツツタヤ!」だって。はいはい。

車に乗せてほっとくと幼稚園で習いだした歌を歌いだす。

なんか知らないけど「手のひらに太陽を」を歌いだした。

----
僕らはみんな生きている
生きているから楽しいんだ

僕らはみんな生きている
生きているから悲しいんだ

手の平を太陽に すかしてみれば
真っ赤に流れる 僕の血潮

ミミズだって オケラだってアメンボだって
みんなみんな生きているんだ友達なんだ
----

なんかね、他の曲は「あーほほえましいなー」と思って聞いてたけど、この曲だけはなんだか涙が出てきた。もし車を運転してなかったら膝からがっくり崩れ落ちて慟哭してたかもしれない、ってくらい。

まず姪っ子の歌い方が可愛い。血潮、といえずに「ちーしーごー」となる。フリがちゃんとついててミミズの時は手を合わせてぐねぐねし、オケラは手をクロスしハサミを作り、アメンボは平泳ぎみたいな感じ。友達なんだ、で手を組む。いいフリだね。かわいい。

歌詞の内容にもぐっと来ちゃったな(疲れてんのかな)。楽しいのも悲しいのも生きているからなんだ、僕らはみんな生きているんだなー、友達だよなー、と当たり前のことを当たり前に思った。

4年前には赤ちゃんで、5年前にはこの世に存在すらしてなかった姪っ子がこんな歌を歌ってる、というのと車窓の外の実家の風景が基本的にはほとんど変わってなくって、、、とかそういうのが諸々まとめてなんと言うか心にぐさっと刺さった。

んなことは同乗している姪っ子にはまったく関係なく、ショッピングセンターについたら「風船やりたい!」とのこと。風船ってなんじゃらほい?と思っていたら2階のゲームコーナーの一角に子供が遊ぶスペースがある。小さいビニールドームみたいのがあってその中で風船と遊べる。20分200円で遊べる。はいはい。
 
風船やりたいと言ったくせにドームの中にあるボールをなぜかぷーさんハウスに集めだす。ま、いいんだけど。

それが終わったら今度はディズニーのダンスゲームがあるらしくそれもやる。100円入れるとカードがもらえる。こういうの考えるの巧いよな、SEGAは。

ゲームが終わったら「おもちゃ見たくなっちゃった」とのことでおもちゃ屋、ようわからんけどアニメキャラの着せ替え人形2,500円が欲しくなったようではいはい、と買う。

ジュース飲んだりなんだかんだで計3,000円。また歌を歌ってくれるなら安いもんだ。
コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

叩かないのは愛していないから

2008-04-19 01:58:39 | 仕事
今週の僕。

月曜日=会社
火曜日=茨城の勝田と言うところに行って帰って。
水曜日=会社
木曜日=福岡行って泊まり。
金曜日=午前中福岡で仕事、午後戻ってきて会社。
土曜日=茨城の勝田と言うところ行ってそのまま実家に帰る予定。
日曜日=実家で姪っ子と遊ぶ予定。
月曜日=朝6時の飛行機で福岡行って帰ってくる予定。

うーん、久々に移動距離がえらいことになってるね。

金曜の福岡ナイトは昔、札幌で上司だった人が福岡にいるのでその人と飲めた。博多駅の近くのこじんまりとした居酒屋行って生のサバ(あんまり本州では生では食べられないね)、明太子、馬刺し(タテガミって部分が旨い。ええ、馬だけに)、なんかぽりぽりした小魚の揚げモノなんかとつまみつつ福岡の地酒を飲みながらいろいろ話した。楽しく話してたので写真撮り忘れました。

今の会社に入っていろいろ感謝をしている人がいるけどこの人もその一人。

人への感謝って即効性のあるのとそうじゃないのとある気がしません?

即効性って言うのはなんかしてもらったときに「あ、ありがたいなぁ」とすぐ思うの。たいしてそのときは「うーん、そんなもんかな」と思っていたけどしばらく時間が経って「ああ、あの時はありがたかったなぁ」とじんわり3年殺しで効いてくるやつ。この人への感謝の気持ちは明らかに後者だなあ。

最近思うんですが仕事相手とか同僚に対して僕の課題は「叩くほど愛してない」ってことだと思います。

なんか同僚の行いなんかで「ヨクナイナ」と思うことがあっても「ま、いいか、俺困んないし。叩いて波風起こすの面倒だし」と思っている節がある。それはうーん、良くない気が最近しますね。
直そう、という気もあんまりないんだけど。

僕が今まで付き合ってきた上司で未だに「いやーありがたいなー」と思っている人たちの共通点は僕をガツンガツン叩いてくれた人たちです。叩かれてるときは「えーん(涙)」と思ってたけど今考えると「あ、あれは愛してくれてたからなんだ」と思いますね。

うーん、仕事と言うのは奥が深い。

ということで土曜日は茨城で仕事。仕事先から実家に行くと22時前くらいにつけることが分かったので実家に帰ります。
マイ・エンジェルである姪っ子のレンタル許可を得たので日曜日はたっぷり遊んであげようと(いや、もらおうと)思っております。レンタル代は福岡で買った明太子。

もー、お兄ちゃん何でも買ってあげるよ~。

僕の友人は実家に帰って友達の子に会うと「ジャスコー!」といわれるらしい。こんにちは、よりも名前よりもジャスコ連れてけが先。僕もそろそろ姪っ子にそう呼ばれるんだろうな。それもまたよし。ジャスコくらいで「だいしゅき」と言われるなら安いもんです。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ランチに関する諸問題

2008-04-12 01:13:59 | 食べ物
サラリーマンにとっての昼食は結構な楽しみです。(僕にとっては朝食も夕食も結構な楽しみなわけですが)

だからこそねー、「うわーはずれたー」って時の昼食はすごいがっかり。

めちゃくちゃまずい、ってことはまぁ無い。(そもそもそういう店は既につぶれている)

あとはこまごましたことなんだよね。

いくつか書いてみる。

犬問題

さいきん僕がよく仕事で行っている地域は大きな公園もあって犬を飼っている人が多い。何度も言うけど僕は犬が嫌いじゃない。でも飲食店にいるのはね~、ちょっと衛生的にさ。すごい人懐こい犬でじゃれてくるのもちょっとね。
犬さわった手でご飯食べるのはちょっとどうかと思うので、手を洗いたいけどすぐに手を洗いに行ったらなんか店の人に無言で「お前のところの犬はきたない」と言っているみたいではばかれるじゃないですか。

灰皿問題

まぁ今の時代、吸う場所がある、と言うだけで感謝しなければいけないんだけど。使いづらい灰皿の場合があるんですよ。だいたいにおいておしゃれな灰皿は使いづらい。
普通、灰皿はふちにタバコをおいておけるくぼみがあるけどそれがなくて、更に灰皿に水が入っていると、タバコを置けない。(置いたら水に浸かって消える) なんかずっと吸ってなきゃいけなくなってやだなー。

座席問題

一人で入って「こちらどうぞー」と座ってみたら店内の構造上、全席から見られるみたいな席。つまり店内が円形で真中に席があって、そこに座る、というのはきついなぁ。

こういうことね。なんか緊張しちゃうじゃん。

あと壁向きの一人席で向いが鏡、というのもヤダ。なんで見飽きた自分の顔見ながらご飯食べなきゃいけないのさ。僕が加藤ローサだったら鏡に向いて食べてもいいけど。

無難問題

こないだ、初めての店にご飯食べに行って日替わりカレーを頼んだんです。チキンカレー。カレーの上に炙った鶏肉が載ってて美味しそうなんだけど、食べてみるとどうにも変な味。なんつーの、埃を食べてる感じ。(いや食べたこと無いけどさ) たぶんスパイスの調合でこういう味になっているんだろうけど、「無難にカレーにしとくか」と選んだので無難な味のほうがよかったなぁ。
なんかインド音楽とか流れて怪しげな店だったら心の準備も出来るんだけど、普通のカフェでそういうカレーが出てくるとね、びっくりする。

雑誌問題

新聞か雑誌くらいはほしいねー。

ビール問題

これは問題どころか希望なんだけどランチにビール出していると嬉しい。いつも飲むわけじゃないけど。ちょっとでいいのよ、ほんと。気分の問題ですから。ジョッキじゃなくてコップでいい。コップ一杯150円とかでうれしいなぁ。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

福岡飛行機待ち5時間

2008-04-09 03:04:55 | 日記
福岡出張でした。

んだけんども東京はひどい大雨。桜の季節って「もう散るかな~」ってときに嵐のような雨が降って全部桜が散りますよね。

朝9時の飛行機に乗る予定が遅れに遅れ11時搭乗。福岡で待ってくれている仕事先には平謝り。で、「これから飛行機乗りますけど13時までに連絡しなければ飛行機に監禁されてると思ってください」と言っておいたら案の定監禁。

あんまり寝てなかったので席に着いてすぐ寝てたら14時にちょっと動いた。「あ、到着か~」と思ったらなんと離陸。なんと3時間も飛行機の中に閉じ込められてた。こういうのが一番辛いよね。だって携帯で連絡できないんだもん。

とりあえず仕事を終えて帰ろうとしたらやっぱり欠航。

着替えとかはまったく持ってきてないけど泊まり。しかも急な泊まりなので誰も一緒にご飯に行ってくれない。

んじゃあ、と一人で中洲の屋台街へ。

中洲の屋台街にしっかりと来たことってないな~。そもそも福岡に来たこと自体少ないし。福岡に来てもどっかでちゃんと飲んで屋台でラーメン食べる、ってことくらいしかない。

屋台を見てみるとは大体ラーメンの屋台。ちょっと飲みたかったので適当な店に。

なんかちょっとした小料理屋みたいだけど戸のすぐ外は道。これはこれでアタリ。

オススメ聞いたら「明太子のてんぷら」だって。

ふーんと思ったらめっちゃうまいの。

明太子を青じそで巻いてそれを揚げたの。

明太子って焼くと水分が飛んでしまうけど揚げると水分が残ってふっくらする。さらに青じそが魚臭さを和らげてあっさり食べられる。

はい、お店の人が言ってたまんまコピペですが。

さっと炙った地だこもいただく。

これはこれで柔らかくて美味しい。

ぱっと外を見るとガラス戸の向こうに川沿いの桜。

中洲の屋台街というのは川沿いにあって桜がきれい。九州はもう桜の季節じゃないだろう、と思ってたけどこっちのほうが持つみたい。

福岡の景気だとか日本経済について店のママ(60歳くらいですかね)と語り店を出る。

んで、その後屋台のラーメンを食べようと思って隣の屋台を覘く。

今度は川沿いにテーブルと椅子を出していてそこが一番桜に近いのでそこに陣取る。

メニューを見るとに牛すじおでん200円と書いてあったのでそれを頼む。

当然ビール。

見上げれば桜。


ラーメンはなんかねー揚げニンニクを振りかけられるようになっててこれがめっちゃうまい。

よかね~福岡。

これから毎週来ようと思ってます。
コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

桜吹きまき乱れなむ

2008-04-08 01:54:35 | 日記


あーもう桜が好きだー!!



年々好きになってますね。もうなんつーんですか、この季節の青空と桜の薄桃色のコンビネーションったら世の中にこんな美しいものがあるのか、って感じですね。お花見したい~。

入院以降、久々に会う人からは「体調どう?」と言われますがもう大丈夫。ご心配ありがとうございます。

結構前の話になるんですが、病院に行ってきました。一連の入院関連の最後の通院ということで。
 
うーん、東大は桜が綺麗。

先日受けたカプセルカメラで撮影した画像を元に診断。

疑いのあった小腸には何もなし。綺麗なもんでした。しかしパソコン上で画像見せてもらったけどカプセルカメラはきれいに写るもんなのね。「13時までは絶食で」とか言われたのに12時半にカレー食べた(食べちゃダメって忘れてた)もんだから「カレーしか写ってません」と言われるじゃないかとドキドキしてたんですが。

ということで僕の内臓はもう問題なし。

…と、それで済めばいいんですがそうも行かない。

内臓からえらいこと出血していた(数値によると体の血が半分になった、くらいの出血だったらしい)ことは確かなわけでじゃ問題はなんだったんだ、ということになる。今は治っている、ということは突発性のものだったかも知れないわけでつまり今後もいきなりそんなことになるかもしれない、ということ。

うーむ。

お医者さんからは「ま、年に1回くらい胃カメラ受けてください」とのこと。

ま、仕方ないか。花もはじらう30代だしね。

最後にレントゲン撮ってもらってカプセルカメラが無事身体の外に出ていることを確認し僕の闘病生活(ってほどじゃないけど)は終了。


昨日はchicoryさんとうさぎさんと花見兼ご飯。

散りかけとは言え夜桜はきれいでしたよ。

この時期は地面が綺麗でいいね。花びらを踏みつけながら歩くのはちょっと気が引けるけど、桜が風に舞っているのなんか非常によい。

前も書いたけど新古今和歌集から。

山風に 桜吹きまき 乱れなむ 花のまぎれに たちとまるべく

(桜よ、山風に吹かれて舞ってくれ。愛しいあの人が花吹雪に少しでも立ち止まってくれるように)
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ローマ人列伝:カリグラ伝3

2008-04-04 00:29:15 | ローマ人列伝
アウグストゥスが巧妙に作り上げた「皇帝」というシステム。

いくつかの皇帝の特権の中のひとつが「身体不可侵権」。つまり、何人たりとも皇帝を傷つけることが出来ない、ということです。この権利に基づき皇帝を殺すことはおろか傷つけることすら罰せられるのです。

そのシステムを使うものが公平でバランスの取れた人(たとえばアウグストゥス)であればローマ帝国のためになるものですが、ひとたびバランスのない人がシステムの上に立った瞬間、それは単なる独裁です。まさにカリグラの治世。

既にこの頃のローマでは、皇帝の悪口を言うだけで皇帝近衛軍団が襲い掛かるまでになっていました。

カリグラを守る屈強な近衛軍団。ここにいたのがカシウス・ケレア。最初に出てきましたが、平民出身ながらローマ軍で献身的な活躍をし、司令官ゲルマニクス(カリグラの父)に認められ百人隊長まで出世した叩き上げの老軍人です。カリグラ即位以降、彼は皇帝近衛軍団の大隊長、という平民としてはかなりの出世をしています。

ローマ軍人というのは規律が厳しいからか「献身的な名軍人」というのがたびたび誕生します。アグリッパもそうでしたしこのカシウス・ケレアもそうです。彼の心にあったのは自分を取り立ててくれたゲルマニクスへの忠誠、そしてゲルマニクスの子、カリグラへの忠誠。その忠誠心は責任感に変わります。若きカリグラを補佐することが今は亡き恩人、ゲルマニクスへの報恩であると。

彼はカリグラを補佐しながらたびたびまともな政治をやるように進言してきました。酒は飲むな、付き合う女は考えろ。しかしカリグラは聞く耳を持ちません。それどころか仕事に生き、年老いても妻を持たなかった彼を「同性愛者」とからかいます。

彼は思ったのでしょう、「もう無理だ」と。愛されるために何でもし、愛されないことは何もせず、酒とセックスにおぼれ、まともな助言には耳を貸さず、ひいては自らを神と呼ぶ若者。

責任感の強いカシウス・ケレア、恩人ゲルマニクスから「息子を頼む」と言われ、その恩に報いるために人生を捧げました。今はもう、その責任を全うする方法はひとつしか在りませんでした。


パラティーノの丘、アウグストゥスに捧げる祭事において昼食に向かうため歩き出したカリグラ。

背中を切り付けられ振り返ったカリグラの見たものは、まず彼の血で赤く染まったグラディウス(幅広剣)。

その持ち手は英雄である父の忠実な部下であり、自身が皇帝に即位して以降、常にもっとも近くにいた信頼の置ける老軍人、そして不可侵である皇帝を警護すべき近衛軍団大隊長、カシウス・ケレア。

誰からも愛されたカリグラはその老人からの愛を疑うはずもありませんでした。

カリグラの目に映るのは常に人々の愛情豊かな笑顔。しかし彼が最後に見たのは憎しみでした。

一方、カシウス・ケレアにとっては息子と同然とも言える若き皇帝。忠誠を果たすためにはここで彼の人生を終わらせるほかになかったのです。カリグラを息子のように、いや息子以上に愛した彼にとってカリグラの不始末を片付けるのも自分の責務と思っていたのではないでしょうか。赤い炎のように燃え盛る憎しみではなくしずかな青き夜のような憎しみもあるのです。

カリグラは生まれたときに持っていたすべての愛を失い、がっくりと膝をつき、絶命します。

あらかじめ近衛軍団の軍人に話をつけていたカシウス・ケレア。カリグラの絶命を確認するとすぐさま傍らにいたカリグラの妻を殺し、その胸にいた幼児を壁に叩きつけ殺します。自分が愛したゲルマニクスの血を絶つことでしか、彼の責任は果たせないのです。自分が忠誠を誓ったゲルマニクスの子、そしてまだ言葉も話せないその孫を殺すとき、彼の目には涙があったに違いありません。

そしてこの凶事を震えながら見ていたのはクラウディウス。

(この人、なんかいつも困った顔してます)

簡単に言うとカリグラの叔父(ゲルマニクスの弟)で、一応、アウグストゥスの血を継いでいます。しかし体が弱かったことと風采の上がらないことから政治の世界にはおらず歴史家として生きていた50歳です。もちろん今まで皇帝候補に上がったことなど一度もありません。

近衛軍団は彼の首根っこをつかみローマ市民の前に立ちます。右手にはカリグラの首、左手にうだつの上がらない歴史家。近衛軍団は「インペラトール(最高司令官)!」と叫びます。つまり前皇帝が死に、新たな皇帝が生まれた、という宣言です。カリグラの暴虐に不満を持っていた元老院とローマ市民、その声にこたえます。「インペラトール!」

ローマにおいてはあくまで主権者は元老院とローマ市民。彼らから承認され統治を任されているのが皇帝です。ここでクラウディウスは皇帝の承認を得たことになりますが、歴史上、こんな強引な皇帝即位式もありません。

カリグラ即位後わずか4年後の出来事でした。

皇帝は代わったものの、殺害犯である近衛軍団は警護兵に捕縛されます。悪名高き皇帝とは言え法に従えば彼に傷をつけたものは問答無用の死刑。ただしカシウス・ケレアはそれもわかっていました。あらかじめ話をつけ「首謀者大隊長カシウス・ケレアは死刑、それ以外は大隊長に命令されただけなので不問」という判決におさめます。(不問となった近衛兵たちは後に皇帝から多額の報償すらもらいます)

カシウス・ケレアは自分が権力を欲しかったわけでもありません。ただ自分の恩人ゲルマニクスの血統がこれ以上悪名にさらされるのを避けたかっただけなのです。死刑になろうがその点だけは達成できました。首をはねられる直前に思い浮かんだのはゲルマニア戦線で過ごした恩人ゲルマニクスとの日々。傍らにはその子、愛らしいカリグラ。ローマ帝国の平和のために戦う日々。つかの間の休息に語り合う彼らの夢。幼いカリグラに築かれつつあった皇帝への栄光の道。

彼らにとってその戦線での日々が人生最上の時だったのかも知れません。

愛されることが得意で愛だけを求めたカリグラ。存命中に数多くの自分の彫像を作らせローマ全土に送りました。神として崇めるようにと。
しかし死後、その彫像はことごとく徹底的に破壊されます。まるでローマ市民がカリグラを愛した自分たちの愚かさを悔いるかのように。後の世に残っているカリグラの足跡は只ひとつ、「悪名」だけです。



<カリグラ伝:完>
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ローマ人列伝:カリグラ伝2

2008-04-03 00:08:53 | ローマ人列伝
カリグラを襲った病がなんだったのかは分かりませんが、生死の境をさまよう大きな病でした。

当時、首都ローマはもちろん属州のガリアやエジプトでさえも民衆は口々に言ったそうです。「やぁ、こんにちは、ところでローマの皇帝は大丈夫だろうかね?」と。

もしここで彼が死んでいれば、「ローマ帝国一愛された皇帝」という称号のまま死んだかも知れません。しかし彼は回復します。

生死の病をさまよったカリグラ、どれだけ愛されていても人はいつか死ぬ、という当たり前のことを悟ります。「だったら好きなように生きるぜ!」とダメなロックンローラーみたいな感じになっていきます。

政治は適当、やることは酒とセックス。そばで見ている元老院は眉をひそめますが公邸内部のことなど何も知らないローマ市民、未だにカリグラのことは愛しています。相変わらず税金は安いし剣闘大会は頻繁に開催されていますから。

当たり前ですが、財政は破綻。

さすがのローマ市民もカリグラの政治を疑い始めます。

愛されることが得意な人間は愛を失うことに敏感です。カリグラはすぐに気づきます。「あでー??おかしーなー、みんな愛してくれなくなったよ」

愛され上手で愛されていないと満足できないカリグラ、誰からも愛される方法を思いつきます。

当時の市民から愛された皇帝の代表といえば既に死んでいる神将カエサルと神君アウグストゥス。自分の血のルーツである2人のことを思い出したカリグラはこう思います。「そうだ、神になればいいんじゃん!」

皆さん当然突っ込みたくなると思いますがカエサルもアウグストゥスも「神だから愛された」のではなく「愛されたから神になった」のです。それを若きカリグラ(20代前半)はわかっていません。彼は全ローマ市民に宣言します、「俺は神だ!」

神を自称するカリグラは更にやりたい放題、セックス、ドラッグ&戦車レース。「だって俺、神だもーん」

政治的なことで言えば公共事業を行いましたがそれも競技場や戦車レース場、自らを祭る神殿を作っただけ。


財政難、元老院からの非難、市民の不満。それらは結果としてひとつの形を成します。


紀元前四十一年一月二十四日。

ローマ、パラティーノの丘では神君アウグストゥスに捧げる祭事が開催されていました。祭の五日目であるこの日は演劇大会の日。ローマの俳優たちが舞台を演じます。こういうイベント事に顔を出し市民に挨拶することが皇帝としてのいや、市民から愛されるための重要な責務と考えていたカリグラはきちんと出席します。このときカリグラ28歳。



午前の部が終わり、昼食に向かおうとしたカリグラ。彼の身の回りを固めるのは屈強な近衛軍団。何人たりともこの若き皇帝に触れることは出来ません。

そう、近衛軍団兵以外は。

突然、カリグラの背中が血に染まります。


…to be continued...
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ローマ人列伝:カリグラ伝1

2008-04-02 02:36:52 | ローマ人列伝
めいしょうさ~ん、ジーステのめいしょう、あ、チョイもーしーほーで。
タイトルドン!マーロー人でんれつ、グ~ラカ~リー。

というわけで今回はローマ帝国第三代皇帝、カリグラ。最近、夙川アトム最高じゃないですか?

ほんと何度も繰り返しますがこのローマ人列伝は僕の個人的な趣味で書いているものですから歴史的間違いはご容赦ください。(ご指摘はありがたくいただきます)


本名はガイウス・ユリウス・ゲルマニクス。ガイウス・ユリウス・カエサルと名前の前の方が一緒。とは言えこんなの忘れてください。カリグラ、あるいはカッちゃんで大丈夫。

家系図はこんな感じ。

うわーぐちゃぐちゃー。面倒な方は飛ばしてもいいです。このあたりは「カエサルの血」を求めたおっくん(アウグストゥス)により家系がかなり入り組んできていますから。なんとなく、「おっくんの孫かなー」くらいでOKです。

一応ちゃんと言っとくと、初代皇帝アウグストゥスの娘とアグリッパの間に生まれた大アグリッピーナの息子、ということになります。だから正式に言うとアウグストゥスのひ孫。母はアウグストゥスの孫で、父は第二代皇帝ティベリウスの弟の子、父方も母方も皇帝の血が入っているわけで血統的には素晴らしいものがあります。

更にカッちゃんの父は血統だけでなく実績も優れていました。父の名はゲルマニクス。名前はとおり当時のゲルマニア(現在のドイツ)を征服し、また蛮族を平定したことで「ゲルマニアを制覇したもの」という意味です。

ちょうど父のゲルマニア遠征はカッちゃん2歳のばぶーの頃。幼いカッちゃんも父と母に連れられ幼児期をゲルマニアで過ごします。ずいぶんと可愛らしい赤ん坊だったようで兵士からも軍隊のマスコットとして可愛がられます。兵士たちは暇なときに軍装である短衣を小さく仕立て、カッちゃんに着せていたそうです。そんなことしてないで働けよ、って感じですが。ここからカッちゃんの名、「カリグラ」が生まれます。軍装サンダルのカリガの小さいの、「子供用カリガ」という意味です。


(カリガ)

成人して以降、カッちゃんは自身の「カリグラ」という仇名を実は嫌っていたようですが。そりゃそうです。「カリガちゃ~ん」みたいなもんですから。

※ここでひとつ、ゲルマニクス軍にカシウス・ケレアというたたき上げの軍人がいたことだけ覚えといてください。平民の生まれながら献身的な彼は百人隊長、今で言えば大隊長くらいまで出世しました。これだけちょっと頭に入れて置いていただけると最後楽しめます。

勇猛な武将ゲルマニクス、そしてその愛らしい子カリグラ。

こんなエピソードがあります。当時の皇帝アウグストゥスの死を聞いた兵士たち、ここまでの不満とこれからの待遇への不安が爆発し司令官への反乱を起こします。妻と子の身を案じたゲルマニクスはひとまず彼らを安全な場所に避難させます。それを見ていた反乱兵士たち、自分たちが自分の子のように、あるいは年の離れた弟のように可愛がっていたカリグラが軍を離れていくのを見て大変な寂しさを覚えます。そして口々に叫びます。
「俺たちが悪かった!カリグラを他の場所に連れて行かないでくれ!」
どうにも当時のローマ兵というのは戦場では勇壮な割に涙もろいところがあります。つーか働けよ。


世の中には「いつの時も誰からも愛される人」というのがいます。天真爛漫天衣無縫森さんお酒が大好きで~好きで~好きで~大好きで~、誰からも愛され、またその本人もその愛を受けることを当然と思っているかのような人。「愛してくれ」などと口にするまでもなく、まるで降り注ぐ太陽のように愛を注がれることが日常である人。カリグラもそんな人間でした。

父ゲルマニクスの死後、母や兄弟の追放という悲しい事件が起こり、結果カリグラは当時の皇帝ティベリウスに引き取られカプリ島で住むことになります。一説には彼の母や兄弟の追放は皇位を望んだティベリウスの策略によるもの、という説もありますが真相は分かりません。

ただしはっきりとしているのはティベリウスはカッちゃんを思いのほか可愛がった、ということです。

老境を迎えた皇帝ティベリウスは孫であるゲメッルスとカリグラを自身の後継者と考えます。しかし愛されることが当然のカリグラにはそれが許せなかったのでしょう。愛されるのは自分ひとりでいいのです。ティベリウスの死後、自身の暗殺を企てたという理由にゲメッルスを処刑します。

そしてここに第三代皇帝カリグラが誕生します。


名門に生まれ、あのユリウス・カエサルとアウグストゥスの血を引く24歳の青年(一応、ティベリウスの家系でもありますが当時ティー坊は嫌われていましたからこのことに言及する人はいませんでした)。

精悍な体と愛くるしい笑顔、しかし実績は何一つありません。軍を指揮したことも政治を行ったことも。しかし元老院とローマ市民は大喝采でこの皇帝を迎えます。ローマ史上これだけ歓迎された皇帝もいないのではないでしょうか。その理由は前皇帝ティベリウスの不人気の裏返しでもあります。カエサル、アウグストゥスの血も引かず、ローマから離れたカプリ島に引きこもり恐怖政治を行ったティベリウス、その次を継ぐものが「カエサルの血」を継ぎ、また英雄ゲルマニクスの実子。民衆に異存は一切ありません。

愛された男カリグラは民衆の心をつかむ方法であれば誰に教えられるとなく知っていました。

就任挨拶の第一声は「私はティベリウスと反対のことをやる」でした。熱狂する民衆。更に「ローマを居とすること」「減税」「ティベリウスが行わなかった剣闘大会の開催」などとにかく民衆の欲しがっている政策を声高々に発表します。
愛されること、愛を更に増やすことにかけては天性のものがありました。

しかし残念ながら彼にはその愛を継続させるためのプランは何一つありませんでした。

カリグラの政策でただひとつ評価されていることがティベリウスが築き上げた属州支配システムを一切いじらなかったことです。ティベリウスが長年にわたり築いたそのシステムは見事なもので一切のトラブルが起こりませんでした。カリグラはそのシステムを何一つ変えることがなかったのです。
しかし裏を返せばいじるプランもいじるつもりもカリグラにはなかったのです。属州の司令官を変えたところで民衆はそんなの気にしないからです。愛されるためには何でもする、しかし愛されないことは何もしない、これがカリグラの政治です。

たびたびカリグラは古代ギリシャ風の格好や古代の英雄ヘラクレスを真似て獅子の毛皮をかぶった扮装をしていたそうです。コスプレです。うるさ型の元老院は眉をひそめますがローマの若者には大人気。

民衆の愛を得るための減税と華やかな剣闘大会を頻繁に開催。剣闘大会どころか戦車レースも開催します。

当然のことながら国家の財政は破綻します。しかし、そのことに気づくものは当時のローマには誰もいませんでした。

民衆にとって耳障りの良いことだけを言い、そしてそれを実行する若き皇帝。その彼を病が襲います。


…to be continued...
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

システムは進化する。人間はそうでもない

2008-04-01 00:31:10 | 日記
仕事場で財布を拾いました。

仕事場のテラス、と言っても普通は人は入れなくて窓を「よっこいせ」と越えなくてはいけない。つまりそんなところに財布を落とす、なんてのはありえない。

そこに財布が落ちていた。

開けてみると現金はまったく入っていなかったけど、カード類はたっぷり入っている。免許とかキャッシュカードとか。

うーむ、想像するにおそらく、財布を拾ったか盗んだ人が現金だけ抜き取ってぽぽーいと僕の仕事場のテラスに放り投げたのかもね。

免許から年齢とか名前、住所は分かったんだけど肝心の電話番号は分からない。

キャッシュカードの銀行に電話をしたら「カードだけなら銀行に届けていただきたいんですが財布なら警察へ」とのこと。まぁ、そうやろね。

ということで近所の交番に行こうかと思ったんだけど電話番号が分からないのでとりあず104に電話をかけてみた。

あのですね、最近104ってかけました?

僕も久々だったんだけど進化してるね~。

まず「お問い合わせの番号は○○○…」とか言われるでしょ。そしたら普通その番号をメモしますよね?最近違うんですよ。その後に「この番号に電話をかけるには1とシャープを押してください」とか言われるの。超ベンリ!!

少し情報量が課金されるみたいだけどね。

へー、と思って速攻電話かけてみる。

電話を切ってしばらくしたら僕の携帯にメールが来た。

なんと「今、お問い合わせいただいた番号は…」みたいな感じで電話番号が載ってる。なにこれ?すごいじゃん。

で、警察に行ってきました。

なんかねー交番に行くのなんてしばらくぶりですわ。

財布拾ったんですけどー、と言ったら初老の警官が「あ、どうもどうも」という感じで出てきて、まずこれに名前と住所書いて、と更のわら半紙を出してきた。

はいはい、と書いていたら交番に道を尋ねてきた人がいて初老の警官はそちらの対応。で、若い警官が出てきた。

あのですね、僕、そのわら半紙にちゃんといろいろ書いてんですよ。なのにその警官「はい、じゃ住所教えてください」とか言ってきた。「そこに書いたじゃん!」と普通に突っ込みましたよ。「あ、すいませーん」って感じで「じゃ電話番号は?」とか聞くの。「だ・か・ら!そこに書いたじゃん」みたいなことを延々やってた。

ほんとにもー。

「警官にさよならを言う方法はまだ見つかってない」ってフィリップ・マーロウも言ってたな。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする