浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

もしアカデミー名台詞賞があったなら

2017-11-28 11:59:18 | DVD、映画
「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」という映画を観てきました。


まず言っておきます。名作! 観る価値は確実にあると思うし、このジャンルにおいて確実に「レンガをひとつ積んだ」作品だと思う。もしよろしければぜひ。

このシーズンというのはクリスマス商戦直前だし、これからアカデミー賞レースが始まる、ということもあっていろんな作品が公開されている。今ならどの作品観ても楽しめると思うから、そういうタイミングである意味こういう「小品」は不利だろうけどそれでもね。

この作品の扱いもさー、2016年夏にアメリカで公開されたのが2017年11月にやっと日本で公開ってひどくない?とも思いますが、ま、観られるだけ感謝しないといけない。

どういう話かというと、クボと呼ばれる日本人の少年がいて、舞台は江戸時代くらいだろうねぇ、彼の冒険譚なんだけど、まずこの「日本が舞台」という話をハリウッドでやっているということが素晴らしい。もちろん、単に「日本を舞台にしてくれたわーいわーい」と言いたいわけじゃない。日本が舞台のハリウッド映画ならいくつもある。この「KUBO」が素晴らしいのは、日本を舞台に「ちゃんと」描いている、ということ。どうやったってハリウッドで描かれる「日本」というのはぜったいにどこかしら「いや、これ日本じゃないでしょ」と思うところがたびたびある。

例えば、ハリウッド版「ゴジラ」だと舞台は日本の「雀路羅市」(ジャンジラ市)だった。架空だとしてもそんな地名ありえないよね。「ウルヴァリン:SAMURAI」でも食卓のシーンが昔の小津安二郎映画に出てくるちゃぶ台使ってて「さすがにもう無いよ」と思った。まぁこれは監督が小津安二郎好きだから、ってのがあるかも知れないけど。。

そういう細かい点でこの「KUBO」はよく出来ていた。一個突っ込むと、町で盆踊りのシーンがあってそこで「炭坑節」が流れていたのね。仮に、江戸時代の設定だとするとこのときには炭坑節はまだ無いだろうなぁと思った。思った、んだけども!盆踊りのシーンに炭坑節流れるのは良いよね!やっぱり盆踊りといえば炭坑節ですよ。(どっちやねん)

こういう細かい日本的ディティールがよく出来ていた。そして、映画のストーリー的に「日本でなければならない理由」もあったと思っていてそれもとっても良かった。

そして2つめ。これはこの映画を素晴らしいものにしている最大の理由だと僕は思うんだけど、この映画はアニメではなく、「ストップモーションアニメ」というやつです。つまり、人形があってそれを少しずつ動かして撮影してまとめて流すと動いているように見える、というもの。いやぁこれがほんとーに素晴らしかったですね。

現代、アニメーションといえばそれはもうほとんど「CGアニメ」なんだろうと思う。僕はそのあたりあまり詳しくないんだけど。。ピクサーが「トイ・ストーリー」で史上初めて作った、コンピューター・グラフィックスによるアニメーションね。そりゃもちろん普通のセル画によるアニメーションと違って人手はそんなにかからないし、手で描くよりももっと豊かな表現がCGなら出来る。

だけど、結局のところCGはCG。物質として存在していないしどんなに素晴らしい絵であっても「ま、結局CGでしょ」と思ってしまう。

そんな時代にあえて古くからあるストップモーションアニメというのが素晴らしい。つまり何が違うかというと、この映画に出てくるKUBOやその他の登場人物は実際にこの世界に「人形として」存在する、ということです。我々人間はどんなに頑張ってもトイ・ストーリーの中に出てくるウッディを触ることは出来ない。だけどKUBOの場合、映画館を出て飛行機に乗ってサンフランシスコで乗り換えてポートランドに行ってこの映画を制作したスタジオであるライカというところに行けば、KUBOの人形に触ることは(理屈上は)出来る。あえてこの時代にストップモーションでアニメを作るということはこの「実在感」だろう。

最後に3点目。豪華声優陣。なにせシャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒーのアカデミー主演女優賞・男優賞コンビに加え、ルーニー・マーラ(お綺麗!)、レイフ・ファインズ(今のM!)ですよ。こりゃあ豪華だ。主人公のクボ役はアート・パーキンソンという僕は名前を知らなかった若い方だけど、とっても良かった。

何よりクボの台詞で良かったのは一番最初に出てきた「If you must blink, Do it now!」だったと思う。これは映画のほんとに最初の最初に出てくるからあまりネタバレにならないと思うのですが。。「もし瞬きをしたいなら、今のうちだぜ!」ってところだね。観終わったあとには「ああ、瞬きをせず、すべてをしっかり目に焼き付けておくべきだった」と思う。もしアカデミ賞に名台詞賞があったら僕はこの台詞を推すね。

本当に素晴らしい映画だと思うので機会があればぜひご覧頂きたい。

街頭テレビがテレビの本質なんじゃないだろうか。

2017-11-27 14:29:27 | 日記
先日の選挙で、と書き出して、はたと思ったけど、選挙あったよね? ふと不安になって手帳を遡ってみたけど確かにあった。10月22日投開票。今(11月27日)からほぼ一ヶ月前。

いやー、忘れてるなぁ。というかそもそも本当に印象に無い選挙だった。ま、それはいい。(いや、良くないけど)

僕の家はテレビが見られない。テレビという機械はあるけどもアンテナを繋いでないのでテレビ放送は見られない。テレビって必要な情報を得るツールとしては少し効率が悪いし、番組によっては音も映像も騒がしくてどうも落ち着かない。とはいえ、それでも僕は元々テレビっ子なのでテレビがあるとついついテレビを見てしまって、時間をムダにしてしまうのでアンテナに繋いでない。

観たい番組があれば近所の居酒屋なり喫茶店なりに行って見る。

で、今回、たまにいくバー火鉢が「選挙特番を観るナイト」というのをやるってんで行ってみた。あいにくの台風の中、わざわざテレビを見に行こうなんて人は多くなかったらしくお客さんは僕含め2人。

ダラダラとハイボールを飲みながら選挙特番をボケっと口開けて観ていた。(テレビがね、ちょっと上のほうにかかってるので観ているとついつい口が開いてしまう)


改めて、他人とテレビ見ていて思ったのは、気を抜いて、他人とテレビ観ていると思っている以上に「口に出しちゃうな」ということ。ついつい「違うよねー」だの「あ、美味しそう(CMのときとか)」なんてのをついつい口に出してしまう。

これってちょっとテレビ独特のものなのではないかな、と思った。映画ほど没頭しなくても筋は分かる、そんなに真剣に観なくてもよいテレビ、という独特の特徴なのではないかと。

そう考えて観ているとテレビは意外と楽しい。

どうでも良い内容のときはテレビを観ないで隣の人と話していればいい。ちょっとおもしろそうな話になったら「あ、ほらほら、この人、」と見入ってもいい。もし映画だったらちょっとこうは行かない。「ちょっと黙っててよ、話に集中してるんだから」なんてこともあるだろう。その点、テレビはどうせ見過ごしたって大したことじゃないし、目だけやっておけばだいたい字幕スーパーが出てるから分かる。観てなくたって聞いてりゃ分かることもある。テレビドラマにしたってそりゃちゃんと見てなきゃわからなくなるかもしれないけど民放ならどうせCMが入るんだからそこまでの辛抱だしね。

隣の人と話しながら観るリアルタイム感というのはテレビならではだろうねぇ。

その選挙特番を観るナイトの数週間後、福岡にいたんだけどちょうど日本シリーズがやっていた。福岡の居酒屋に入るとどこもテレビで日本シリーズを流していた。そうするとやっぱり観ちゃう。で、ついつい口に出しちゃう。「あ、惜しい」だの「行け!」だの。そうしてると同じようなことつぶやいてた隣のお客さんから「やっぱりお兄さんもホークスファンかい?」とか言って話かけられる。

うむ、やっぱり日本のテレビの始まりって「街頭テレビ」だったわけでテレビ誕生から数十年経って、結局残るのはそういう機能なんじゃないかなーと思ったです。

ジャスティス・リーグ雑感

2017-11-24 18:27:08 | DVD、映画
映画「ジャスティス・リーグ」が公開されました。今回はその話。

※「ジャスティス・リーグ」のネタバレを含みます。

何度も繰り返していると思うけどまずはDCコミックとマーベルの話から。アメリカでいわゆるアメコミヒーローものと言われるコミックには大きく2つの流れがある。一つはDCコミックス(以下、DC)、もう一つはマーベル・コミック(以下、マーベル)。

DCとマーベルは日本で言えばジャンプとマガジンみたいなものでライバル。DCの人気キャラクターといえばスーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン、マーベルの人気キャラと言えばスパイダーマン、キャプテン・アメリカ、X-メン。

DCは1969年に映画会社のワーナーに買収され、1990年代にバットマンの映画化でヒット。それを観ていたマーベルは2000年代にX-MEN、スパイダーマンの映画化でヒット。DCは2000年代後半にバットマン新3部作(俗にいうダークナイトトリロジー、というかつまりダークナイトだけど)が大ヒット。

ほんと何度かこの歴史の流れを説明しているけど改めて2008年というのはこの2大帝国にとって大きな年だったな、と思う。だってダークナイトとアイアンマンが公開された年ですよ。DCの特徴である「ダークな」「リアルな」世界観の絶頂である「ダークナイト」と、マーベルのアベンジャーズシリーズ、つまり「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の1作目であるアイアンマン。これがねぇ、同じ年に公開されているんだものね。

その後、マーベルは2009年にディズニーに買収され、2012年にはMCUのひとつの集大成である「アベンジャーズ」が大ヒット。同年DCはダークナイトトリロジーが「ダークナイト・ライジング」を持って完結。MCUのようなユニバース企画(単体でヒーロー映画を作って、それを大集結させる企画)のDC版「DC・エクステンデッド・ユニバース(DCEU)」を始めることになる。

その第一弾が新たなスーパーマン映画「マン・オブ・スティール(以下、MOS)」、これがDCにとっての新たなドル箱シリーズになる予定だった。

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これがねぇ、、コケちゃったわけですな。制作費225億ドルに対して興行収入668億ドル。今のハリウッド映画だと制作費の3倍稼げてやっとトントンなので制作費対比興行収入297%は大コケとまで言わずともコケたレベル。同じ「ユニバース1作目」ということでいえばアイアンマン1は制作費の4倍稼いでいる、せめてここくらいは行きたかっただろう。

弱ったDCは次にバットマンとワンダーウーマンを持ってきた。スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン3役揃い踏みの「バットマンVSスーパーマン/ジャスティスの誕生」(以下、BvS)を公開。

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これが制作費の3.5倍の興収。それでもまだ足りない。ライバルの「アベンジャーズ1」なんて制作費の6.9倍の興収なんだから。やっぱね、BvSはMOSの流れを組んで全体的に暗い。画面が暗いってのもあるし、話も暗い。バットマンもスーパーマンもどうも暗い。これはやっぱりさー、大人も子供も大喜びっていう映画にはなりづらいよね。

続くDCコミックスに出てくる悪役だけを集めた「スーサイド・スクワッド」は制作費の4.26倍というなかなかのヒット。

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とはいえこのシリーズは悪役シリーズではなくヒーローシリーズなわけでスーパーマンとバットマンの話がしっかりしてきゃどうにもならない。どうすんべかーと思っていたらいるがな、ワンダーウーマン!となって映画「ワンダーウーマン」が大大大ヒット!制作費の5.47倍を稼ぎ、なんとダークナイト超え!

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さーこりゃバットマン、ワンダーウーマンに加えて新キャラも出る「ジャスティス・リーグ」が楽しみだわい、というのがこの夏の出来事でした。










【以下、ジャスティス・リーグのネタバレを含みます】
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はい、観てきました。まぁとにかくバットマンが出るっていうしそれがベン・アフレックだし、それに何よりワンダーウーマンが出るって言うんで楽しみにしていきましたよ。

結論。

いや、もっと悪くなる可能性だってあった!持ち直したほうだって!良いシーンはあった。悪くない!

というのが率直なところだなー。。

冒頭10分ぐらいはかなりゾクゾク来ていた。ダイアナ、つまりワンダーウーマンの美しさと強さ。もうね、映画「ワンダーウーマン」から続いている感じでとってよかった。「ワンダーウーマン」の舞台が第一次世界大戦だったから、舞台が現代に移って「ああ、また会えた!」ともうそれだけで涙モノです。

このワンダーウーマンの女優さんの表情がとても良いなと思うのは、「ワンダーウーマン」の「ノーマンズランド」でもそうだったんだけど、「あ、この人、いまこの瞬間に怒ったんだな」と誰しもが分かる表情。この表情にゾクッと来ます。起こったからと言って叫ぶでもなく、ダイアナはむしろ無口になり無表情になる。彼女の眼力も手伝って、どこか神々しい美しさに見える。

あと自分でも意外に感じるくらいゾクゾクっと来たのがフラッシュが人を助けるシーン。助けた少女に一言だけ声をかけてすぐに立ち去る。少女の髪が風で揺れる、、なんだか知らないけどこういうのはグッときた。つまりさ、ヒーローの本質というのは敵を倒すってこともあるんだけど、それと同じくらい、いや、それ以上にヒーローの仕事なのは「人を助ける」ってことだよね。感謝されようがされまいが、とにかく市井の人を救う、それこそがヒーローの仕事だ、ということだろう。

それ以外にいくつか、まぁ良いシーンはあったけども全体としては。。うむー。大傑作だ!とは言い難い。

この作品を救ったのは、一人はジョス・ウェドンだろう。マーベルのアベンジャーズ1と2の監督。「なんで?」と思われるかも知れないけど少し説明します。

ジョス・ウェドンは最近、DCと「バットガール」の映画化に向けて話し合いをしていたらしい、その流れで「ジャスティス・リーグ」の脚本にも関わっていた。そんな時「ジャスティス・リーグ」を進めている監督のザック・スナイダーが私的な理由で仕事を続けられなくなった。(娘さんが亡くなられたらしい、痛ましいことだ。。)ということで「ジャスティス・リーグ」の監督と編集作業をジョス・ウェドンが引き継いだ。

いや、ほんと良い奴だなージョス、と思うのね。ジョス・ウェドンお得意の軽い会話ギャグなんかが今までのDCEUに一番足りなかったものだろうね。もしジョス・ウェドンが関わってなかったら、もしかしたら「ジャスティス・リーグ」はMOSとBvSをもっともっと暗くした、救いようの無い映画になっていたかもしれない。もちろんそういう映画すべてが悪いわけじゃなくて、例えばザック・スナイダーが監督した「ウォッチメン」なんかは僕は良かったと思う。だけどさ、重苦しいものが続くとねー、「いやぁもう流石にもう頭空っぽにして楽しめる楽しい映画が観たいよ」と思ってしまう。

DCEUはMOSからずっと「いや、次こそ本番、いや、次こそ」と思わされ続けてきたように思う。「ジャスティス・リーグ」も決して悪い作品じゃない。だけど観終わったあとにあるのは「ま、次が勝負だな、、」という感じなんだよね。比べたら申し訳ないけど「アベンジャーズ1」はそうじゃなかった。観終わって「あー、今までのそれぞれの単独作品はこのためにあったんだなー」と一つの「完結」を観た気がする。もちろん完結な訳はなくてそれからもユニバースは続くんだけど。それでも「中締め」感はあった。一方、「ジャスティス・リーグ」は、、というと。申し訳ないけど「うん、これでまぁリセットされて次が勝負だな」という印象。そりゃ「次は観ないな」と思われるよりはいいけどね。

まぁとにかくDCEUは続く。Life goes on.

食べ物と器の話

2017-11-24 11:46:58 | 食べ物
恵比寿という駅がある。僕としてはなにせエビスビールのお膝元で恵比寿にあるからエビスビールではなくエビスビールがあるから恵比寿なんで好きな街ではあります。

少し坂を登ったところに北京ダックの安い店があるんだけど最近はなかなか行ってないなー。。

偶然ではあるんだけど、この恵比寿で2週続けてご飯を食べた。そして、どちらも2件目には同じところに行った。

サンピーヌというお店です。→食べログ

1回目のときにぷらぷらと2件目を探して歩いていて、可愛い看板(白くまとペンギン)が目に入りつい飛び込んでしまった。

入ってみるとどうやら日本各地から取り寄せた食材のみのお店らしい。産品、サンピン、サンピーヌ、と。

お通しは宮崎県産キャビア。

へー、キャビアって宮崎でもとれるのね~。キャビアなんてひっさしぶりに食べたけども日本産と聞くと「うむ、これは日本酒だな」と思ってしまう。


山形のなかなかレアな「山川光男」という日本酒だそうです。うまし。山形の酒蔵4つが協力して作っているお酒だそうでそれぞれの酒蔵の代表酒、山形正宗、楯野川、東光、羽陽男山の4つから1文字取った、と。へー。

龍泉洞黒豚ファームのベーコン。

龍泉洞というのは僕の父親の実家、釜石市の近くにある鍾乳洞のことです。一口食べて「うむ、これは赤ワインだ」と思ったので赤ワインをお願いする。ここのお店にあるワインはすべて日本産、とのこと。

僕の印象だけどどうも日本産ワインと言うのは甘いのが多いんじゃないのかな、と思っていたけどなんのなんの、この鳥取のワイン、その名も「砂丘」はキリッとした美味しいワインでした。


うまいうまいの食べて飲んでいたんだけど、どうもこのお店にあるお皿はすべて素敵。ちょっとお皿見せていただけますかとお願いすると快く見せていただけた。

あら、素敵。

僕自身はそんなに器にこだわりがあるわけではなくて、自宅で使う分にはまー割れなきゃ良いや、と思っている。けどもお店で素敵な器で出してくれるとそれはそれで嬉しいよね。特にさ、お店だとたくさんの種類があるじゃないですか。自宅でも同じ種類を5,6個揃えて、気分で使えれば良いけどなかなかそうは行かないからねー。。

お伺いしたところ、白山陶器というところの平茶碗らしい。


白山陶器 平茶わん


すごく日本的なのにどこかモダンでとても良い感じ。

ということでついついAmazonで頼んでしまった。僕の家にあってももったいないので実家にプレゼント。


で、いい店だなーと思ったので次の週も行ってしまった。良い店よ。

川端民俗学

2017-11-06 18:17:19 | 日記
今年は頻繁に博多に行っていた。博多といえば、福岡県外の人がイメージすることのひとつが「中洲」だろうと思う。九州最大の繁華街。中洲をご存じない人はススキノをイメージしていただければ遠くないと思います。

今回は、日本の「河原の文化」、僕が最近考えてる「川端民俗学」の話をしたいと思ってます。

博多と言えば中洲な訳ですが、実は「中洲」と言う駅は無い。中洲と言う地区の最寄り駅は「中洲川端(なかすかわばた)駅」です。つまり、中洲と言うのは「中洲と川端」だ、ということです。

中洲と言うのは、川の中で土砂などがたまって陸地になってる部分で、川端と言うのはつまり川岸、河原という事です。中洲の無い川もあるけど川端が無い川は無い。

そして、日本各地を回っていると、驚くほどどこも「繁華街は川端」だと気づく。

例えば、秋田市の繁華街はその名も「川反」、文字は違うけど読み方は「かわばた」です。川沿いに昔ながらの料亭なんかがあって、そこを中心に居酒屋や、風俗店が並んでいる。

江戸時代の江戸の、歓楽街といえば「吉原」だけどここも言ってしまえば川沿い。隅田川の近くだからね。蔵前で船から降りて川端の日本堤を通って吉原に行く、というのが江戸時代のルートだったんじゃなかったかな。そもそも歓楽街である浅草が川沿いだからね。浅草から吾妻橋を渡れば向島。向島というのは江戸時代には花街として栄えた。浅草の向こうの島だから「向島」。つまりここも川端。

北海道の繁華街といえば「すすきの」、もちろん昔はススキが生えていた、というかススキしか生えない土地だったから「すすき野」なんだろう。ススキは河原に生えるもんですね、そう、「すすきの」は豊平川の河原です。仙台の国分町だって仙台駅よりは広瀬川沿い、熊本も繁華街は白川沿いにあった。

とにかく、一応日本全国47都道府県全てに一度は泊まって飯を食った(もちろん酒も飲んでますが)僕としては、とりあえず駅に着いたら川の方に向かって行けば酒飲めるところがあるだろ、と思ってる。

僕の感じる、日本の都市の構成は、駅があって、そこからすぐにはビジネス街や官公庁なんかがあって、その隣がデパートや商店街の商業地、次に居酒屋街、そして風俗街、どん詰まりが川、という感じ。札幌なんか正にそんな感じだよね。

※博多はとても珍しい、例外的な構成です。博多駅から歩いて行くと、中洲川端(居酒屋街&風俗街)、天神(商業地)という並び。しかもなんと福岡県庁舎はJR博多駅の隣、吉塚駅にある。博多駅から吉塚駅の間には御笠川という川がある。古くからの博多の人はこの川の向こうを「川向こう」、つまり川の向こう側と呼び、そっちは博多でない、と思っていたそうです。つまり!福岡県庁舎は博多には無いんです!福岡のメインの駅は博多駅なのに!!このあたりの博多&福岡論についてはまた別途。

さて、話を戻して、川端。とにかく、日本では繁華街は川端にある。

例えば、歴史的なことで考えれば「河原乞食」という言葉がある。デリケートな表現だけど、まぁ歴史的なワードになってるからお許し頂きたい。この言葉は被差別民を示していたり、踊り子や芸人を指している。つまり昔は河原にいる人というのは通常とはちょっと違った人だった、ということだと思う。

さて。「繁華街は川端である」ということは様々な例から示されている。では「なぜ、繁華街は川端なのか?」という疑問に行き着く。これは日本だけなのかそれとも全世界的にそうなのか、はよくわからない。今のところとりあえず日本の話だけをします。

そもそも河原というのは昔(とりあえず明治以前で考える)は非常に不安定な土地だったろうと思う。関東で言えば利根川なんかは盛んに氾濫していたはず。つまり河原にはまともな家なんか建てられなかったんだろうと思う。だから期間限定の芝居小屋だとかいかがわしい小屋、普通の家を持てない人が河原に住み着いたということなんだろう。あと「橋の下」ということもある。「橋の下」というと外だけど雨風はしのげる、だから今もそうだけど家のない人とかが居やすい場所だったんだろう。そういうところからいかがわしい商売が始まったりね。

そうそう「賽の河原」という言葉もある。仏教で親より先に死んでしまった子供が三途の川を渡れなくて河原で石を積んでいる、という話ね。日本では「川のこちらが現実世界で向こうが死後の世界」、つまり三途の川の話があるけど、この「川の向こうが死後」というのはいろいろな神話にあるそうです。僕が知ってるのはギリシャ神話には冥界への河の渡し守でカロンというのがいる。

こういうところあたりを考えると川端というのはつくづく面白いもんだな、と思います。大陸ではどうなんだろうねぇ、アメリカとか中国でもこういう川端文化ってのはあるもんなんだろうか?謎は深まるばかりです。